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RELIS  作者: 孤独
残骸編
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晴天


望んじゃいない事が今、目の前に起き。そのために今いると、



「はああぁぁっ」


ライラの魔力はここからさらなる飛躍を遂げる。マイナスな精神要素をまるで感じさせず、高揚として、この絶望を覆さんと濃度を高めた。




ゴゴゴゴゴゴゴ



住民達は一瞬の絶望に囚われ、悪夢の上空を見ていた。そこに映るライラの雲では薄いものであったが、念じられると同時に急速な発達を遂げる。厚くなった雲は上空からの"SDQ"を受け止める。



速く、力強く、長く。



あれこれ、どうのこうのという。対策という対策も破ってくる"SDQ"に、そのさらに上に控える落下物、"アンリマンユ"という状況。選択の時間もロクにない。悩みを相談する、気長ですね。

ライラは本能的な相対をする。破壊じゃない、利用する。どうする?からの答えじゃなく、風にしていた。



もっともっと



ボフウゥンッ



雲は"SDQ"を受け止めるクッション。しかし、貴金属を受け止めた手応えじゃなく、ウィルスのように雲へと侵入し、分解や相殺をもたらす。花火のような音と光を発して、勢いだけを落としている様。"SDQ"そのものはまったく消えずに、後ろにも控えながら増え続ける。



「ライラの雲で"SDQ"を受け止めている!?」

「どんどん雲がぶ厚くなる!」


住民達からはそう見えるだろうが、夜弧の目には違って見えた。確かに雲は厚いが、それでもまったく足りていない。しかし、上空の変化で悟る。雲の流れが激しく動き、集まる。



「風で、"SDQ"を操ろうとするの!?」


雪のような形状を持つ存在ならば、破壊できずとも弾き返せると!?住民がいないところへ運ぼうとする気!?でも、そんな長い時間、ライラが持つわけがない!そっからどーする気!?



夜弧は、ライラのこれからのやり方に息を呑んでいた。



あれこれ考えられない状況のライラが、シンプルに運ぶではなく弾き返すを瞬時に選ばざる終えなかった。結果として、判断と覚悟、反射。それがギリギリであろう、"SDQ"を持ちこたえる限界を引き伸ばした。

選択できるほどまだまだひ弱い。いや、災害を前に一個体がなんとかできるわけもない。

全力でその場凌ぎ。夜弧の心配とは違い、これしかないというだけの覚悟。



「まだぁぁっ!!」



力、技、速さ。どれも足りていないっ!!

あたしがやんなきゃっ!!これくらいできなきゃ!!

いけないのよ!!



バギイイィッ



"SDQ"によって、雲の厚みが無くなっていくが、舞い始める。クッションの役目を終えようとし、突き上げるための台としての役目に切り替わろうとする。


「今!」


出てきたところから無理矢理、押し返してやる。



「あたしがやんなきゃ!!」


ここまで積み重ね、蓄えたもの。この一瞬に限り、全力を出せというのはライラ自身は初めてで、足りていないという認識を持ったままの最大値であった。


「誰のためにもならないでしょ!!」


それは事実である。メテオ・ホールの力を得てしても、この災害を相手に打ち勝てない。1つ2つじゃ少なすぎる差。

だが、それでも。



パキイィッ




ライラの近くにいる夜弧はゾッとしただろう。確かに自分よりも上、それはパッと見のこと。メテオ・ホールやダーリヤ戦を経て、格段にライラが強くなったという事実。

他人が引いた限界の線など、あてにならないという。己にある限界の線。

出しつくすという簡単にして、難しいこと。"超人"や"科学"のシンプルさとは違い、"魔術"は複雑で扱いが難しく、強力であっても制御する事がなければ霧散。精神力、想像力、タイミング、諸々。人それぞれ違っているから、伸び悩むこと。指導の難しさも分かる。


「ライラっ!」


あなた、まだ強くなれるわけ!?

こんな短期間で強くなれるなんて……。一度、固い殻が破れたら、とんでもない成長はするものだけれど。これほど早く強くなるなんて。これは、私とは素質の違いが雲泥の差。



「まだまだぁぁっ!!」



メテオ・ホールの力を得たというのも、限界を塗り替えた要因の一つであろうが。それよりあるのが、逆境でのセンス。ピンチでの闘争心。ライラ自身にあるもの。

強敵との連戦と、窮地からの打開、止めたいもの。続いてくるものは毒のように、肉体を焦がしたであろうが、彼女は耐えうるどころかさらに高みへ行く。



乱波らっぱ


風がそこまでいく。竜巻が昇る。"SDQ"が流れ込んできたところを押し戻すために、



風神ふうじん!!」



ドオオオオォォォッ



ライラの風と雲は、降りかかる"SDQ"の全てを巻き上げて、開けられた穴へと返していく。雪崩を押し返したというか、


「逆に向こうの異世界にまで、届いている!!」


ぶっ飛ばしたという表現が近いだろう。弾き返したどころじゃなく、世界の一つを押しのけるような、とんでもない風をライラは生み出し、"SDQ"の侵食を止めていた。

空は晴天の如く、綺麗に一掃されるのであった。しかし、



「うあああぁぁっ」



まだまだ、足りない!これじゃあ、まだ!!


「!ライラ!!」


全力の中の全力か。あるいは、限界を突破した事で成せた結果か。

それでも満足せず、狂乱しているようになっているライラ。その瞳と心は震えており、夜弧は抱きついて止めた。


「これ以上はいいの!ライラが壊れるわ!」

「ッ……でも、……一時的……」

「頭を冷やして!十分に時間は稼いだ!!」


それでも押しのけたという時間稼ぎ。夜弧からしたら十分、ライラからしたら不十分。


「風でやるのが限界だったんでしょ!?落ち着きなさいよ!!あなたが、壊れちゃったら。ダメでしょ!!」

「!!夜弧……」


言葉に反応し、落ち着きを取り戻し始めるライラであったが。上空にあるそいつはまた、落下始めてやがる。重量が"SDQ"とは違い、圧倒的に重かった。

ライラの風で"SDQ"を浴びてもなお、まだ完全に消滅していない残骸の数々。



「ちょっとちょっと、"SDQ"じゃないけど、鉄くずみたいなのが」

「というか、デカくない!?」


巨大過ぎる"アンリマンユ"のボディ装甲が、フォーワールドに落ちてくるのは変わらず、ライラと夜弧は立て直そうとする。




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