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RELIS  作者: 孤独
役割編
559/634

監視



不眠不休の活動ではなく、交代制の見回りであった。

どんな労働もただまっ昼間ぴるまから、月が昇る程度の時までの時間で終わるものではない。とはいえ、活動時間と労働力は乏しく、人数が削られているのは事実。



昼間はライラ、夜弧、水羽、三矢、クォルヴァの5名が中心となって、世界の管理と警護に当たっているが、

夜は



「まったく、俺達だけか」



ロイと、


「良いではないですか。私はこのようにロイ様とお過ごすのも、もう貴重なのだと感じ、嬉しく思っております。パンを作りました」



アルルエラの2人である。

なにかと割を食いやすい2人である。


いつ、どこで、災害がやってくるか。厳戒態勢で張り詰めたままでは、長期戦どころではない災害の前ではすぐに終わってしまう。休ませながらの対応を早くからとる。分かっていることがまだ幸いなのだ。

普通ならば分からないまま、集団や群れは混乱していく。



「静かな夜だ。ギンギンに目も、こっちも、タッてやがる」

「ふふふ、相変わらずでございますね。ロイ様」



ロイの1人の妻でもあるが、母親のような見方だってとれる。管理人、インビジブルのメイドでもあり、妻も務め。ロイの小さき頃から見守っている。

不安がないというより、その成長を傍で見られて



「私は、ロイ様のお傍が落ち着きます」

「改めてなんだ?」

「頼りになると改めて、お伝えします。インビジブル師範も、今のあなたの成長を喜んでおられるでしょう」


人類の希望。

その1人が弟子であり、我が子同然のような、近しき子であった。


「止めろ。アルルエラ、さん」


子供の時にした呼び方。ちょっと、声が詰まっていて、素直に言えていない。

ホントならあの決め事を伝えておくべきなんだろう。でも、どうだ?アルルエラの顔は、自分を期待してくれている目。俺は……


「やれるか?」

「やれます。あなたなら、私達の、その分までも……」


気付いているのか?


「すでにあなたはそれだけの御仁。これ以上積み重ねたら、私はあなたを見上げて、首を痛めるかもしれませんね」


こーいう状態で死なせちゃいけない人間がいる。

それを分かった上でクォルヴァと三矢は、初めから決めたんだ。

ヒュールはそれを隠し通し、最後の最後まで、死なせちゃならない人間達を、死なせるんだろう。

難しいところだ。戦闘なんかシンプルだと、簡単な頭脳ゲームばかりしていたと、ロイは気付いた。



バリッ


「パンが旨い」

「誤魔化しが下手ですね」

「こいつは事実だ……」


分かってるよ。俺は、十分に分かっているよ。



俺の拳が使えるところは、そっち側。戦う拳だ。このパンを握っている事じゃねぇんだよ。

ただ……



ムニュッ


「おや?」

「しばらく、やってねぇな。アルルエラさんとは……。俺の両手は女の胸と尻、太もも、顔。それらを撫でてやるためにもあるもんだ。忘れないでくれ」


バチンッ


「忘れませんけれど、私は若くありませんよ。若い果実を選びなさい」

「にしちゃあ、あっさり揉ませてくれたな……。ビンタも優しい」




◇       ◇



ゴゴゴゴゴゴゴ


揺れの有り無し。それは観測者がいて分かる事。生物の心臓のように、世界もまた生きているんだろう。

その中、その上に立つ。数多くの生物達が気付き、気付かないを同時に思っている中。

異変は起こっていた。それでも気付かなかった事。



「んー?」



気のせい。そんな感情が、少しだけ異常を和らげる。生物のリミッター。


「どーした?」

「いや、なんでもない」


夜空の星が遠くに見える。そんなこと当たり前じゃないかと、周りは思うだろう。

日中、地に差す光は距離感をなくすように、空は平等と映すのであったが、夜は違っていた。

あんなに遠かったかと?疑った。

疑いが事実であるから、すぐに災害に見舞われるわけではない。いや、もうすでにやられているわけか。


人々が気付き始める事に時間は、そう掛からなかっただろうが……



「んー?」

「どーなさいました?」


放送局の建物内で、ロイは監視という役割で外を眺めていた。

あまりにかすかであり、自分の目が狂ったかと抱いた。

些細なことを言って、周りの意見を求める。


「沈んでいってねぇか?」

「はい?」


なんのことだと、アルルエラが思うのも当然。周囲は地震によって、地形が変わったというのは分かる。しかし、ロイの言い方は


「進行形ですか?」

「いきなり沈めばもっと前から誰でも気付くもんだ……」


世界全体がわずかとはいえ、常に一定の速度で落下していく。自分達が乗っている大地が落ちていくという、とんでもない規模にして、見えず、聴こえずの事態。

大地の崩壊まで予測は立つが、その過程が見えて来ない。地盤沈下で済むものか?人への影響は?

ロイの判断と行動は、解決に導くためのもの。



「この目で確かめてくる」

「!ロイ様。一体。どのように」

「しらみつぶしに走って様子を見てくる。同じところ監視しているのも、飽きたからな」



ただの沈下ではない。災害と銘打たれた事だ。

世界を監視する目、情報を仕入れる手段もまだまだ足りていない。人は知らない事が多い。

真夜中の世界でロイは走っていた。

自分が感じた違和感。沈んでいるという問いに、解を求めるならば"その差"を出すこと。箇所によって、わずかであるが沈んでいる差がある。



タァンッ


「!」


飛び出して、87分ほど。坂のようになった地帯で、これまでになかった物をロイは見つけた。



シューーー



その勢いは間欠泉かんけつせんにしてはあまりにも微量で、空気に交わると消えるほど。地面の下から立ち上る白い煙を発見した。



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