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RELIS  作者: 孤独
人災編
581/634

赤子


霧が彼に触れた瞬間、ネットリと付く。

互いにそれを振り払わずに、むしろ、向かい合おうとする。


時間の問題と理解する藺兆紗は、自らに有利と働く場所選びに入った。それはライラ達と逃げない現われであり、彼等もそれを察知する。

そう時間が掛からない出会い。

クォルヴァと戦った、"SDQ"の危険地帯とは異なり、この混乱で無人となっておるものの。障害物など少ない、大きな道のど真ん中での場所を選ぶ。



「やぁっ」

「殺しに来てあげたわ」



メッチャ殺意を出しているライラに対し、


「落ち着け、ライラ」

「でもね、ロイ」

「俺がこいつと戦う役。それにこいつがいるって事は、クォルヴァがどーなったか。おおよそ、分かるって事だが。どーしたんだよ」


ロイが冷静に藺兆紗に尋ねる。それを答える義理はない。

この場の有利不利に繫がることをするわけがない。



「ふむっ」



藺兆紗は彼等を観察する。


「?……?」

「?あ?」


その時、藺兆紗がロイを見て何かを思い出そうとして、閉じろという何かを訴えられた。

ロイに出会った事があるのだが、何かをあれだった。

からかい半分にどんな子供を産ませてやろうか。ライラと夜弧に聞いておこうと思ったが



「気が変わりました」



自分の戸惑いを振り払うように、戦闘開始を決めたのは藺兆紗の方。これは意外。

人間達を召喚し始めて、完全な迎撃態勢をとる。


「夜弧も手を出すな」

「いいんですか?」

「この距離ならもう俺の間合いだ」


言葉を伝えてからの速攻は藺兆紗の体を拳で捉えかけた。動きのそれは戦士というものではなかった。バックステップとは言えない後方への移動が拳を回避した。


「お」


自分が出した"超人"に後ろへ引っ張ってもらう。足捌きが本体から悟れないため、追いかけるまでの動作も遅れるが。

ロイはそれだけじゃなく、周囲の雑魚を測ってからの速攻。拳と蹴りに力を集中させれば、藺兆紗が人間など棒切れと同じ。



ドパアアァァッ



「!!」


大人数を瞬殺。加えて、自らの身体能力のなさを補うための"超人"も、後ろに周りこんで、拳一発でノックアウト。藺兆紗との間合いは離れない。


「っ」


さすがにやりますね。強い人だ。

しかし、なんでしょうか。この人を見ると、何かが……。



藺兆紗の戸惑いは、命のやり取りにおいては致命的。不安の匂いと、集中力不足の準備怠り。敏感に感じる本人は素早く、カードを切った。この場を窮地以外にも感じて、切り抜けるため、



べキイィィッ



「あ?」

「ふぅ、こんな形で新人投入ですが。都合の良い相手でしょう」



ロイの拳を受け止めにしては、柔らかい受け方。だが、まったく防御の態勢ではなく直撃と言っていい。藺兆紗の体に握り締めたまま、そいつは


「ぎゃー……?」

「ガキ?」



ガキどころじゃねぇ。なんだこいつは。



「離してくれませんか?」

「あーっ?」

「言葉、分かりませんか」


ロイが一歩下がり、連打を止めた。

藺兆紗が送り込んで来た人材に驚きと、心理的な躊躇ちゅうちょとは違う。武を向けるというのなら、躊躇ためらう、人としての姿。ライラも夜弧も、目を丸くしてそいつの姿を一言で



「あ、赤子!?」

「でも、ロイの拳を止めたのはその子です。どーやったか、分かりませんが」



女、子供。そーいった物に拳を振り切る事に、若干の情けをかけたかもしれない。しかし、フェミもロリも、ペドも、ショタとかの基準より下の赤子という存在に対して手を捻り、拳を奮うなど、道理を問われる。

あまりにもか弱く、自らを支えるに乏しい身体能力である。通常の赤子ならそうだ。ロイの目は冷静に、この赤子を映した。



自分の体を左手一つで藺兆紗の服に掴んで、支える。力一杯に握れば、引き千切れそうなところを、柔らかく握っている。まだ、首が据わったところといったか。両手、両足共に、赤子で良いレベル。逆にそれがヤバイか。



「どーいうこった?なんだその、ガキ。赤ちゃんは」

「ふふふ、気になりますか。って、ヨダレ垂れてます。ハンカチハンカチ」


微笑ましく、親子のような感じであるが。赤子は藺兆紗が取り出したハンカチを嫌がって、彼に手を繰り出す。


「だぁー」

「え」


ドガアアァァァッ



いくら身体能力が並程度でしかない藺兆紗とて、大人。

赤子のダダを捏ねる動作にしては、あまりの大暴れぶり。その一発の、てのひらは技術といった形がまったくなく、しかし、勢い一つで藺兆紗をぶっ飛ばし、倒してしまうほどの力。



