社蓄
「管理人なら殺しちゃっていいかなって、私は思います」
"SDQ"に、アンリマンユという予想外を前に。
ライラ、ロイ、水羽、春藍、アレク。ほぼ主力の5人の活躍により、一時的であるが退ける事に成功する。
そして、その間の出来事である。
「殺しちゃっていい、か」
クォルヴァ VS 藺兆紗。
2人の激突は、激突と呼べるものではなかった。
そーなんねぇのは藺兆紗が相手であるからだ。
パチンッ
「!!」
クォルヴァの目の前に現れ始める人間達。"魔術"による、生物関係かと睨む。しかし、それは物量を見た瞬間に、その発想は無意味とかす。
クォルヴァと藺兆紗の間合いの、その間だけじゃない。クォルヴァの全方位から現れる人間達。以前、フォーワールドでかっさらった人間達。
「潰せ」
グシャアアァァッ
人が襲いかかるというよりは、潰しにかかるという。藺兆紗の命令通りのこと、人間の物量でクォルヴァを攻撃した。飲み込まれるという、重たい重たい攻撃。
身体能力に優れないクォルヴァにとっては、……
「!」
人間を30人、いや、40人。
それらを抱ええて藺兆紗にダイブしていくなんて、ありえそうもない!が、起きる!!
「お返し!」
襲い掛かった人間達と同化し、一つの体となる。藺兆紗に脳を操られていようと、体の制御を握れば関係ない事。洗脳による操作と、意志を通さない操作による差が出たところ。
ドガアアァァッ
「ふーむ」
"魔術"であれば、同じように身体能力を警戒する必要性はない。
自らの社蓄共がいとも簡単に、身動きがとれていない。今の人間寄せ集めハンマーはどー見ても、一般人のようにスローな動き。相手の視界も、呼吸も封じている。自分が避けられるほどの大した事のない、攻撃。
「ま、怖いんで」
藺兆紗は自らの社蓄の1人に、自分をおんぶさせる。ちょいとダサいが、"超人"として育てた人間におんぶしてもらって、動いた方が早くて安全であるからだ。さらに自らを護衛できる人間を召喚。ガードはガッチガチ。守備重視。
クォルヴァの間合いも完全に把握し、藺兆紗は距離をとっていく。
ダーリヤにしろ、王震源にしろ。その間合いは、"超人"らしい接近戦だった。
クォルヴァの攻撃が迎撃型しか持ち合わせていない事で、藺兆紗とは距離が噛み合わない。そして、バレてないにも関わらず、彼本体からの攻撃はない。操った人間による攻撃が軸。
「……………」
操った人間を操作して物量攻め。単純だけれど、私とは相性が悪すぎる。
とはいえ、藺兆紗が私に対して、決定打を放てるとは思えない。この重くて、暑苦しい攻撃も"エターナル"の前では無力。
お互いに決定打を生めず、なおかつ、攻める手立てすらなくなりそうな状況。
長期戦&長期戦。むしろ、泥仕合の様相である。操った人間から得ている情報から、押し固めたところでクォルヴァが死んでいない事は伝わっている。故に、
「回復能力もあるとか。これは相性とかの問題じゃないですね。強っ」
藺兆紗が、その眼力を持ってしてクォルヴァの能力を暴いていく。暴くほどに、自分じゃ勝ち目がなく。負けることもないと思えるだろう。
でも、それじゃあ、ダメである。
厄介なことであるが
「弱りますね、勝ち負けを決めないと生き残れないのが、社会ですか」
抱える人間が多くても、藺兆紗がいるのは敵地!!そして、危険地帯!
クォルヴァに負けずともこの場では、藺兆紗が倒れる危険性が数多く存在するのである。また、逃げるも持ってのほか。数こそ多いが、これは形式上はタイマンである。
実力者達に囲まれれば、"黄金人海"といえど、質の差で負ける。ここでクォルヴァを倒せれば、グッと生存確率は上がるというもの。
「……………」
プシュウウウゥッ
無傷で勝ちたいですが、このクォルヴァ相手じゃ難しそうです。
仕方ありません。温存も結構でしょう!
ここが"SDQ"が噴出する危険地帯であることを把握した瞬間、さらに距離をとった上に。
「!!」
ズシシシィィッ
クォルヴァに対してさらなる、人間による物量攻め。押し固め!様々な小細工であろうと、"エターナル"の回復速度と性能を上回る能力などないであろう。雑兵共の寄せ集めをこれでもかってくらい、藺兆紗は続けていく。
クォルヴァの体はさらに重みを感じ、潰れていくだろう。
「むむっ」
巨人に踏み潰されているような状態だ。人海戦術のみでやれるとは
こいつ、できるね!
クォルヴァからすれば、我慢比べは望むところだった。
自分にかかる人間達の重量から、藺兆紗が100や200のどころではない人数で、押し潰そうというのは容易に汲み取れる。人間を洗脳することで魔力の消費を抑えているであろうが、数が数だけに、大きな消耗は必然。
「1000、2000、いや、」
「5000とかじゃなく」
フォーワールドより連れ去った人数は20万人以上。逆にそれ以上の人数は来ないであろうし、長時間の操作はまずできない。踏み潰されるだけであるなら、私は倒れない。
クォルヴァの読みは正確であった。
「10000」
100を超えた時点で、クォルヴァを潰すというものではない形だ。その上に乗る、その上に乗る。それを繰り返しまくって出来上がったのが、人間タワーというか人間ビルだ。押し固めて、押し固めて。密着した人間達によるオブジェができてしまっている。
10000を超えての人間ビルは、クォルヴァだけの攻撃ではなくなった。
「!!」
全てと同化はできるが、動かすことなんてもう無理だ。人間同士が絡まっている。
まったく、待つのも辛いんだけどね。
そして、さらに積み上がって行く。クォルヴァが計算できないほどの、人間の数によって
ズシイイィィッ
周囲の大地が、人間達という重さのみで沈み始める。そりゃある一辺に、何万という人間が圧縮して集まってしまえば、重量オーバーも納得できるものだ。
しかし、それを狙ってやっているとしたら、とてもまだ弱い力である。
「まだ、潰れませんか」
人間達の可能性なんて、絶対的な力の前で屈するものか。