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RELIS  作者: 孤独
役割編
566/634

暇人

忙しいものである。

積んで、積まれて、山のように。空まで突き破るほどに



「暇じゃーないんだがな、俺」


人がやれることはそこら中に転がっていて、逆に何もなく、拾わずに突っ立っているだけの奴を人というか。常にそーしろってわけでもないが、常に立っているのはどうかと思う。


頼み込まれたというより、相談という類いか。また、自分自身にもそれの答えを出さなければいけない義務があるか。

生き残る確率などまったく持ち合わせていない三矢と、



「三矢さん、結構な時間。暇だったでしょ?」

「お前も幽閉されてて暇だったろ?」

「一緒にしないでください。あれは罰であり、責任のとり方って奴です。三矢さんの場合は違うんじゃなくて?」

「社会が変わると大変だな~。罰も法も、俺の時と違ってよ(俺は俺で肉体が変わってるが)」



クォルヴァの2人。


社会の歯車を回す要の両名が、同時にこの場にいることは珍しい事ではないが。


「クォルヴァさん、三矢さん。お忙しい中、すみません。僕がいなかったんで、その……」

「三矢さんが意図的に席を外したのも悪いんです。ええ、ねぇ?"本音"、そうでしょ?」

「おいおい。俺だって、忙しいんだ」

「それは言い訳って、社会で教わりませんでしたか?」

「嫌な奴だ」



そこに春藍もいることが、これまた珍しい事である。

とはいえ、ライラもいる。黙っているが、春藍や三矢達と距離をおいて、輪の外側にいる立ち位置にいる。

彼女のところか、違うな。


「アレクさんに言われて、」


春藍は初手でお使い感覚を示すも、


「言うな言うな。お前がサイボーグだろうが、俺の"本音"が真実を見抜く。人間である証拠で、俺を騙せない証拠だ」


三矢の能力によって、あっさりと嘘は一掃。しかし、それは春藍なりの三矢の計り。

アレクがそこまでに興味も、思考を回すわけがない。

それも人らしい一面である。春藍もそう。


「ははは、そうですか。じゃあ、僕からです。お2人の本音をちゃんと聞きたくて」

「俺の本音が分かるかな?俺自身含めて」

「三矢さん。おふざけなしで」


ライラとは視点が違う。

救うとか、救われないとか。そーじゃないとこ。

このシナリオがどう足掻いても、終わりや詰みの状況での、生存。


「管理社会と、人社会。色々とあったものがもうすぐ、全て壊れてしまいますが」



本来の、ファンタジー物語であるならば。

魔王が行なう世界の滅亡を阻止するため。勇者なり、なんかが戦いに行って倒すという、オーソドックスな形式である。むしろ、それこそ。善と悪がハッキリしていて、お互いの主張を言い合える。

理想的なものである。


しかし、そーいった。味方や敵。善と悪。正義と悪。

それらが絡まない。人がいないという中の、物語。


「無くなった先にある、時代に。僕達が行って、何をすれば良いのでしょうか?時代の支配者を倒す意義は理解できるのですが」


倒すというのは、理解できる。

納得も行く事である。

でも、春藍はそれから先を尋ねている。これって意外と重要だ。勇者や魔王の決着など、住民大多数に影響あって、長期的にも多くいる人々にとっても。特に変わりないこと。

継続的な平和にはどーやるか。



「僕達が築けることはあります?また、そこに僕達のような社会があった時、壊すという行為。僕はできる自信がないです。たぶん、ライラもそうじゃない?」


"時代の支配者"の異常な厄介さ。

存在しているけれど、生きておらず。生きていれば、皆が存在していない。

それは"強さ"という規格にあらず、"攻略不能OR元からない"に近い規格。ラスボスとしては、パイスー、ポセイドン。そして、これからの藺兆紗とも違っており、まったく違うタイプのラスボスである。

あいつというキャラで考えて、的確な例えとして。ギャルゲーのメインヒロインの一人に入っており、好感度パラメータもあっても、フラグがあっても、エロCG画面に辿り着いたとしても、ハッピーエンドも、ビターエンドも、バットエンドにすら辿り着けない。

完全攻略にならない。そう判定されない。



「なんていうか、こーいう気持ちはね。僕がライラに初めて会った気持ちと似ていて、ドキドキするんだよね」

「その言い方、止めて」


ようやく、喋ったことがそれになるとは思わなかった。ライラは、春藍を通して。その先をクォルヴァ達から引き継ぎたかった。

絶対の悪というものがなく、時代の中にいる者だ。



「どーなんです?三矢さん」

「なんで俺に訊く?お前、俺が言ってから考える口だな?」

「どーでしょうか?そーいう本音が聞こえます?」



三矢は髪を弄りながら、春藍に視線を合わせず。


「あー、……場合によっては"時代の支配者"と戦わねぇか、いいんじゃねぇの?」

「……管理人と、過去の散った人達。そして、僕達の気持ちを。僕は踏み躙ってもいいんですか?」


世界が助かるなら、モチベーションに違いがあるだろう。なにせ、滅んだ後の話だ。

並の実力者ならそこで詰みで、お手上げ。

でも、その類いじゃない。残る奴等もそうだ。


三矢は、春藍と視線を合わせた。手悪戯も止めた。

おそらく答えは決まったんだろうか?


「今はそれでいいぜ」




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