表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
RELIS  作者: 孤独
”和の国”吉原編
55/634

お酒ありで


そーかい、そーかい。ゼオンハートっちは死んじまったんだ……。



「バッカじゃん?今日はその祝福のためのお酒かよ?」

「口を慎め、ゲス。貴様を呼んだのは単なる口約束に過ぎん。桂の方もインビジブルかガイゲルガー・フェルと会っているだろ。(まぁ、インビジブルだろうが)」



010~020の管理人ナンバーの持ち主の中で、011と015、016の存在は極めて異例中の異例。ポセイドンと桂が仲が悪いように、この3人は非常に協調性が欠けていた。"管理人"としての器量はほぼ欠けており、ウェックルスのように人間を管理するというよりかは、支配しているに等しいやり方であった。

そのようなやり方をしていても、高レベルの存在と認められているのは、相応しいだけの戦闘力や力量があっての事だ。




ガイゲルガー・フェル

管理人ナンバー:011

スタイル:科学

スタイル名:THE(勇気ある)・BRAVEⅡ(死んだ生)・DLD(き方)



インビジブル

管理人ナンバー:015

スタイル:超人

スタイル名:無敵艦隊




粕珠かすたま

管理人ナンバー:016

スタイル:科学

スタイル名:狂奏類語辞典グローミ・シソーラス



「口約束~~~?ポセっちよぉー。そんなだっせーーーの、俺っちは守る気はねぇーべよ」

「そんな事くらい分かっている。ただ、我とそこのゲスにはある程度の繋がりがある」

「ああぁ。この便利辞典を作ってくれたのは嬉しいべぇーなぁ。今は参考にしただけだべが」



粕珠はポセイドンから渡された高級赤ワインをラッパ飲みする。



「下品な飲み方をするな、ゲス」

「んあぁー……。あー、ポセっち。悪い!んじゃあーよ、口約束を教えてくれよ。止めて帰るわ」



言った後で再び粕珠は、ポセイドンの前でラッパ飲みをする。"管理人"全てを纏めているポセイドンを目の前にし、なおかつ呼び出しをされてもなお、この不謹慎すぎる態度をするのは奴の個性だ。

ポセイドンは下品な行ないに目を瞑りながらも、口約束を教えた。


「次に"黒リリスの一団"が狙うだろう"管理人"に心当たりがある。今回、パイスーが単独で我の実験室に入ったのはゼオンハート達を仕留めるための事だろう」

「んぁんぁ」

「次に狙われるのは、今回討伐に指名した5名。我、桂、ガイゲルガー・フェル、インビジブル、粕珠の五名だろう。特に貴様等3人は悪名高い管理人だ。特にそこのゲスだ」

「名を売ってるわけじゃねぇーべ。胸の奥にドォキンドォキンと来ることをするだけだべー」



本来ならばポセイドンや桂が手を討つべき相手だ。だが、それができないのは粕珠が戦力として十分な力がある事と、そーせざるおえないという世界が存在するからだ。

ポセイドンにとってはこいつと手を組むのは嫌いだ。桂の方がより嫌いだが、粕珠の場合は悪寒がして拒否するという意味か。



「約束というのは貴様の世界に、"黒リリスの一団"が現れた時に真っ先に我を呼べということだ。我が手を貸してやろう」

「!!??」


そのあまりにも予想外過ぎる"口約束"に粕珠は、ラッパ飲みしていたワインを噴いて零すほどの衝撃だった。今もだが、ポセイドンは粕珠に姿を隠した状態で話している。戦闘や会議ですらも早々姿を現さないこの男が


「ごほぉ、げほぉ。ポセっち!戦う気かぁ!?おおぉっ、そいつは見たいべ!!あのクソ真面目桂っちと互角にやれる管理人は、もうポセっちしかいねぇと言われてるべが、俺っちは真相を聞いた事がねぇ!!」

