順番
シンシン…………
白い雪が降る。
ドゴオオォォッ
積み重なっては大地を抉り、空気を食み、生物の生存を否定する残酷な雪。
"SDQ"
管理体制を失い、これまで抑え付けていたものがなくなった。
多くの異世界を飲み込み、膨れ上がっていく。最初から誰にも止められない物ではあったが、本当にその時が来たときに人は何を思うだろうか?
世界の終わりが来た瞬間で
ジジジィィィッ
人々はそれでもわずかな可能性を信じて、抗うのであろう。
その彼等はフォーワールドの中枢に集まり、別れつつも、最終段階の調整を行なっていた。
アレクと春藍を中心とした研究者達が、人類の希望であるタイムマシンの改良に務める。それが人類の役目であり、もう1人となった管理人の役目。
ポセイドンが反乱を起こし、造り上げた結晶。桂がそれを人類に託すため、戦った物。
クォルヴァの手にそれがあった。
ライラも、夜弧も、ロイも、三矢もその物を見ていた。
「クォルヴァには感慨深いか?」
「多少ですね」
「それは数多くいた管理人達の結晶でしょ?」
この中に詰められた管理人達。
「"時代の支配者"を討つ為には、時に影響を受けない存在が必要だ。人類の管理は表向きの計画であり、真の計画はこちらの人類の戦力が、整うための管理だ」
「全ての管理人の役目はその身を持ってして、私達を"時代の支配者"のいる未来に飛ばす事」
科学、"RELOAD"。タイムマシンの科学を動作させるための、最重要となる燃料は管理人達の結晶であった。
彼等が不老であるがため、長い時の中で人類を管理する事ができていたのだった。
「桂とポセイドン。それにあんたもいないけど、大丈夫なの?」
「インビジブル師範達もいないぞ」
「問題はねぇ。朴、龍、蒲生などの実力者達はしっかりと結晶にしているし、なにより管理人の数は人類の数だけ想定されている。十分な量があるから飛んでいける」
「…………計画がこの段階まで進んでいれば、必ず予定通りです。私共がこうして集まっていることも、奴の計画通りでしょう」
燃料及び、設備、対策。
それらは9割以上は準備ができたと言えるだろう。
その計画は、"時代の支配者"も含む。
残りの難題に取り掛かること。すぐに起きる問題と言えば、
「時間稼ぎと説得、人選ですかね」
クォルヴァは手に持っていた大切な結晶をライラに託した。
「タイムマシンは完成しても、飛べる人数には限りがある。また、世界の異常と人間達の神隠しによって、人々の不安は高まっている。我々の活動が内密でなければ、このことに至りませんが、もう遠くは無いでしょう」
「それと未曾有な災害もな」
「難しい話ですぞ」
管理社会よりも前から続く敵。その遥か後方に潜んでいた敵がようやっと出てきた時、人類の多くは死滅してしまう未来を知った事実。ヒュールは自分の立ち位置から見て、みんなに尋ねた。
「我々は"時代の支配者"を誕生させなければ、絶滅に至るのですぞ。しかし、"時代の支配者"が造る世界を拒むのは難しいのではないであるか?」
ややこしい事で、その悪が確かにそうなのか断言し辛いもの。
世界や社会、会社の掟の正しさを疑うようなことだろう。どっちにしろ、個人的な意味ではどーでも良いことかもしれん。
「勇者物語であるか。あるいは魔王物語であるか?」
現在に生きる者からの疑問。
平面から見れば、とても正しく、輝くものであるが。
関わりを持つ者。管理人としている者。潰えた未来から来た者。そして、ここに至るまで散っていった命ある者。
多方面の視点を察すれば、ヒュールだって分かっている事。
「全ては"時代の支配者"によって、造られた魂と人生。その決別ですぞ」
関わりがあると、確かに説明できるものではないが。
自らの生まれをコントロールし、かつての全人類達を存在する事無く、絶滅にまで追い込み。管理社会の目から逃げ延び。管理社会が終わったとなれば、すぐに生まれて来ては自らを造り上げるため、多くの人類と世界に影響を与える。
不完全にしてそれほどの時代と人類を影響を与えたとなれば、
「完全となれば、我々はどこに行くのであるのか?」
不安と恐怖。
新しきモノが見つかることもあるが、
「良くはねぇな。それは事実だ」
三矢は、否定する。
「これまで多くの事実に、間接的に影響を与えていた"時代の支配者"が。ありとあらゆる事を、自由自在の影響と変える力を持ってしまえば。もうそこには何もねぇと同じ。俺達がいても、なにもできてねぇこと」
「神様という信仰が現実となるわけですか」
「そうだな。"時代の支配者"は、神様になるわけか。超えているかもしれねぇよ」
あんなもんが神様になったら、全てがホントに終わってしまうわ!
大まかに知っているだけにだ。
「多くの人には興味のねぇ世界かもしれないな。人類の大半は、自分以外に興味はねぇもんだ。むしろ、本人もそーなるのが願いかな?」
「どーいうことよ?」
「俺は本人じゃねぇから詳しくは言えないよ。この中じゃ、俺は新参者だ。あんまり信用されても困るわ」
「いや、あなた。この計画に関わる重要人物ですよね?あなたが何代目かは知りませんけど、その苦労を無駄にする言葉をよく言えるもんですね」
分かる事として、"時代の支配者"は完全なる力を手に入れようとする。
そして、その後のことである。そこからが私達との戦いとなるだろう。
クォルヴァが少しだけ熱の入った言葉を吐いた。
「人社会でもなく、管理社会でもないもの。そこに人類の幸せがあったとしよう。でも、私はそれを否定する」
ケータイの新機種に移行する戸惑い。ちょっとある、愛着。それとは絶対に違う。
時代の流れに逆らうという愚かさではなく。その時代を否定するもの。
「決まるべきことと決まっていない事。生きる事が造られるものだなんて、1人としても、大多数としても拒否するものさ」
"時代の支配者"は、全ての自由を掴み取ってしまう者。
管理人としてはそのような解釈として、憎むべき敵。