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RELIS  作者: 孤独
災害編
596/634

母様


至り尽くせ。と、裸の女性は椅子に座り込む。


「ふぅ」


そこにやってくるのは10数人の人々。瞳に輝きを持ち、彼等は大切そうに持つ衣類や口紅、髪を洗うためのシャンプー。水。お食事。



ジャパーーッ



「髪を洗うのは良き事ね」

「いかがでしょうか、母様」

「宜しくて、ヨ」


強大な意思。むしろ、世界に刻まれた概念や法則と同じように、彼女の心とは気が長くて、半分子にされようと底すら届かない。


「おー、よしよし、よしよしよし」

「母様。ナデナデをありがとうございます」

「みんなにしてあげるからね」


体の痛みを気にせず、周りを慕う我が子供達に母性というものを見せ、


「藺兆紗に従われる事よりも、この私のために生きるのよ」

「母様」

「母様」

「母様」

「私の体、遺伝子、血、その意思までも受け取ったあなた達。私の片割れではないの、私自身なの。あなた達の生は私のため、私の生はあなた達のため。"時代の支配者"、バードレイのため。それは私のため」



いえ、まだ。

私は"時代の支配者"になれてはいない。私はまだ、能力を一つも持っていない。何もやっていない。



裸の自分につけられる服、両の足を通して、履かれるパンツ。洗った髪を拭いてくれる従者という子供。汚れるからだを綺麗にしてくれる者。口紅を付けて、大人の輝き。

前に出す足にソックスを履いてもらう。


「靴をどうぞ、母様」

「ええ。あと、立つわ。ドレスが着れないから。用意は?」

「少々お待ちください。ご用意しております」

「用意して頂けるのであれば、宜しいのですわ」


リラックスのつもりか。この災害時で、1人がやるには贅沢の極みと言って良いほどの状態。

春藍達とも、ロイ達とも。まったく違う場所で集められていく者達。



「我が子達」



藺兆紗の"黄金人海"によって、自らの体を持ってして、自分の子を喜びながら産み続けた。藺兆紗の精神崩壊によって、彼女が産んだ子供達は彼からの強制的な支配から逃れ、代わりにバードレイが持つ概念レベルの意思に魅了され、従う。その血と彼女の子である事を誇りに思う。




母を大切にする子のように。また、それを超えて、分かれた自分自身であると互いに理解し合える。




三矢を助けたバードレイは、本体ではなく、彼女の子。藺兆紗を屈服させ、矜持を崩したバードレイもそうだ。

彼女の意思とはあまりにも強く、抑制も制御も、人が介入する事ができないほどであり、子供すら自分の物と抱き、抱かれる精神異常者。



死、汚染、快楽、出産、痛み、解放。一時の至福。



様々な事を己の身で体感したバードレイは、他者が想像するよりも急速に成長していく。

絶望を払拭するかのような、希望を持つ。


「…………世界の崩壊が早いか、私が世界を救うのが早いか」


しっかりと着替え、姿を整えたバードレイの姿は美しくあり、"時代の支配者"に相応しい姿になったと言える。だが、本人が言うように、名乗る能力を手にしていない。鍵を握るのは、



「藺兆紗」



精神崩壊を起こしても、命を繋いだ。

だが、それからは生きているのかと疑いたいほどボロ雑巾の姿で地面に転がっており、バードレイは彼を足蹴に伝える。



「世界は絶体絶命。人類は死んじゃう。でも、あなた自身はここでも言うのでしょう。人が成るべき人になる、べきと」


グリグリと足を捻っていくところに、嫌らしさを感じる。


「あなたは"時代の支配者"にはなれない」


話術からでもペースをとってくる。


「でも、あなたは私を"時代の支配者"として、作り上げる事ができる。だから、できるかしら?」

「……………」

「あなた次第よ。でも、人が成るべき人になる。そう誓うあなたは、私を"時代の支配者"にすべきと認めるわ。死ぬからじゃなくて、助かりたいからじゃなくて。私がそうなのだから」



ゴミに手を差し伸べるところは、聖人の如く。しかし、伝えていることは悪を超えた者。



「"SDQ"は、時代が引き継いで来た負の遺産。それも数多の世界を飲み込んできた、強大なものとなっている。能力の一つ、優れた才気の一つ、超越した運の一つ。それらを活かせて乗り越える事を作り上げられるのが、あなたの能力が持つ、もう一つの人材育成能力じゃない?」



仮にできようとしても、……。藺兆紗は尋ねる。


「……お前は持つと……言うのか?」

「成らなくて良いの?この状況で、あなたはそうする?」


でも、それも構わないかも


「私にはまた、こーいう機会が来るから。私という"時代の支配者"は決して、災害なんかで終わらない」


気が長く。

絶望を打ちのめされても、希望を持って、やがて立ち上がるだろうと、彼女の中にある気の長さ。達観した思想。

藺兆紗はその心を認めたというか、あり得ない事だと


「背負うには、重く、辛いこと」

「それなら良いわ」

「人類の全てを叶えるべくこと。概念のように」

「私だもん」


軽口かよ。

どーなっても知らないと、藺兆紗が伝えられている方だった。



「能力が欲しいか。この災害を無にするほどの、能力を手にする気か」

「ええ。あなたの力で、私の思う能力を私自身に身につけさせなさい」


欲する力を手にするとは、人の欲求にある。しかし、それが強いほど。生物という枠組みを超えて、たった1人が持つとなるのならば、神に達する。


「いえ、超える」


ささやかにしては、全ての能力が極めて行き着く、そーいう能力。

およそ、この時代。この次元においても。まだ完成に至ってなどいない。



バードレイが、……"時代の支配者"が、所有する能力は、



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