「げほっ、がはっ」


藺兆紗に降りかかる予想外のダメージ。ここはギャグテイストって事で


「カウントはノーダメージでよろしく願います……。まったく、」


藺兆紗は立ち上がる。そして、赤子は立ち上がるだけでなく、その小さい体で仁王立ち。


「あーっ、うーっ」


だが、赤子なんだろう。

藺兆紗の空間に閉じ込められていた景色と一変して、自由かつまだ光あるところにキョロキョロと、頭が動く。

勇浪と違い、赤子による振る舞いがどこか油断させてしまうが。



「どーいうことだ。なんだこのスーパー赤ちゃんは?気になるぞ」


遥か怪物。赤子の無邪気にあるまじき身体能力。ロイが藺兆紗に声を投げかけるのも当然。訊いておきたい。


「こいつはどんな女から産まれたんだ?俺にも紹介してくれよ」

「そこかい!!」

「ロイ!!」


ライラと夜弧が、叫びのツッコミ。


「待て、二人共。俺がこいつ等の相手だろ。せっかちでいけねぇな。そこの赤ちゃんとも関係する事は訊いておくべきだろう?答えてくれるかは別だが」


ロイは余裕を崩さず。

赤子がまだ、こちらに関心を向けていない間に藺兆紗を問うた。


「藺兆紗、質問に答えろ。テメェの能力は、好きに自由な女とヤレて、女を孕ませる事もできるのか?」

「その赤子関係ないし!!」

「何言ってるんですか!」


女2人が真っ赤な顔して、ロイにも敵意を向けようとする。それに藺兆紗は先ほどと違い、ロイに対して抱いた。不安の正体はまったく関係のない事と、とある勘違いをしてロイの質問に答えた。



「ふふふふ」



笑い声に、やんわりとした柔らかさがある。



「あなたは面白い人ですね。あなたに"黄金人海ゴールデン・カンパニー"があったら、どんな事をしていたか、どんな未来が待っているのか。ええ、そうですよ。あなたもご趣味ですか?」

「女を抱くには理想的な能力だな。確かに、俺が生まれ変わるなら、お前の18禁能力が欲しいぜ」

「私の趣向はね。嫌がっていたり強気な女性が、頑張って頑張って、快楽を耐えていても、心が折れちゃって身を任せちまう女性に恍惚しちゃうんです。自分の手で女性を征服した感じが、堪らないんですよ。こっちも頑張っているんでね」

「シチュ派だな。俺は女を力と技術テクニックを持ってして、全ての女性を幸せにしてみせる。優しく微笑む顔に心が緩むわ。まー、股間はガッチガチだけどな」

「ないわー。それないわー。私、性行為はマウント状態が基本と考えているんで。でも、好みの女性ならヌキますけど」

「いやー。そんな都合もないだろー。汚い行為してんのをさらに汚すのはどーかと思うぜ。まー、ヤルし、興味はありありだがな」




ドガアァァッ   パァンパァンッ



「早く戦え」

「その口だけは閉じてください」


これ以上、喋らせると長くなる。

ライラと夜弧が攻撃をして、黙らせるかに見えたが。


「おい。なんで俺だけに攻撃してんだ?蹴りと銃撃ってよ。敵は向こうだろ?」

「うっさい。あんたも巻き込んで殺してあげようか」

「はしたないです。どっちが私達の仲間なんですかね!」


ロイは自分だけそんな仕打ちを受けることで、ちょっぴり元気が出てくるわけだ。しかし、藺兆紗は調子に乗っただろう。どこか集中力に欠ける発言。


「ロイさん。どーです?私の力を使えば、ライラさんと夜弧さんの2人と、ヤラセて。孕ませて。良い子だけを産む存在にしてあげますよ。他の女も使いたい放題」


馬鹿にしてやがる。同時に、嫌悪ってものをこれほどに分かりやすく伝えてきやがる。


「はっ。俺は女が好きだ。お前の悪趣味に付き合うなんかより、絶好調の声量で。女とSEX最高----!!って吼えてみせた。だが、一つだけ。女の嫌いなもんが俺にはある」


出してないっての。そーいう感じだが、ありがとうって心の中で言ってやる。そんなライラと夜弧である。


「女の悲しい涙は見てらんねぇーんだ」


けど、そーいうカッコイイ事は、最初に言って欲しいね。



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