管理人ナンバー009以上の者達の役目
「"遺産もない図書館"」
例外もいたりはするが、
管理人ナンバー009以上の者達はその世界が重要な役割を持っている事や、危険な世界である事が多く。桂とポセイドンを除いた者達は失ってはいけないという役割もある。桂とポセイドンの2人は失なわず、さらには管理人全体を指揮や監視を行ない、重要な世界も一つ管理しなければならないという中々にハードな"管理人"であった。
この穏やかと言える"和の国"吉原にも、人間がまだ知ってはいけない情報が詰まっていたのだ。
山の奥にある誰も訪れないような古びた屋敷の中にそれがあった。
"遺産もない図書館"、そー呼ばれている場所。
「そこであたしが見た、まだ一部分の歴史は衝撃的なものだったわ」
「…………そう思わない人間はいないだろう」
飲み会の後。桂とライラはこっそりと話し合っていた。春藍のことでしっかりと桂と話す事ができなかったが、彼の元気にライラも強く桂には言えた。
「"無限牢"は"かつての人類"が作り出し、あなた達"管理人"も"かつての人類"が作り上げた物。人類は個性を生存させるために管理される事を望んだ」
そんな事実、(らしい)を春藍達には言えなかった。
「ああ」
「かつての人類が何をしたのか、どうしていたのか。またそこを調べれば分かるのでしょ?」
「そうだな。だが、ライラにも人類にも知る必要はない。忘れろと言ったはずだ」
桂は"遺産もない図書館"を守るためにいる。
貴重な歴史であり、情報であるのだ。自分達が生まれてから何百億年以上経過し、その間よりもその前の土台の方が実は重要であると知っていた。
「何が起きたの?」
「分からない。拙者もあそこの文献に触れたのは……いつだ?覚えていない。"管理人"が覚えるべき事ではないからだ」
はぐらしているわけでもない。
「大切なのは今じゃないか?」
「過去を見ない奴が今を歩けると思えるの?」
「…………」
桂は夜空を見上げて、ライラも一緒に夜空を見た。とても綺麗な夜だ。ほとんどの異世界は人間が過ごしやすいように、天気は大荒れしないようにできている。
色んな夜を見て来たライラだが、ここの満月が一番良い。桂も満月を見ながらライラには目を向けずに助言をした。
「現在の"アーライア"は"無限牢"の寿命の縮図になっている。そこは危険な世界だ。ライラや春藍くん達を行かせたくはない」
「!」
「拙者がそう決めているだけだ。別に"アーライア"に行きたいなら、行かせてやれる管理人に頼めば行っても良いんだ」
なんて屁理屈を言うんだこいつはっと思うライラ。けれど、それは桂がライラに与える試練や資格と呼べる行ないかもしれない。桂はさらに良いヒントを出した。
「"遊園海底"マリンブルーと言われる異世界がある、拙者はそこにお前達を連れて行っても良い。そして、そこの管理人ならライラの希望通り、"アーライア"に行かせてもらえるはずだ」
「!!マリンブルー…………そこはどんな世界よ。少し、桂から聞いた事があるけれど」
「行けば分かる。ただ、そこの管理人に認められる事だな。みんなで行くんだぞ、春藍くんにアレク殿、ネセリアの3人と一緒に。"決して離れる事がないようにな"」
桂はそういって、ライラから離れていった。
「拙者はお前達がマリンブルーにちゃんと行けるように、手続きを早朝に済ませる。昼前には四人共、出発できる準備をするんだな」
「分かっているわよ。ありがとう、桂」
◇ ◇
そして、夜は更けていく。
様々な思惑がある。
ゆっくりとまた動き出す。ライラの、春藍達の旅はまた再び始まった。
ライラは3人が寝る前に別の異世界に行く事を伝え、朝に出発の準備を整える事を決めた。
春藍とアレクは義足の改造や、量産を行ったり、ネセリアは"掃除媒体"に長く滞在した"和の国"吉原のお土産を詰め込んで、ライラに買ってもらった着物や簪は大切に保管していた。ライラは街の人達にまた旅立つ事を告げに周っていった。最初に飛び出したとき、本当にみんなが心配をしていた。衝動的な事をしてしまったと深く反省した。
桂はマリンブルーに行かせる手続きを行ないつつ、もう一つ別の情報を色んな管理人に流していた。大宇治を失った事で連絡網が、若干面倒になっていたがなんとかできた。
「"黒リリスの一団"の新たなデータだ」
春藍が眠っている間に済ませてしまった事だ。ライラは異世界を回った間に接触した"黒リリスの一団"と呼ばれる連中の情報を桂に流していた。
ライラは危険な存在だったと思って桂に相談し、管理人にとっては敵と認識していた事をライラは知った。特にイビリィアで出会ったパイスー、ゴールゥンで共闘したリアの2人の情報を送った。それと引き換えにライラは旅を続けたいと桂に意見した。
返答を考えている間にパイスーがルービックニュートンに出現したため出向いて、対峙。取り逃がすという失態をしてしまったが、パイスーがどれだけ強くなってしまったかは分かった。
次。例えパイスーが絶好調だとしても、自分なら討てると自信があった。
キーとなるものがある。
管理人と"黒リリスの一団"は敵対しているが、ライラ達はもうどちらとも敵対してはいない。
そして、ライラは"黒リリスの一団"という組織をまだよく理解していない。この出来事を知っているのはライラだけだということ。
パイスーが桂と戦った事も、多くの、そして優秀な"管理人"達がパイスー達に討たれてる事も、"RELIS"という存在も、周りすらも知らない。
まだ真っ直ぐ見ているせいで大規模と化している問題にも気付けていない。それがある意味、真実を通すかもしれない。
拙者はライラに無茶を押し付けているな。生きて、またここに帰って来い。ライラ。必ず、春藍くん達がライラの力になるはずだ。