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RELIS  作者: 孤独
災害編
597/634

問合


シンシン…………




"SDQ"が降り続いている。

アンリマンユの屋根もいくつも崩壊している状態に、眠れるもんじゃない。

しかし、不思議なことが起こっていた。



妙に静かで、想定以上に被害が少ないこと。特に積み込まれるように来て、残ってしまう"SDQ"という災害には、人々は不眠不休かつ交代制で対応するのが、時間稼ぎとしては当たり前のこと。

人を多く失った今の状況では、生存環境を保てる状態にはなれないはずだった。



その事を感じている者は何人かいる。理由までは誰も分かってない。

人が眠ったり、活動を停止させているとされる休息時。その時に災害というのが、ほぼほぼ止まっていた。人に合わせるようにだ。

それが人々に与えた思考の休憩に役立っていた。



「夜弧殿」

「はい」



翌日のこと、夜弧はヒュールに声をかけられる。


自分も寝て、食べて、それから考えた。

その上で問題となりそうな、不安の面を解消できるとしたら、彼女しかいなかった。



「これから私は、人々を苦しませるかもしれないのである。そんなことであろうとも、協力していただけるかな?」

「………私にできる事ですか」


想像はつくかもしれない。

精神操作、記憶操作。

言葉を濁しても、純粋な悪という手段か。幸福な光ともなるか。

ヒュールの出している答えは、もうすぐ分かること。



「おーっしゃ!飯食って、アレクのとこ行くぞーー!」

「昨日、ライラ達が戻って来なかったけど、大丈夫かな?」

「春藍のことだ。アレクに付き合って、ライラも残っているってところだろ」

「ロイは分かってるんだね」


ロイと水羽も休息、睡眠によって、声に明るさがある。特にロイは大きかった。



「ヒュール、負傷者や子供達はどうする?ホントに全員で向かうのか?」

「全員で行くのである。辿り着くまででも良いのである」

「ロイさん。私達が足を引っ張ってしまいますが、一緒に行動させてください」

「僕もその方が良いと思うよ!僕達も固まっていた方がいい」

「……そうか。ちっと、歩くし。歩き辛いからよ」



人を心配してのことである。

しかし、全部の荷物を抱えて、町ごと移動ってところだ。犠牲は出るか。不意も怖い。


「みんなの歩幅はヒュールと夜弧が合わせろ。水羽はちっと前に出て、瓦礫とかの障害物をどかして、道を作れ。場所は分かるよな?俺は後方でなんかあった時の対応をする。藺兆紗が出てくるかもしれねぇ。戦いや護衛は俺に任せろ」

「……ロイって、こんなに優しかった?」

「優しいぞ、俺!なんか変なこと言ったか!?」



危機を目の前に突如零れるような、変化。

ハッキリと分かるもんが。見えてくるってもんが、元気に繫がるわけだ。


「俺は細かいことは気にしねぇ、好きにやれよ。ヒュール」

「……ありがとうである」



こーいうサバサバとして、自由にできる。ロイの生き方や前向きなところを見て、ヒュールが少しホッとした。

アレクへの報告なしに向かうというのだから、とんでもないことである。

何を言われても、構わないとしている。そう見得を作っている。



全員の支度が整って、


「行くのである!」



ヒュール達は春藍達がいる場所に向かうのである。



◇       ◇




ガシャァンッ



「ここの修復を頼む」

「はい!」



アレクも、春藍も、協力しあっているところ。



「仲良いね」



ライラは一睡してから目覚めても、変わらない二人の姿勢に羨む。

このまま順調ならば、残り6日。


「アレク。あんた、春藍に少し任せて休みなさい。戦ってもいるんでしょ?」

「あ?」

「順調なんでしょ。私には分からないけれど」

「アレクさん!少し休んでください。僕も、アレクさんが休んだ後から休みます」



少し邪魔されてイラッとした。しかし、その顔がすぐに引いて、



「任せるぞ、春藍。1時間は寝る」

「はい!!」


そう言って、ライラの近くまで来てアレクだった。春藍は彼の力になれると、キラキラした眼で改造に取り掛かっていた。一方で、アレクの眼は別の視点からの、ギラつく眼。


「何もねぇよ」

「でしょうね」


ホントに時間の問題。それがアレクの答えである。

確かに。まだアレク達は知らないが、これから来るヒュール達が来たとしても、改造という面においては問題なくやり通せる。

藺兆紗、"SDQ"、


「お前の言う、よく分からない赤子も、脅威にならねぇ」



乗り切れるかどうかが、鍵だ。



「得体の知れない不安を感じているのか」

「そうね。でも、焦らなくて良いでしょ?1時間も、2時間も、違いはなく。6日後に完成で」

「この状況が保てば、分かっているんだろ?」


考えても、仕方なく。

力の温存。蓄え。


「俺は寝る。腹も減った」

「はいはい」



アレクは寝る。その後に春藍も休みに入る。

3人の状態も、これから来るロイ達の事も含めて(3人は分かってないが)、決して悪くはないだろう。

順調に日を消化することだ。

しかし、春藍を除く、実力者達はほぼほぼ分かりかけていた。



「………………」




ナニカクル……。



◇        ◇



ビジィッ


「っん……んん……」


動かず、動けぬ事が、幸いしているだろう。



ガシイィィッ



「ふふふっ」


”黄金人海”の空間内に、バードレイは幽閉されていた。そこにある人材を育成するプログラムを受けている。頭に様々な怪しい機械を差し込まれ、差し込んだ本人にも問われる。


「……ホントに、可能なのか?」


藺兆紗の問い掛けも当然である。

バードレイが求めた能力は、至極シンプルであり、発想ですら凡庸であった。しかし、辿り着いた者は誰一人いない。純粋なる力と言って良く、全ての能力の終着地点とも言えるものか。

宝石の価値が分からぬ、子供に与えること。お札を口に入れてしまう赤ちゃんのような、願い。



「朽ちる、果てる」

「?こっちは壊れてるけど」

「なら、何も言わない」



知識がなければ使えず、力がなければ使えない。

どれにも満たさない。ぶっ壊れぶっ飛んだ意志に反して、とても普通な素体。その素体の教育、強化に藺兆紗の”黄金人海”で補おうとしていた。

能力を宿す前にその反動で体が崩壊すると、藺兆紗は諭そうとするが、バードレイには通じない。



バヂイイィィッ



いきなしのスタート。バードレイの能力開発が始まった。


「……んんっ!!いっ!」


それと同時に、バードレイの肉体は一瞬にして四散した。

不釣合いとなった藺兆紗が、”黄金人海”に一度裏切られたように、バードレイがその能力を宿すには不十分や不適合では済まされない。天と地が開いた、上下関係がある。



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