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RELIS  作者: 孤独
役割編
563/634

選定

時間は選んだ。というより、そこしかなかった。

次に場所。どこが良いかな。

誰も居ないというのなら、危険なところではあったけれど、命が危ない。


「どこか謡歌と、2人きりになれるところが、いいなぁ」



ぎこちない声で謡歌に場所を誘う水羽。


「んー。どこにしよう」

「私の部屋にする?」

「えっ?」


その言葉に、妙な感情で、赤らめて訊いてしまう水羽であった。謡歌は逆に友達のような形での声かけ。


「大事な話でしょ。悩み?」


人であるから水羽の気持ちがすぐに表情で分かった。

手をとって、連れて行く謡歌の手は、水羽の単純な力と違ってとっても強くて、温かいものであった。話をしたかったがそんなシチュにあてふての水羽。



「い、いいの?でも、一つの部屋に何人かと住んでる形じゃなかったっけ?(水羽は朱里咲と同室であった)」

「お兄ちゃんと同室だけど、お兄ちゃんはアレクさんと研究室にいることが一日中多くて、……慣れているけれどね。でも、水羽ちゃんの警護はどうしよっか?」

「んんー、……真面目じゃないけど、謡歌の部屋でいつでも動ければ良いかな?監視の監視があるわけじゃないし。一日くらい大丈夫だよ」

「ははは、そーいう時に何かあったりね」



もう色々起きてるんだけど……。


という確かな表情と、感情が入り混じっている水羽であった。それに気にしているのが、謡歌と……




「だろうとは思ってた。好きに話しあってやれよ」



ロイと


「優しいですね、ロイ様」


アルルエラのお2人。

今日の当番じゃないアルルエラが、水羽には内緒でロイとご一緒である。

了承したのもロイのことを思ってのこと。


「あの時から気にかけてらしてたんですね」

「水羽ちゃんにとっては、故郷を離れ、師を失い、今度はここでできた友達を失う事を宣告されてんだ。いくら俺並に強かろうと、心の面に不安があるもんだ」


普通、俺とアルルエラの2人が水羽ちゃんを監視してたら気付くもんだがな。


「精神的な不安は"超人"の強さに影響する。俺が口説いても、それは拭えねぇな」

「謡歌ちゃんならきっとできると。でも、謡歌ちゃんが可哀想です」

「どーだが?謡歌ちゃんも水羽がいてくれて良かったんじゃねぇの。兄があれだしな。希望といえば、希望で。自分のことを話す相手には不足だろう」



"SDQ"に包まれ始めていく状況。

助かる道といえば、アレクと春藍が改造中のタイムマシンのみ。人数は限りがあり、誰もが助かりたい状況だ。人が集って回す社会があって、災害はとってもゆっくりで確実に生命体の活動を殺しに行く。そこでまた小さく争うか。

短い生命活動を笑い、受け入れて、共に生きるか。

ヒュール達やクォルヴァが、社会の秩序を支えているため、この状況がとても平和的なのが、人と管理人の奇跡だった。



「百合展開来るか?」

「覗きはダメですよ。ロイ様。自分で水を差しちゃカッコつきません」




◇       ◇



彼氏の家にでも来たかのような。らしくもなく、正座している。

2人きりという状況は久しくて、それがもう少ないどころか、これ一回きりだろうが。

うずうずというか、そわそわというか。謡歌に見せるのは、そんな自分で良いんだろうか。



「あのっね」


声がちょっと裏返っていて


「焦らなくていいよ。私はここにいるよ」


謡歌が落ち着いて、水羽と向かい合って、女座り。飲み物のご提供、テーブルの上。


「姿勢、崩していいよ」

「うん」


言われて姿勢を楽にして、謡歌に向けていた視線を外して、自分の緊張した姿を見て、頭を抑えてしまう。

自分と違っていて落ち着いていて、しっかりしていて、絶対に頭良いって分かるぐらいの知能だ。


「取り乱してごめん」


だからって分かる。謡歌がただ普通に、飲み物を飲んでいるとこも。とっても綺麗で目に残るくらい、羨んでいた。

単純に


「あ、私からでも良い?」

「え?」

「その、水羽ちゃんが、落ち着いてる内というか」


どこらへんに落ち着きがあるんですかね?この子?

とはいえ、謡歌にも水羽がいる内に言いたい事もあって、こーいう形で先制をとるとは本人自身驚きだった。

何を言おうか。そんな迷い。水羽のように言いたい、いくつかではなく、


「私達。詳しく分からないけれど、」



謡歌は一つだけ水羽に確認という、お願いがあった。



「どれだけこの世界が持ちこたえられるかな」

「!……」

「水羽ちゃんから来てくれたから、詳しく聞きたいの。ロイさんは教えてくれなくて、でも。水羽ちゃんは知ってるみたいで」


ロイが教えてくれないのは事実であったが、水羽が知っているなんて事は嘘である。

その嘘が水羽のことを少しでも楽にさせたのは事実。

水羽だって、心配していることはすぐに分かった。


「きっと私は生き残れないって分かっていて、……だけど。もし、水羽ちゃんが生き残れるんだったら、お兄ちゃんに協力して欲しいの。ずっと、最後まで。私の代わりに」


水羽の言いたい事と謡歌の言った事はほぼ似通っていた。

誰だってこの状況。同じ悩みか、同じ不安かって……、そー思えたところ。


水羽は悔しく思えて、謡歌の両肩を握った。



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