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RELIS  作者: 孤独
人災編
579/634

雑魚

「ぐふっ……」



藺兆紗は血を吐いていた。

体への負担が思う以上にあり、睡眠をとってもそれを補えるものではなかった。


「どこ逃げてもダメですかね?」


ここで私が彼等に土下座でもして、助けを請うのはいいですか?

人望がないからできませんね。精神操作をする能力者だと余計で……。嫌われ者です。



「ふふっ……」



人間のストックはそこそこ埋めました。肉体の疲労より、体内の異常が苦しい。

ただ保管だけしている人間を抑えつけている余裕はあるだろうか。いざって時にカードは切りますが、敵の数はあちら側の方が多い。

それでも生き残りましょう。私には成さなければならない事がある。



「人が成るべき人になって、何が悪いんですかね。この世界は……」



長い目で見ても、絶望的な状況だというのは藺兆紗も知る。

しかし、見出しているのはここには助かる物があるということ。クォルヴァが待ち構えてまで、自分を警戒していたのを希望と考えている。



「"社蓄蘇生リビングデッド・オーダー・コール"」



ズズズズズズズ



惜しげもなく、不要というタイトルを付けられた人間達を現実世界に召喚し始める藺。

藺の命令だけを聞く。そして、それが本当にできる事か?無能共の命は、捨て駒のためにあるからできんだろ。



「散り散りになって、世界を駆け回ってなさい」



その数、7000人ほど。

1万人は使わなかったが、それでも藺兆紗の体内から感じる激痛。自分が捕え、生み出した存在達を抑えるための苦。能力という点では無限ではあるが、藺兆紗が扱う性質上、有限ではある。最高スペックを持つ存在に歩き程度の動作を指示すれば余分があるのは当然で、両足を切り落とした存在に走れを要求すれば、負担なんて言葉で済まないのは普通のこと。



藺兆紗が最大の能力を発揮できる状態でなければ、"黄金人海"はまず扱えず。藺兆紗の状態に関わらず、"黄金人海"は最大の力を発揮してしまう。その欠点が、藺兆紗が気にしてはいられない事。



シュルシュルシュル



召喚した人間達の姿を自分に模す。

それは藺兆紗が"黄金人海"によって生み出した、"魔術"の使い手による者。戦闘を得意とする者も、藺兆紗のコレクションにいるが、基本的には自分と同じくサポートに徹する人材を多く養成させていた。戦闘力など、戦闘を得意としない藺兆紗が好かず、口八丁で切り抜ける方が彼らしい。それに彼とクォルヴァとの戦闘で分かるように、圧倒的に強すぎる奴がいれば個の強さでどうなるものではないと、理解している。数で押し切る方が"黄金人海"には正しい。

ただでさえ、厄介な能力を持つだけでなく、予想できぬほど様々な能力を社蓄として手元における事は知らない方が良いほど、春藍達には厄介なこと。あまりにキリがなく。



「ひひひ、ふふ…………」



何かを手に入れた時、何かを欲する。人の欲とは待っていて来る事ではない。

苦の中で欲を出す自分に、生きた人間と笑っている藺兆紗。



そして、散り散りに走り行く、藺兆紗の姿をした社蓄達。丁度、仕掛けたライラの霧の索敵にひっかかる。



「!!いる!しかも、大量!」

「こっちに来るか?」

「ええ!だけど、……」



藺兆紗に姿を模したからといって、ライラの索敵が位置を知ることに限らず、対象者の魔力と触れ合うことでその者が持つ特有の色、温度、質感を理解でき、藺兆紗がどれかを判別ができていた。

特に泣かされたあいつの魔力は、殺すまで忘れられない。


「全員、偽物!」

「どっちにしろ。撃ちやすいです」

「だな」



ライラ達に向かう人間達。襲い掛かるという事ではなく、倒されることにある。

彼等は散り散りになっているため、一気に7000人を相手するわけではなく、その一部である。20人程度のこと。ライラが索敵の展開をしているため、ロイと夜弧が簡単に迎撃していく。

それを感知し、藺兆紗も彼等の存在を把握する。



一度に数十人が固まって、瞬殺されたら分かる事も多い。



「私を殺しに来ましたか。霧が出ているあたり、ライラさんはいるようですねぇ」


討伐は大人数ではない。

この災害の連続。防衛や救護に当たるのが、国の常識であろう。私のために来ているのは、戦うための者達だけ。おそらく、3人か4人。

数で押し切って行くには、質が足りない。そして、倒すために来た連中に合わせる私ではありません。あなた達への霍乱は無意味かもしれませんが、どうでしょうかね?そっちの方は



藺兆紗は指示を飛ばす。途中で与えた命令に付けたし、変更も。お互いに見えない連中に、聴こえぬようにだ。



「雑魚の細かい指揮系統を頼みますよ」

「分かりました…………」


人間を操る人間がいる。部下と上司のようにだ。

自らとほぼ同じ思考傾向にある人材を育て上げ、捨て駒達の司令塔をやってもらう。

自分にもライラの霧が届き、位置が割られていると判断。それでも行く。



「おほん」


来てくれるのなら好都合かもしれません。こちらは勝たなくて良い。彼等をかわして、私でも先へ行ければ生き残れる。

彼女達にぶつけるカードはあります。



一方で、ライラ達との衝突を避けられた社蓄共は、不気味に徘徊しながら住民達がいる生活エリアに辿り着こうとしていた。一目では人であるが、眼が虚ろであって人の気がしない。災害という渦中ではあるかもしれないが、そいつ等は周囲を理解していない。与えられた命令だけをこなす社蓄。

転がっている石や瓦礫を持つ。大小も重量も、関係ない。


ズシィッ



「…………」



ポンポン……



「ひ、人だ」

「な、なんだあいつ等は……」

「そこら中から来るぞ」



戦闘能力はないに等しくても、人間が手に石を持っているだけの殺意のない、そのポーズは恐れられる。こんな状況で人と人との争いがどれだけ心を削ってくるか。

藺兆紗には分かっている。


ただの投石であっても、人の恐怖心を煽る。

その叫びを聞き取って藺兆紗は彼等の情報を離れながら、握ろうとする。



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