両名
"SDQ"。"アンリマンユ"の落下。藺兆紗の襲来、秒読み。
「始まりましたか」
両名。
「トラブルは次々だな、おい」
動く。
クォルヴァと三矢正明。
お互い、近くにいるわけではないが、その行動はまったく違うもの。トラブルの大本命にライラがぶつかり合い、次に動いた2人はカバーのように、そして、分かりやすく扱えやすく。
「力を貸してくれ、安西」
外にいた三矢はアンリマンユという巨大な存在を確認し、それに対する手段を出した。隠しているものではなかったが、あくまでこの力は己の物ではないことと、言われてねぇことで使用を控えていただけ。またあえて言うのなら、"本音"と同じく、戦闘向きではない代物であるからだ。
安西弥生
スタイル:科学
スタイル名:解析
スタイル詳細:
プログラミング型の科学。造られたプログラミング言語、システムを解析し、編集、修正することができる能力。琥珀博士の"ギガント・モデリング"と同様に、本体自身にある珍しいタイプの科学である。ある意味では"超人"かもしれない。
三矢はかつての仲間の力を借りて、"アンリマンユ"に挑む。
それは戦いとはまったく違ったものであるが、……
ピィィィンッ
「!っ」
"SDQ"による地震やその影響によって生まれる音ではない。しかもこれは、脳内に響く。そいつにしか聴き取れない音。……失礼、2人にしか聴こえない警告音。
空間を物理的に破壊したものではなく、別空間からのアクセスを受けたときに鳴る警告。管理人という自分を活かした、警戒への強さ。
息が合った、タイミングが良過ぎる。それを2つ、3つに思ったが、
「私と若は、侵入者のところへ行きましょう」
『!い、良いのかよ!?ライラだけだぞ!お前がいなきゃ』
「彼女達とは反応と警戒網が違いますのでね。ともかく、すぐに済ませましょう」
クォルヴァは経験から意図的だろうが、偶然だろうが、どーでもいい、良き判断。素晴らしく早い切り替え。トラブルに求められる反応だ。原因究明など、まだあとでいい。
警告からの追跡。敵が現れる場所の解析。
クォルヴァは若の"ディスカバリーM"の力を借りて、空間の歪みを計る。
『応用もクォルヴァの圧倒的な魔力で成立する、力技だけどな。やべぇ』
藺兆紗が使っている科学は、元々、管理人が使っていた物である。そーいう意味で追いかけることは難しいことではなく、現在地から外れていようと、空間移動を持つ若の力があれば先回りが可能。
バシュウゥッ
それはほぼ同時に向かい合い。そして、臨戦態勢をとるという。互いに完璧に、獲りに来たというに相応しいもの。
「残念、私です」
「あら?なんか先回りされちゃいました?」
予想、してやがった。先周り、してやがった。
戦闘タイプではない両者ではあるが、それでも戦うってんなら
「捕えるか、殺す」
「マジな顔しないでください」
クォルヴァ(ついでに若) VS 藺兆紗。
2人のバトルは"SDQ"の噴出口によって、立ち入り禁止区域にしていた無人の住宅街。
かたや管理人最強の魔術。かたや最強の精神型を持つ、魔術の使い手。
単なる能力バトルになるか。戦闘を得意としていないらしさが出てくるか、
「…………」
やはりここにも"SDQ"の影響下がありますか。しっかりと場所を選べないのが難点なんですし、先回りされたとあってはヤバイですね。長い時間、持ちこたえますかね?私は。
「っ」
藺兆紗の現状把握は悪くない。思考の時間、2,3秒。"超人"との戦闘であれば致命的であったが、クォルヴァが"魔術"の使い手であり、空間移動こそ持っていようと、即座にこの間合いを詰めるか、攻撃できるかの手段を持ち合わせていない。
クォルヴァが自分なりの電光石火で藺兆紗に触れようとするも、避けられる。空ぶる左腕。
「ほーっ」
「おしい」
こいつが、謡歌ちゃん達の精神汚染をした者のようだね。
身のこなしが思ったより良いけれど、君の能力は私には通じない。触れさえすれば勝てる。
自分の知る場所であり、相手の能力も大まかに掴んでいることで、情報戦という面では優位に立っているクォルヴァ。そして、油断なく攻めたのもナイスな動きだ。
一方で藺兆紗は心理戦を仕掛けつつ、戦いを始まる。
「そりゃそうですか」
長引く相手ですし、勝てますかね?向こうの敵の数は結構ヤバイですし、"SDQ"も大量にあるこの場での長期戦は、身体能力に不利がある私にはピンチ。
とはいえ、
「万全じゃありませんからね」
「!」
「私、結構。魔力が多いんで、踏み潰しますよ」
一目見ても、感じるほどの膨大な魔力。それを目の前にしても藺兆紗が憶さないのは、自分もそれに匹敵していると、見栄でもなく自覚で言っている。
素早い戦闘ではない分、言葉という力も大きく。クォルヴァが確かに"万全でない"ことが、間合いを詰めることを躊躇った。藺兆紗の観察力、そして確かな事実が、クォルヴァの追撃を止めた。
「……藺兆紗とか言ったかな?」
「ええ、あなたはクォルヴァ管理人と言うんですかね?」
接近戦で使用する魔術ですか。随分と珍しく、使用が難しい能力を持っているんですね。
悪いんですが、見逃しませんでしたよ。今のは!!
あんたは接近でしか、私に攻撃できませんねぇ~。
「管理人なら殺しちゃっていいかなって、私は思います」
戦闘が苦手な割に、強気な発言が藺兆紗から出た。同スタイルの戦いとなると、グッとくる熱さから来た心の声が、口から出た。
お互いに能力の一部を知った事で、藺兆紗とクォルヴァの差は縮まったと言える。
能力の差、性能の違いが出てくるのはこれから。
本人達とは違う戦いもある。
"エターナル" VS "黄金人海"
シンシン…………
破壊と、殲滅の、"SDQ"が降り、地面から噴出する危険地帯で対峙する両者。