表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
RELIS  作者: 孤独
役割編
557/634

説明



人はそう広がらない。だが、群れるものである。フォーワールドという世界が保有する面積の1/4に、人類はいた。


「どうなっているんだ!」

「説明は!?」

「仕事は!?金は!?」


食べる、寝る。

それだけの人間の行動は許されるだけでなく、食料も寝床もあまるほどある。しかしながら、人間の消失という大問題は心の傷を生み出し、人間の行動を狂わせていた。

動揺は止まらず、長い瞬間を感じていた。



ラフツーを始めとした説明、誘導を担う者達も人々の混乱を聞くので手が一杯だった。彼等の人数も、藺兆紗によって奪われている。状況でロクに説明されていない。


「ヒュールさんのご意見は?」

「まだ、なんとも……」


この世界で地位を持つ、広東も、山佐も。分からぬことだった。

同情。しかし、不安。

そうなってはならんと、歯を食いしばって今を堪える。


「社会がこうも容易く壊れること。分からなかったです。管理されている社会もまた、素晴らしい事だったんですね」


少し振り返って、良かった部分だけを語る広東に対し、


「しかし、管理社会にも言える事がある。圧倒的な人員というのがあって、成せたわけだ。その数が増える分だけ、我々は進まなければいけなかった」

「山佐さん」

「私達は忘れていた事が多かったようだ。こーいうことは歴史上にもあったはずだ」


山佐は反省の色が強い。

おそらくであるが、ヒュールに全てを託していると直感した。



ゴゴゴゴゴゴゴゴ



「また地震……」

「最近多いよな……」

「ホントにどうなるんだよ。この世界。俺達……」



これだ。

きっと、アレク達が全力で向かい合っているのはこの地震の原因。まだ緩いと判断してはいるんだろう。

そして、ヒュールが生き残っている人類達を導くこと。動揺しないこと。不安にならないこと。考えること。戦っていることは知っている。


「ホントに多いわね」

「なんとかしてくれるさ。アレクさん達ならなんとかする。そして、俺達はその時まで頑張って、落ち着いていることさ」



人の命を預かることがこれだけ重くなること。部下の心配と安全だけでもホントに、気がそぎ落とされるほどだというのに。ヒュールは全部を抱えなければいけない。少しでも力になれる事は自分達だけでも、冷静で耳を傾けること。

まだ意見が決まらない、その声も受け止めること。



ピーーーーーーッ



「!!」


放送局から特別なサイレン。広東と山佐、ラフツー。その他、人々を束ねる者達が振り向き、待っていたと表情を出した。



『これよりヒュールさんからの報告事項がございます。お手数ですが、これからお呼び出しする方々は至急、放送局に向かってください。広東様、山佐様、ラフツー様、アルルエラ様、春藍謡歌様…………』


などなど……。

合計、143名。そこにいなくなっている人もいるが、人々の命を預かった人の招集命令が下された。

残る人々の生活、社会。それらを決めるものであると、彼等は確信していた。


が、……



◇        ◇




「集まったであるな」


放送局の会議室に詰め込まれる人達。計、118名。椅子もなく、隣の部屋まで使っても、キツキツだ。

マイクを握るのは当然、ヒュール・バルト。その隣に三矢と、用心棒としているのであろう。ロイの姿があった。最後の管理人、クォルヴァがいない事を見れたのは50名ほどか。

何かがおかしいと思ったのは、山佐とラフツーぐらいだろうか。


ヒュールはまず言った。


「これより我々は最後の抵抗を始めるのである」



????



絶望を知るのと、知らんのとで差がある。


「ある一部を除き、全力で人類を護る戦いに入るのである。広がってしまった居住区は縮小し、農園、養殖、狩猟は移設の準備を始めるのである。教育に携わるものは速やかに、災害マニュアルを作り、住民全員に配布を!」

「ちょっと待て!」


不安があり、その声を一番聞いていたラフツーが、ヒュールに確認する。


「世界で何が起こっている!?私達だけにでも、説明できないのか!?」


急過ぎる。その通りであり、こちらの意見を封殺するかのような指示がくるとは思わなかった。

そして、聞く耳に対して、返す声。それはヒュールからではなかった。


「ラフツーは合格」


聞きたくない耳もある。

この中に恐怖を抱いている者もいる。


「広東も、山佐も、謡歌ちゃんも、アルルエラさんも」

「な、な、何をしているんだ!?隣の人は!」


ざわつく室内で合格と不合格を判断しているのは、三矢。


「……次に名前を呼び上げる者達は残り、それ以外は済まないが、帰って欲しいのである。ここから先は住民に報せないでくれ。君達に伝えられる事は、不安を煽ってしまうだけであるのだ」



三矢正明

スタイル:魔術

スタイル名:本音

スタイル詳細:

対象者の心の中にある"本音"を聞き取ることができる能力。


ヒュールの問いかけに、周りの心の揺らぎを聞き取り、合否を決めていた。一斉かつ同時に聴き取れ判断する技をこの目で見て、三矢がタダ者ではないし、この時のために残っていたカードであるとヒュールも実感した。これから先のことを話し、心が落ちないことを危険視している。人間の差を理解し、残念ではあるけれど。住民に落ちてくれと願った。

三矢の力に疑問を抱き、分けもわからず追い出される人達。しかし、それがヒュールの言葉でもあって、暴動という事にはならなかった。ヒュールを選んでホントに正解だった。

彼には信頼がある。



人数は、53名になった。



「静粛に、頼むのである」


人を選別するという行為。ちょっとばかり傷付くこともあるだろう。

残った、人々を扱う人間へ、



「私達は長くないのである」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