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RELIS  作者: 孤独
人災編
587/634

胸囲


思考、記憶、混同中。



「おぎゃああぁぁっ」



可愛い鳴き声に手を抜けない大人の手。

大量の神経からの膨大な情報伝達が、幼く小さい脳は悲鳴という行動を肉体に指示していた。

慈我は生まれて初めて、苦しいという感情を知る。赤子のその苦しいとは誰にでもあり、最強の肉体を持ってしてもあるということだ。

たかいたかいを、蹴り飛ばされて成されている状況。




「宙、背」



ロイは、十分なリーチ差と経験、技術で、その身体能力を翻弄。

打ち上げた慈我の下から、というより背から。


「状態を立て直すのはまだ早いようだな!!」


空中に飛びながら、拳を捻って握り。豪快にぶっ飛ばす。


「螺旋拳」



ドゴオオォォォッッ



慈我の背から打撃。回転がつけられた慈我はさらに空へと伸びる。それはもう雲に行こうとしていたが、



ガッッ



春藍の造ったアンリマンユの屋根に衝突するほどの、それほどまでの高さに打ち上げられた。

慈我は何かに当たり、ぶつかった衝撃と重力を感じた瞬間。柔らかい両足がアンリマンユの屋根を掴んだ。それも本能的に、素早きことだった。



ブランッ



自らの体を両足で支える。地面という位置なら分からなくもない。しかし、屋根の下。天井を両足で握って、止まる。視界は赤子と同じく、まったく見えていないが、攻撃してきたロイの気配は敏感に知れた。

慈我は狙いを定める。彼も宙へと浮いている状態だ。

両膝を曲げ、その突進の威力をさらに高める。


「来いよ。ガキ」


ロイは雲の上。そこに足が乗る。

慈我の狙いは間違いなく、逸れちゃいない。



ドゴオオオォォッ


跳躍。蹴りの二発でアンリマンユの装甲を粉砕。その勢いでロイへと突進。



「アホ」



しかし、ロイは。"ライラの雲"を足場にして、方向転換。慈我の突進を回避。目にも止まらない動きについていく、"紫電一閃"。今度は油断なく避けた。

対して、慈我は隕石の如く。地面に追突。



ドゴオオオオォォォォッ



クレーターが出現するほどの破壊力であった。当たれば、ロイもやばかっただろう。

慈我の体は埋まる。



「んーっ、んーっ」



ズポォッ


地面から頭をようやく出した時、隙が生まれる。

十分に夜弧が距離を詰められる時間であり、



「はい」



"トレパネーション"によって、脳に強烈な傷のデータを送り込む。

慈我の身体能力を警戒し、2,3秒という短い時間でしか触れられなかったが、ロイが注意を惹きつけた事で魔力を十分に溜める事ができ、脳に送り込んだ量は膨大であった。



「いいっ!!」

「やばっ」


苦しみの中。もがく慈我を警戒し、すぐにその場を離れる夜弧。慈我はその気配を察知して、夜弧への突進を試みようとするが、



サーーーーーーッ



ライラの霧が慈我の周囲を覆った。視界というのを持たない慈我であっても、周囲の変化によって、躊躇が生じる。驚きに近いものが夜弧への注意を散漫とさせ、そのタイムラグで



「うぎゃあああぁっ、あああっ」



夜弧の精神攻撃が襲い掛かった。

肉体こそ最強であっても、脳への攻撃は違う苦しみであり、しばらくの戦闘不能を意味していた。その場でもがき、暴れる。地面を強烈に叩く。


「危なかった!あんな赤子、嫌だ!」

「私がついていて良かった。サポートできて」


ライラと夜弧は合流。

まだ、霧の中で苦しみ暴れる慈我であるが、倒したとも言える状況であった。



ドゴオオォォッッ


「暴れるわね」



油断って程ではない。

ある意味、接近以外での戦闘はない。読みは正しい。



ドゴオオオォォッ



慈我の無意識がやる。ただ単純な暴れるが、必殺にして、超破壊のそれであり。

地下から掘り出したのは、白い雪崩であった。



ドバアアアアァァァァッッ



「!!?」

「ちょっ!」


ライラの霧がぶっ飛んで、下から現われてくるのは"SDQ"の雪崩!2人は見た瞬間に全速力で


「逃げろーーー!!」

「わーーーーっ!」


必死の超ダッシュ!なんてものを下から掘り出してくるんだと、というか。そんな文句よりも先に


「速い!ヤバイ!!」

「呑まれちゃいます!!」



ガバアァッ



目前に迫る死の雪崩。そんな2人を後ろっから、抱きしめて掴み、飛ぶ。


「あぶねぇーな!!」

「うぎゃあぁっ!」

「どこ揉んでるんですか!!」

「え?普通の胸と手ごろな胸」


両腕に花。

ロイはしっかりとライラと夜弧の2人を脇に抱え、手で胸を揉みながら、エンジョイ逃亡。

"SDQ"の雪崩を、ロイはその脚力で逃げ切る。


「これくらいの褒美で良いだろうが!!暴れるなーー!」

「あんたの手が暴れてるんだけど!!この!」

「なんでロイさんにこんなことーー!」


辱められながらも、ライラは慈我のいた方を振り向いた。もう"SDQ"の巨大な噴出孔になっており、その姿はまったく見えない。


「あの赤子は死んだわよね?」

「当たり前だろ!あんなのに少しでも触れたらお陀仏だ!それに夜弧の攻撃だって、入ったんだ!」

「即死はないと思いますけど」

「……避けた可能性はある?」


正直なとこ、ライラの霧も"SDQ"によって掻き消されてしまい、慈我の位置を掴み取れなかった。

だからこそ、心配を口にした。ロイは


「考えたくねぇな。正直、」


あの潜在能力はやべぇ。直に死体を見たいと思ったぐらいの相手だった。


「次は戦いたくねぇな」


その言葉。

ライラと夜弧も同じことを思っただろう。赤子相手に3人の力がなかったら、倒されていたという事実。情けない大人達だが、赤子1人の相手には丁度良い人数かもしれんか。


そして、3人が逃げている時。

現状よりもさらに重たいもの。



ドゴオオオオオォォォォォッ



上空の大爆発と立ち上る爆炎が昇った。



「うおおおぉっ!!2人抱えてるのに、さらに走るのかよーー!」

「走りなさい、ロイーーー!」

「いい気味です!もっと速く!」

「揉むスピードも上げてやろうかーー!久々の俺のボーナスステージ!!楽しませろーー!!」


ロイがさらにスピードを増して、安全なところへと避難。

3人はなんとか"SDQ"の雪崩とアンリマンユの大爆発の余波を、無傷で凌いだ。



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