妥当
「未来が分かったもんじゃねぇし、でも。死ぬ必要ねぇし」
三矢にすれば観測者の一面。ある意味で、"時代の支配者"の協力者だろうか。
「生きるお前達が、過去、今、未来の。人々を思って戦う必要性はないだろ。その時が来るまでな、できてもねぇーし」
生きて欲しい人は戦力であること。
これが最低条件であり、そこから先のことは死んでいく奴等のあーだこーだも、意味がない。三矢はそーいう感じである。それでも良いとする。ただし
「とはいえ、絶対に向き合ってくれ。普通なら、生きていないお前達が生きているんだ。"時代の支配者"からすりゃ、たぶん、ビックリするし。新たな発見もある。そこに平和があるのか、ないのか。それとも一人ぼっちか」
期待感とは違う。未知故の、不安。対策のしようがない、期末テスト的な?
「僕がそれを決めて良いのかな?」
「良いだろう。代表って事に自信持ってくれよ、春藍慶介くん」
生きる奴等が決めれば良い。
三矢が人間っぽい一面とも言えるが、真っ二つにするようにクォルヴァは
「殺すのが得策だよ」
「おーい。俺の全否定かーい」
「とはいえ、殺せたらの話だけど。私をしても、次元が違う相手だ」
戦うように願う。そのための事をしてきた。
ただ
「とはいえ、倒した後の事やその場の状況が気にかかるのも納得する」
「クォルヴァさん。もし、"時代の支配者"が強大な力で、そして、強固な支配を持って世界を纏めていたら、どーですか?……悪人は良い気分がしませんけど」
「戦い辛いかな。世界が相手だ。もし、倒したらなんて事を考えて、また世界が壊れたら大変でこっちが罪になるかも」
あーだこーだを考えたふりした。
「でも、なんだろうな。私を持って言わせるほどだけど。殺すなり、倒すなりしてから、先を考えてくれ」
「憎悪で、倒せと?」
「あくまで悲願だよ。憎しみなんてものはないよ」
上手く言えんところであるが。クォルヴァではなく、あえて三矢が語り始めたのは、ちょっとした違いであろう。
「管理社会にしろ、人社会にしろ。過去も未来も、現在も引き摺ってやっていくわけだな。そりゃー、人として大切なもんが見えたり、知れたりするわけだ。だが、"時代の支配者"は間違いなく違うな。気の長い人だ」
世界が滅ぶこと。それについて、両方共に意見は同じところもある。
しかし、決定的に違うことを挙げれば。
「俺達はなんであれ生き残って、そこから始める。何人だろうと、辛いことも笑ったことも、泣いたことも、楽しかったことも。みーんな、味わって生きていく。そーいう社会にいるわけだ。生物はそーやって長い時代を過ごしたって、証明してるしな」
地続きである、人社会と管理社会。一方で、
「"時代の支配者"は、完全に0にする気だ。災害を持ってして人類全てを滅亡させ、再建するほどの異常者だ。それを知るのは俺達だけになり、あの人は何か気に食わなきゃ、そーやって0に世界や時代を終わらせる。この差は大きいんじゃねぇーか?」
どっちが正しいなんて、ありゃしないだろうけど。
三矢が内心抱いたことは春藍達も、分かったことであろう。
「……なるほど、確かに僕達がいなくなった後の世界ですか。歩んできた道の全てを切ること、人がこれからどう変わってしまうのか、はたまた違ってしまうのか。難しいところまで考えるなぁー」
あえて言うのなら、意味の。ある、なし。の二択。
「僕達が生き残ることに意味がある、としたら生き残り、場合によっては戦う必要性は十分にあるわけか。もし、僕達が倒せなかったら、全ての時代を支配されてしまうというのは人として怖いかな」
春藍はその整理を終えるも。難しい判断であるのは、変わりないと、表情から出ていた。そこにクォルヴァは悩みを打ち消そうとするかのように、
「力を本当につけられたら、勝ち目どころじゃない。春藍くん、君の力やその気持ち。大変だろうけど、そこには私達だけじゃなく。全てが詰まっている事を忘れないでくれ」
「……はい。難しいですけど、僕も。そーいう、みんながいなくなるのは違うって、思います。遅すぎる事かもしれませんけど、全力で伝えてみます!」
代表といえど、一個人でアレの意志を圧し折るのは無理だろう。
概念を曲げるなんざ。でも、圧し折ろうと行動するのは間違いではない。実験して、失敗が分かること。
「はいはーい。分かったわよ、あんた達の気持ち」
「ライラ」
「正直、あたしが思う以上に壮大な相手だからさ。春藍で聞く事にしたけど、……おかげであたしは準備万端になったわ。災害と相手じゃ。大分違うしね」
ライラも輪に入る形で話をする。"SDQ"をどうにかしたい一心だったけど、それはラスボスちゃんに任せることにして。無くなった世界から、その危険因子の排除。
「危険かどうかの判断はともかくとして、人類の歴史を勝手に消そうとするのはあるまじき行為。許せないって、気持ちは出てくる。夜弧の未来が変わっているっていうだけでも、ヤバイわけだしね」
やばい奴が、やばい性格をしている。
武力のなんだかんだよりも、それを扱う奴が問題。むしろ、そっちこそ。人という枠組みでは"強さ"よりも恐ろしく問われるところだろう。
「妥当なところ。あたしが、桂に代わって倒すのには十分過ぎる目的」
ライラの目的。その根源に桂を挙げた。
「倒した後はまた考えましょ。これって、桂みたいでしょ?」
「……まぁ、そうだね」
「ふん」
クォルヴァも三矢も、ライラの宣誓には嬉しくもあり。それを後押しはできないところである。
「ライラって、後先考えるの苦手?」
「そーいう意味じゃないの。あーだこーだ、考えられる相手じゃないから。こっちはあんまり思いやってあげないだけ。ちゃーんと、終わったら考えるわ。春藍と基本は同じ。でも、あんたみたいに悩まないでやるだけよ」




