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RELIS  作者: 孤独
災害編
593/634

傷跡


ヒューーーーッ



風の一つで粉は舞う。

でも、建物も人も、それで微動だにはしない。世界はそう、気にしていない。

だが、時代という次元であれば、今の彼等も、今の世界も、そう気にしてはいない。

その終わり近づこうとも、結局何も気には留まらない。


「!あー!」

「春藍様ー!ご無事でしたか!」



ライラ達が傷付きながらも、帰還。


「お兄ちゃん!」

「戻ったぞー!」


続いて、水羽と謡歌。さらには生き延びた住民達も、春藍達がいるところに辿り着いた。


「良かったー。ライラと夜弧が無事で!」

「し、心配してくれたのね……」

「ご心配をかけました」


春藍からもライラと夜弧の無事を知り、2人に頼み込む。


「僕、これからアレクさんの無事を確認してくるから。しばらく、ヒュールさん達の保護をお願い!」

「あんたはホント、こー……」

「ブレませんね!」

「え?」


なんで怒られるのかをよく分かっていない春藍。しかし、そんな疑問を後回しにするほど、アレクが心配であった。

あの場所でも戦闘があった事は予想しており、無事かどうかも確認できなかった。


「1人で大丈夫か?藺兆紗の奴が死んだかどうか、確認できてねぇーぞ」


ロイは付き添う気をまったく見せていないが、個人行動の危険性を指摘した。まぁ、アレク自身が個人行動をとっているのは気にしていない。



「あたしもいく。夜弧は戦えるんだから、ここに残りなさい。治療もできるんだし」

「いいの?ライラ」

「ずるくないですかー?」


せこい感じで、春藍とライラがアレクの様子を見に行く事に。


「俺達は休んでいようぜ。夜弧」

「……そうですね」


夜弧は少し不満気ではあるが、ロイと夜弧、水羽はこの中で残ることに。


「お兄ちゃん!またどこかに行くの?」

「アレクさんのところ、謡歌はここにいて。水羽ちゃんの傍にいた方が良いよ」

「そうだぞ!謡歌!こいつより、僕の方が強いぞ!」

「アレクの無事を確認したら戻るから平気よ。長い事、いるつもりはないから」


ライラの付き添いにはそれもあったんだろう。謡歌は彼女の言葉に納得し、兄の行動に、少し苦しんで見送った。



「アレクは改造に没頭するのであるか?」

「たぶん、そうかと。伝言があれば伝えますけど、ヒュールさん」

「…………」


まだ、休憩というのをとっていない彼の顔は、かなり疲れていて、


「追って、伝えたい事があると。それだけで良いのである」


アレクに伝えるよりも先に、生き残る者達に話さねばならない事がある。春藍にはそれで良いと思っていたが、ライラはそうはいかなかった。


「何よそれ?」

「……んー。そうであるな」


ヒュールの思いを受け入れてあげなかった。当然らしい事で、疑問に思うこと。


「翌日、皆に話すつもりである。アレクに伝わるのが遅れると思ってのことである。今日は少し頭も重いのである。みなも同じである」

「……それなら良いけど。でも、あたしだってアレクやクォルヴァがあなたを信頼しているから、よほどの事じゃなければ止めないわ」

「ありがとうである」


ライラにはヒュールのこれからの指標は、分からなかっただろう。

それよりも春藍と違う意味で、アレクの状況が気になっている。また、こちらの情報を報告する必要もある。

知る限り、"SDQ"の侵食は早まっている。




◇      ◇



同刻。別の場所。どこか分からない場所。



「……………?」



三矢は意識を取り戻す。しかし、それは眼が開いたとかではなく、今は塵芥に等しい自分の状況で分かるという奇跡。それでも生きているということ。


「……………」


声が出ない。

伸ばそうとする手もない。地面を歩く足すらない。というか、地面にいない?


死んでいるという状況と、生きている意識の矛盾。


転生でもしたみてぇな。

いや、同じ魂を使って、肉体だけを入れ替えて今まで生きているんだ。それにこの感覚はまだ自分の肉体も死んでない。むしろ、再生していくこと。



『まだ、時間は掛かる。あなたは、死ぬには早い』



この意識も、おそらく再生されているものと、三矢は気付く。

これをする者がいる。


『かろうじて、あなたが生きていた時に出会えた事が奇跡的だ。大事にするべきですよ。三矢さん』


まだまだ、の事であろう。しかし、語りかけられる。

"本音"がある事で真意は、ハッキリとする。聞くだけでも有益な情報を得られる。


『爆発に巻き込まれ、肉片となったあなたを私は発見した』


なにそれ、怖い。


『私の知る限りの、あなたの肉体を再生させます。先の事は任せますよ』



爆発……?俺は死に掛けていて、こいつに助けられている?


フラッシュダウンの連続で、記憶の接合ができない。むしろ、それが挟まってくること。それに違和感。

意識が回復させられるところで朧ながらも、一字一句、その声を確かに、"本音"なく受け取る。


【少しはカッコ良いとこを見せなさい】


「…………!」


声が、言葉が、今の自分に欲しい。

疑問がある。

その前に、俺には何かがある。手でも、足でも。今を尋ねれば分かる。言葉の呪符が解ける。

あんたが俺に頼むこと。



ギュゥッ


「!」

「…………」


戻った手で握ることを止めなかった。

離しはしなかった。話が終わるまでだ。


「まだ何かありますか?三矢さん」


口を、喉を、


「っ、かはっ」


顔から戻っていくと、痛覚をそのままに口にするから五月蝿い。それでも堪えて、尋ねる。表情から何かを見たと、確信した。


「お、俺を」

「はい」

「四散前までに戻せっ……」



彼が生きている事よりも、彼に助けられている事よりも。とても大事な事が三矢にあると、彼自身も理解した。それは何よりものこと。聞かれなくたって分かることなんだ。


「承知しました。しかし、話してくださいよ?あなたが見た者を」

「いいから。早く。いてぇし……。麻酔効果もないのか。お前の回復……」

「だから、顔からの再生はキツイですって。止めてあげたのに」




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