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RELIS  作者: 孤独
残骸編
573/634

溶接

ライラ達の時間稼ぎによって、この窮地でも事態に向き合える瞬間をとれた春藍とアレクであった。


「呼んでくれて、ありがとう。謡歌」

「な、なんとかできるの!?お兄ちゃん!!」

「しなきゃマズイね」


2人に速報を流した謡歌は心配でいっぱいであった。

そして、謡歌とは別にもう1人。もう1体か。


「あの形状の科学。私のデータに記録されています。何者かの科学兵器でした。フォーワールドに現れた者とサイズは違いますが、同種です」


久々登場、NM_H。メイド姿であり、ロイと共に異世界を周った者からの報告であった。


「見れば分かるけど、僕も見た事ないほど巨大だ」

「あの様子ではやられたとかなんとかだが……」


アレクは向き合いながら考えた事は、アンリマンユの巨大さと今のタイムマシンの改造に必要不可欠な問題を解決するような、ヒントをもらえる気がしていた。

次に言ったことは、まるで窮地を考えていないこと。


「利用する」

「止めるのではなく?」



まぁ確かに。水羽とロイがあれだけ壊しても、その全容が見えないほどの巨大さだ。完全破壊には相当な時間はかかるだろうし、瓦礫だけでフォーワールドが一杯になることもありうる。

それに春藍も頷く


「"SDQ"に侵食はされているかと思いますが、あの巨大さ。上手く使えば、この世界全体を屋根のように扱い、一時的な防衛手段として採用できるかも」

「いい着眼点だ、春藍。俺もそれを思っていた。良い素材を使っているかもしれん。壊すのは勿体無いぞ」



それは話が違うんじゃない?



「侵食がまだ完全に済んでねぇほど、シンプルで良い物だ。ただデカイだけとはいえな」

「!」


アレクさんが人の科学を褒めるなんて珍しいと。それが異国の技術であれば余計に、春藍はレア経験をしてしまう。よく考えれば、アレクはポセイドンの弟子ではあるが、その実。すげーシンプルに特化した性能を好んでいる。

案外、琥珀博士と上手い事出会っていれば、意気投合していたかもしれない。


「溶接だな」


それがアレクの提案だった。


「春藍。全開で、ここら一帯を覆うドームを造れるか?」

「いけます!!」

「即答、心強いな。そっちは任せるぞ」



アンリマンユの破片に触れ、成分や素材などを調べる春藍。もうすぐ、準備が整う。



バギイイィィッ



「クソッ!」


めちゃくちゃデケェ!こんなにぶっ壊しても、こいつにとっては一部みてぇなもんかよ!水羽ちゃんがどんだけぶっ壊した思ってんだ!まだ、向こうの奥まで見えねぇ!!


ロイと水羽が懸命にアンリマンユの落下の足止めを行なっているが、それもそろそろ。己の限界よりも早く落ちそうである。そこへ破壊音とは別の、創造されゆく音と光景が広がる。



ビイイィィッ



「ん!!」


アンリマンユが破壊されていく事で生まれる粉塵をベースに、集まって固まろうとする。この仕業が春藍であることを直感し、何かをすると理解。

同時にアンリマンユ内に入った水羽の回収へと、跳んでいく。


「なにかすんだな!春藍!!」



ドオオォォンッ



そんな言葉の後に来たのは、炎龍。アレクの"紅蓮燃-℃"が生み出したもの



「お、お前もやるんかいぃぃっ!!」


ロイは驚く。と同時に、ふざけんじゃねぇって。アレクに敵意をむき出しにする。この巨大な炎龍。明らかにアンリマンユを狙っているが、同時にロイと水羽を狙っているし。


「俺を追尾してんだろ!!この動き!!喰らったら、死ぬだろうが!!」



物凄い勢いでアンリマンユ内に入り、


「水羽ちゃん!逃げるぞ!巻き添え食らう!」

「へ!?」

「アレクがなんかやりやがる!!」


水羽はアレクの強さをなんとなく分かってはいるが、実際には正確に見た事がなく。ロイとの反応がまったく違っていた。逆にそれが暴走なども起こさずに、ロイが水羽を抱えるまでの時間にロスが少なく。



ドガアアアァァァッ



炎龍とアンリマンユが衝突するまでに、脱出することができた。


「ちょっ」

「…………」



脱出って言っても、俺達は上空から落ちるんだぞーー!!1人抱えた状態で受け身しろってか、この野郎!!


ロイと水羽の2人とは裏腹に、アレクはアンリマンユと対峙する。しかし、それは全力でぶつかり合うというものではなく、余裕が垣間見れた。

水羽が見せたようにアンリマンユの内側が弱点であり、なおかつその傷口が大きく曝け出されているところ。



「熱加減が難しい」



当てるだけで十分。そして、炎龍は昇りゆく。



ゴオオオオォォォッ



轟音と高温を出し、上空にてアンリマンユを灼熱と共に焼き払っては熔かす。



「うあっ!」

「落下物がみるみる蒸発している!!」


耐熱性などあったもんじゃないと、熱量で押し切るアレクの技は一気にアンリマンユを



「倒し切っちゃうかも!!」

「いや、無理ね」



アレクの攻撃を持ってしても、アンリマンユのサイズの全てを熔かしきれない。炎龍はもうすぐ、そのサイズ差を受けて消え入りそうになる。しかし、それで良い。



ドオオオォォォンッ



「もう一頭、発射した!」

「でも、色がなにか。薄いというか、明るいというか……」



アレクは一撃目でアンリマンユを打ち上げ、衝突した物を液体すらさせずに熔かすものにしていた。次に出てきたものは、完全に液体で熔かす程度の熱量であり、持続性に富んだもの。使い分けて状況の打破を狙う。



シュパアアァァッ



ロイと水羽がある地点通り過ぎ、そこから春藍が世界の屋根の基盤となる下地と、支える柱を創造し始める。アンリマンユの装甲に合わせられるものとし、広がっていく。その下地はとても薄いが丈夫であり、


「準備は完了しました!」

「熔かすぞ」


春藍の準備を確認し、アレクの炎龍はアンリマンユへと向かう。

完全に熔かしきれない熱と炎を発するわけだが、液状化に持って行く程度には十分にある力は。



ボタボタボタボタ



これから長時間、アンリマンユの本体を熔かしながら、春藍が造った屋根の上へと溶接されていく。さらに"創意工夫"を用いて、アンリマンユの中でもっとも硬い装甲となって、分厚いものとなっていく。


「あれか!ホットプレートでお好み焼きを作るみたいな感覚で、全部受け止めようってことか!!」

「ホットケーキとかを焼くような感じで、落下物を防いだ!!」


……あながち間違ってねぇけどさ。

そーいうことである。



「あのサイズを熔かして貼り付ければ、相当固い屋根になるだろう。"SDQ"を一時的に止められそうだ」

「あ、陽が差さないんですけど。大丈夫ですかね?」

「……それはまた後だな」



フォーワールドの空のほとんどに屋根が付けられ、陽がなくなった世界に変わった。



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