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RELIS  作者: 孤独
人災編
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残念


「なんだなんだ!?」

「突然、人がやってきて!私達に襲い掛かってきます!!」


混乱はすぐに広がり、救助救護の体制を崩していく。数による暴力はすぐに一つの事を選ばされる。



「迷っている場合じゃない。やるよ!」



水羽が先陣を切って、藺兆紗に操られた者達に突撃。無双していく。他に戦える者達も彼等を倒しに行くが、


「四方八方から来ます!」

「数が多すぎます!」


実力差が歴然としていても、戦闘範囲に限りがある。負けることはないが、被害を抑えていくことは難しい。春藍も怪我人の治療を取りやめて、戦わなければいけない状況。守りながら戦うことに不利を感じる。



「ライラ達が藺兆紗を倒せば終わるよ。それまでの辛抱!」



それは自分だけのこと。ここで戦う水羽も同じ事。しかし、戦えずに怯え、命を守るだけしかできない人々にとっては、違う。恐怖と無力さと、絶望、不信。人から襲われることが単純に怖いと思った。

強く、お互いを抱きしめて、守ろうとする力が解けそうとしていた。



バギイィッ



「っ……、逃げろ!」


住民の誘導のため、山佐は暴動の前線にいた。戦う力こそないが、人達を守る力はあった。相手からは無作為に選ばれただけであったが、それに当たることも不運。


「山佐さん!」

「走れ!放送局に向かえ!」


1人に、3人。その向こうには5人。

まだまだ、いるんだろう。自分は逃げ切れるだろうか、誰か助けてくれるだろうか。



ドゴオォッ



住民達の声が、自分の名やその心配をしていただろう。

頭を強打されて集団で虐められていく自分だ。こんなことをされるなんて、想像もして来なかった。自分が痛むことを想像するわけもなく、現実となっていくこと。


「ぐっ……」


俺は人に殺されるのか、そんな最後になるのか。

みんなはどうなんだろうな?



メギイィッ


「山佐さん!!」

「だ、ダメだ!逃げるんだ!!」

「逃げろーーー!!」



見捨てられた?違うんじゃないか。

自分なりに護れたもんだろう。そーいうことにしといてや。

道端で踏み潰されていく自分の遺体に、ちょっとくらい。カッコイイ死に方をさせろ。



グシャアァッ



山佐。死亡。

藺兆紗による人間の物量攻めにあい、人体という形を崩されるほどの死体となった。

そんな彼が護れた人の数は7人ほど。




◇     ◇



ガチャチャチャチャ



「………ちっ」



藺兆紗の攻撃が始まった事を把握した、三矢。春藍も行ってしまい、この場は自分1人。

戦闘能力もなく、アンリマンユの制御に全力を注いでいる中だ。ただの人間であろうと彼にとっては一溜まりもない。

というか、目の前の状況だけしか判らない。


「まだ本体が壊れていないくせに、制御部分がいろいろイカレやがって。緊急時のコードも組んどけ!クソ爺!」



人の物を手直す作業や、人の責任を被ることは本当に辛い。なんで俺やねんって感じだ。



アンリマンユがあまりにも巨大であるが故、全ての動力炉が停止させるまで時間がかかる。自分達がその爆発に巻き込まれる可能性のある動力炉を停止させていくが、まだ完璧ではあらず。上空から降ってくる"SDQ"による破壊も考えれば、これで全てが止まるわけでもない。



急げ、急げ!!



藺兆紗の暴動行為もあれば、三矢の救える人間というのもたかが知れてる。生きて知れるのはどれだけだろうか?

無駄な足掻きが一つ、ここにいる。

それでも、そんな自分でもちょっとは動かされるものがあったんだろう。観測者を気取っていても、助けに行く自分にある"本音"。

心の底で自分じゃなく、人って本能がさせるんだろうか。おそらく、そんなもんだって。三矢の認識がいる。



アンリマンユの制御が三矢の想定よりも手間取っているのは、能力を扱う使用者の差であろう。

素晴らしい力に利便性に富んでいる反面のリスクだ。"解析"の使い手であった安西弥生であるならば、制御はもうすぐ完了していただろうが、三矢のスペックではまだまだ追いつかない。

歴然とした出力の差がある。

焦る気持ちと冷静な技術が合わず、思わぬエラーを生む。そして、動揺が起こる。余計に時間をとられ、三矢は悔しさと己の愚かさに。ちょっとにやけた。

似合わない正義のヒーローか、スーパーハッカー様にでも成りたかったか。

三矢には無理なくせに……。


「悪いか」


もうしばらくすれば、動力炉の破壊が1つ起こる。

その規模を数値かせんでも、全体が無事で済まない事は分かっている。止めたところで"SDQ"もアンリマンユの屋根をぶち壊し、一気に雪崩れ込むだろう。

色々と詰み要素がある中。諦められないとても小さき、成すべきこと。



「この爆発を止められりゃ、少しは時を稼げる。あの屋根がなければ、全員すぐに全滅する」



この世界と時代が終わっちまうのは知っている。

だが、まだ終わっちゃいけないって事も、俺は知っている。

見せてやろうじゃねぇか、足掻いてやろうじゃねぇかって。

俺が俺なりにやれることで、世界を少しだけ護ってやるよ。



三矢のハッキングの完了までに必要な時間は、20分以上掛かると。使っている能力がそれを伝えている。

しかし、アンリマンユの爆発と"SDQ"による破壊活動を考慮すると。



12分13秒。



その時に、再び大爆発が起こる。

どーやっても無理だということを、三矢が感じていないわけがない。

それで諦めることだろうか。




◇      ◇



三矢が懸命にアンリマンユを止めようとしているように、目の前の問題に打ち込む者。


「やはりこいつの装甲は、クローム・エクストスの貴重種だな。アルテマ鉱石の成分も入っている」


アンリマンユの素材を得たアレクはこの災害の唯一の希望、タイムマシンの改造に着手中。すでに様々な必要素材を手に入れたものの、その数が予想以上に足りていないところだった。(クローム・エクストスは元々、襲来してきたアンリマンユを倒して手に入れたもんだから、しょーがねぇじゃん)

そこへ来て、追加かつ貴重な素材を入手できた。

自らの技術力でもどうにもならない事、それは事実であったが。この機会を逃した場合は、己の技術不足を指摘される。自分からもだ。



信じる方ではないが、こーいう機会に自分がホントにできるかどうかは、これまでの自分に左右される。そして、それはできる事に成った。偶然の授かりを確かにできれば、自分のおかげだ。とはいえ、残り時間はそこまでない。



「1週間は欲しい」




アレクの求めている時間に対し、春藍達が稼げる時間はあまりにも差があること。

隔離されたところにいても、外の異変を感じ取れないアレクではないから、悲観する面もある。



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