粉砕
「なんつー、目覚ましだよ」
「でも、僕にとっては……嬉しいようで、悲しいようで。活躍しなきゃならない時です」
ライラが"SDQ"を吹っ飛ばしてからすぐのこと。
「ヒュールさん、放送をかけてライラに何もするなって伝えてくれ」
「落ちてくるデカイ残骸は僕達で対応します」
「やれるのであるか!?」
「応!!任せとけ!!」
ロイと水羽が起きる。
「食事はご用意しておきますね」
「頼むぜ、アルルエラ」
「ロイさんと、朝食前の運動をしてきます!」
◇ ◇
「まずいわね」
思った以上に魔力を使ったっぽい。体がキツイわね。瞬間的な量と質は、自分最大ってところだけど、持久力がないわね。私って。
「魔力を少し分けますし、体の回復も」
ライラと夜弧が組んでいるのは仲の良さもあるが、コンビとしては相性の打ち消し合いができるからである。ライラの魔力を回復させながらのこと
ピンポンパン
「!緊急放送」
『第一級避難命令です。上空を見れば分かるとおり、巨大な落下物が地上に向かってきます。速やかに近くの建物内に入り、備えてください。ロイ、水羽の2名がその対処に当たります。くれぐれも手出しはしないように』
ヒュールとラフツーより、
内容の多くは住民達の安全な避難と誘導。ライラ達への情報伝達が発せられる。
それと同じくして
「ジャンケン!!」
「ポン!!」
ロイと水羽はジャンケンをした。こんな状態で何してんだ、こいつ等……。
「ホントに任せて大丈夫なのか?」
ラフツーの心配もある。放送中にジャンケンやってる連中に、次の事態を任せること
「心配無用である。現場の人間が言うのであるから、それを信じるのが責任者でもあるのだぞ」
アレクの言葉っぽいが、ヒュールは2人の力を信じて、ジャンケンを見届ける。
ロイはチョキ。水羽はグー。
「じゃー、僕が相手だね。謡歌にカッコイイとこ見せられる!」
「負けちった。しょーがねぇな」
外に出るや、ロイは水羽の両手を強く握った。ラブロマンス的なことをすんのかと思いきや、本気でするかのごとく、水羽を浮かせるほどに。
グルングルン
激しすぎるロイの演舞。つーか、技。ジャイアント・スイング。味方の水羽にやってどーすんだ、おい!!
「旋風門外!!」
ウオオオォォンッ
回り、捻り、力!それらを合わせて、水羽の体を超回転させながら上空へと投げ飛ばす。水羽が飛んでいく先には、"アンリマンユ"がある。
「あ!しまったっ」
そして、そこでロイは一つの後悔をした!同じ技であっても、使うポイントを誤っていたと
「両足首持ってやれば、水羽ちゃんのパンツが見れたんだった!!損しちまった!!」
「やっぱり、ふざけているのか!?」
一方で、ロイに投げられる形で上空へと昇り、アンリマンユへと向かう水羽は、自らにかけられた超回転と推進力を制御しつつ。
「せーーーのっ!!」
バギイイイィィィッッ
一撃の拳で、あの超巨体のアンリマンユを動かしてみせる。さらに水羽は恐ろしく硬いアンリマンユに、
ガァァンッ
左の拳をアンリマンユに埋め込む。上空という場所で、自らの体を支える足場を造ってみせる。足場というか腕場って言うのかな?
「これ、デッカ!」
体の一部を埋め込んで固定をするものの、落下している事には変わりなく、見上げれば遥か先にまでアンリマンユという一個体でできている。想像以上にデカイ存在であり、規格外であるが故に持つ、無茶苦茶な強さは水羽と同じであろう。
予定や計算など、水羽にとっては微々たる、工夫であった。
それが違ってあろうと本能で動く様こそ。彼女らしい、ただただ強いの極地。自然体。
バゴオオォォッ
先ほど、足場を作ったと。腕をぶち込んで説明したが、それはもう違っていた。
そのさらに奥。自らの体が入れるぐらいに破壊し、完全なる足場。戦うには十分な部屋を腕力で作り上げる。
「ふーん」
装甲と違って、中は結構もろい。動物も外からの衝撃に強くても、内からの衝撃に弱かったりするもんね。
水羽は瞬時にアンリマンユの体内から破壊を試みる。この巨大さと可動能力を備えてあれば、構造と強度が部分によって異なっているのは当然。水羽が本気にならずとも、
ガラアアァァッ ガオオォォッ
内から、あの巨大なアンリマンユが割れていく。さらに水羽は駆け上りながら、アンリマンユを解体していく。恐るべき速さ。
「わああああぁぁっ!!」
「すげーーーっ!あのデカブツが見る見る内に、解体されていく!」
「いや、待て!!」
しかし、割れていっても。住民達には分かってしまう。
「破片がでけぇーーー!!」
「破片でも家一つ分ぐらいのサイズがあんぞ、あれーーー!!」
ドゴオオォォッ ガオオオォォッ
アンリマンユがフォーワールドに落ちてきて、即全滅という展開は避けられたものの、0という被害にならず。アンリマンユの破片が建物のいくつか。住民達の何人かに衝突し、被害は確かにあった。というか、
「お食事はまだですけれど」
「いや、思ったよりあの落下物がでけぇ。というか、どっかであれを見た事あるんだよな」
ロイはアルルエラを外に呼んでいた。アルルエラはロイの腰に手を当てていて、ヒュールとラフツーはロイのやり方にいよいよ心配になってきた。そして、次の瞬間。アルルエラは"独楽"を発動し、全力でロイを
「空まで自分で飛んでいきなさい!!」
「俺のジャンプより、お前に投げられた方が高く飛べるから良いだろーーー!!」
いや、ライラを最初から使えば良いだろうが!
自分で言っちゃったから、そーいう作戦選んだだろ!テメェ!!
「しかし、何故。上空にロイまで」
「水羽ちゃんと共にデカブツの破壊であるか?」
"超人"ではないし、人としての意見である。
「いえ、あの人も無茶苦茶やりたいだけですよ」
アルルエラには、ロイがそこで何をするかが分かっていた。