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RELIS  作者: 孤独
人災編
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呪文

「かはっ」



たった一人だけの戦況。



「ぐうぅっ」



藺兆紗は現状、逃げ切った。

しかし、それは認めたくない敗走という屈辱と絶望。失ったものがあまりに多すぎたにもかかわらず、自分が生きている状況が地獄。蓄積していた疲労を一気に自覚し、支える精神が壊れるまでに時間は掛からなかった。



ガクッッ



「げほっ、かはっ」


自分の抱える魔力が抑え込めず、勝手に放出されていく。藺兆紗は苦しみ、その解析すらままならぬほど、混乱する。


「はっ、いいっ、くへっ」


転がって、這いずって、汚れる。七三分けの髪もその形を成さず、口からだけじゃなく、眼と鼻からも血を吐き出し、敗残兵と呼ぶべき姿となった藺兆紗。

痙攣するその姿は嘲笑されるべき、ところ。それでも懸命に



「ううぅっ、がほっ」



血を吐き出そうと、生き抜く。

立ち上がろうとするも、赤子のように転がって、再び這いずる。


敵の戦力はまったく削れず、もはや、見つかるまでの時間の問題という状況。アレクが朱里咲とダーリヤの両名を倒した事を察知し、春藍達と出会えば命がないと分かり、なおも生きているという絶望に打ちひしがれ。



「あああっ、うがああぁっ」



シュウウウゥゥッ



"黄金人海ゴールデン・カンパニー"を所有するには、あまりにも衰弱しきった彼は不相応と、能力が判断された。藺兆紗を襲う急激な脱力と魔力の放出。皮膚の荒れ、劣化。歯が黒くなりながら腐り始めていく。筋肉の低下、髪色も白へと変わっていく。

藺兆紗の急激な変貌という劣化は、"黄金人海ゴールデン・カンパニー"に囚われていた人々が、藺兆紗からの支配が解かれ、自由を得てしまう。

合法的に生み出した人間の自由。造り上げられた思想の崩壊。




「がああぁぁっ」



それよりもヤバイのは、人数の暴走。

藺兆紗の異空間が崩壊し、そこにあった全てがここにやってくる。



カーーーーーーーーッ



輝く白き光を浴びた者に、わずかながら精神を揺さぶるものがあった。

だが、それ以上に世界を襲ったのは




ドバアアアアァァァァッッ



「え?」

「なっ」



藺兆紗が蓄えに蓄え、まだ使い切っておらず、残った人間達。それが雨のように空から降ってくるのだ。

世界全土でだ。光が届いた範囲で起こった出来事。

ライラも、ロイも、春藍も、夜弧も、水羽も、アレクも。

その異常ぶりを目の当たりにした。



ドサドサドサ



人ではあるが、その多くが正気を失っているだけでなく、不完全な召喚であるため、死体となって降りてきた。生き残った者達にとっては、死体の雨と勘違いし絶望感を与えた。



「げほぉっ」


だが、もっとも絶望をしたのは藺兆紗であろう。

自らの肉体と魔力の限界に、急激な劣化と老化。意志の朦朧。自身が求めた能力に裏切られること。

得た物を捨てる。

それは他人事であれば、どーって事無く言えるものであるが。自分自身に降りかかると、己で立ち上がるには長い猶予が必要となる。

まだ藺兆紗から搾り出すのかと、血と魔力、体力、気力。体から抜けていく。



シュウウウゥゥッ


「おぉぉっ」



ゲロまで吐き、小便を止める事すらできず、皮膚はもうシワだらけとなり、サラリーマン風だった彼がもう、醜く動けぬ年寄りと成り果てていた。生命の維持だけを辛うじて残す事が、どれだけ地獄かを味わうか。

この世界の全ては彼を、ざまーみろと、罵るだろう。


「うぅ……」

「……………」

「はーぅ、……だ、ま……」



人がそう言っても、藺兆紗は足掻く。

死を選ばず。自身の能力に裏切られようとも、……その志のため。

人が成るべき人になるため。どんなになろうと、生きて、幸せに、導かれるべきと。


「私は………成らねば。げほっ、……」



死を知る恐怖を遥かに増す。意志の強さがあった。それに応えたのか、それとも……



「生きたい?」

「!」



1人は尋ねる。

敵でも、味方でも、なんでも良い。これを脱しなければならない。誰であろうと


「な、に、……望……む?」

「そーね。んー、呪文でまけようかしら。あなたに言わせたくて、やらせたい」


無様な人を笑いなどしない。彼の懸命さには賞賛はしとく。

倒れる藺兆紗へと歩むだけでなく、腰まで降ろし、体も授けるほどだ。けど、藺兆紗には奴が見えていないと言って良い、朦朧状態。

藺兆紗の優しく両の頬を持ってあげ、自ら座る。その股に藺兆紗の顔を乗せ、入れてあげるほどだ。

奴は呪文を伝える


「『バードレイちゃんのおマンコを舐めたい、突きたい』って言いながら、その通りに極上のこのマンコを舐めなさい。そしたら、私があなたを助けてあげるわ」


…………。


人の矜持など、どこにもない。どーいう呪文。どーいう要求。

決め付けた事を言わせるだけじゃなく、やらせるまで至らせる。藺兆紗を遥かに凌ぐ意志と執念が、成就したとも言える状況が今。

バードレイを捕えた記憶など、己で消してしまい。忘れられても良いと思っているバードレイ。この勝敗と成否に意味はあったかというと、……おそらくない。

彼女が決めたことで、藺兆紗が負けを認めること。生きる事と目的を果たすために選んだこと。


「バードレイちゃんのおマンコを舐めたい、突きたい!舐める。舐める!助けてぇっ、バードレイちゃんっ!!」



くちゅくちゅ



「あんっ……んっ…………キモー」


言葉と共に藺兆紗は舐め。味わう快楽にその舌は踊り、残された矜持と意志が砕かれる。

一方で、バードレイは恍惚な表情で藺兆紗を見下ろした。ちなみに彼女は藺兆紗の醜い姿とは一変し、全裸でその股を譲っている。


「んぅっ、約束。守りましたね」

「ん。あっ」


助けて欲しい気持ちと強い性快楽を味わい。藺兆紗はバードレイから離れない。

だから、バードレイは乱暴に藺兆紗を投げ飛ばした。その衝撃だけで藺兆紗の体の骨のいくつかが砕ける。


「あああぁっ、ぎゃああぁっ」

「んふふふふ」


うろたえて、痛みに苦しむ藺兆紗は、ただただ足掻く事で命を繋ぐ。

バードレイは深く紅潮する笑みで立ち上がって、彼に伝える。


「私も、あなたとの約束は果たすわよ。心配ないわ。ここからよ、藺兆紗」


あなたをこき使って利用するのはね!!



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