「我と桂が取り逃がす相手だ。仲間も何十人か確認されている。粕珠の実力は知っているが、数の上では不利。桂も貴様を助けようとは思わんだろ?」



ゼオンハートとその他をぶっ殺した連中を、ぶちのめすのも悪くねぇーべが。

ポセっちの実力っつーのも気になるところだべ。もし、俺っちがぶっ殺せるようなら。代わりに俺っちが管理人をも纏めてやるべかな。


不吉という娯楽の顔を出す粕珠。ポセイドンの"口約束"を飲んだ。その"口約束"とは別にポセイドンはまた彼に用事があった。


「それと粕珠。早急な話ではないのだが」

「なんだべ?」

「1人の罪人をそちらに送り込む事になっている。いつもの通りにやってくれていいが、死体だけは我が引き受ける」

「なんだそんな事だべか。あとで名前と顔をよこせばそうするべ」



ポセイドンは粕珠に一枚の青年の写真を送った。下には名前が書かれており、"春藍慶介"と書かれていた。



◇      ◇



吉原ではポセイドンの読み通り、桂はある管理人達をここに招き入れていた。春藍達にはとても嫌な顔をされるも、桂と彼等はとても仲が良かった。

ライラ帰還などの歓迎会に呼んでおり、今。春藍やアレクだけではなく、この街に住んでいる人達が大勢呼ばれた。ライラという存在は"管理人"桂の養子というだけに知らない人はいないし、数奇人として有名だし、"和の国"吉原一の魔術使いなのだ。沢山の人が集まってもおかしくはない。そんな人並みを嫌そうに見ているラッシ。



「なんで俺がこの席に座らなきゃいけねぇーんだよ…………」

「桂さんの頼みなら参加しましょう。お酒は結構好きでしょう?ラッシ」

「クロネアは日本酒目当てで来てるだろ。好きだよな」


フォーワールドのラッシとクロネアであった。

まだ完全完治というわけではないが、リアなどとの戦闘も十分できるほどにはなっていた。桂は2人の前に来て、


「今回は大義であったな。2人の力を借りねば今回の事態は解決しなかった。礼を言う」

「いえいえ、一度失敗した私達にチャンスを与えてくれた桂さんが一番の功労者ですよ」


クロネアは慣れたように日本酒をコップに注いだ。ラッシは少しは自重しろよという目でクロネアの飲みっぷりを見ていた。これで一升瓶が2本目。しかも、まるで酔った顔を出さない。


「また2人には協力を要請する。実力ならばもっと上にいるべき管理人であるからな」

「へぇ」

「桂さんが私共を要請して頂けるのは光栄ですが、桂さんの力になれるほどの器量は私達にはないですよ。あなたが強すぎます(パイスーを取り逃がした時は驚きましたけど)」




3人のやり取りを少し離れた席で見ていた春藍とアレク。2人にとってもなぜ、ラッシ達が呼ばれたのか分からない。あまり良い雰囲気になれるわけがない。



「友達みたいな感じなんですかね」

「さぁな」


少し息苦しさを感じている春藍と、アレクはクロネアの奴は何本飲んだら気が済むんだという目をしていた。異常な酒豪である事を初めて知った。話が終わったのか、桂はクロネアとラッシの2人からこちらに向かい、アレクの隣の席に座って春藍達に話しかけた桂。



「済まないね。こちらの事情でお主達をここに缶詰にしてしまって。それにライラに付き合わせてしまったことをまたここでお詫びさせてくれ」

「いやいや」

「そんな……僕達はそ、その……。ライラのおかげで色々な出来事に出会えて嬉しかったです」


ライラが迷惑だった事は一度もない。むしろ、自分の方が迷惑を掛けていたと責める春藍。桂はもう一回立ち上がり、春藍の背に移動してから話した。



「春藍くん。君の両足はずっと義足で構わないのか……?」

「え?」

「君が安静し、眠っていた間。ライラは強く後悔していた。君のこれからに影響するだろう」

「だ、大丈夫です。桂さん」

「?」



春藍は一度下を見て、自分の両義足を確認した。確かに自分の両足はない。けれど、



「自分の足跡はこれから造りますから。ライラに出会えた事は僕にとって幸福ですから」

「……君は強い子だ。本当に」



桂は知っていた。春藍も、アレクも、ライラも知らない事である。

ライラの行動から、ウェックルスの殺害に至るところまでの大問題。その最大の罪人はライラではなく、この両足を失った春藍にあるところ。

ポセイドンの管轄や派閥に入っている連中ならば、すぐに春藍を捕らえて然るべきところに送還する事になっていた。

ライラではダメなんだ。アレクではダメなんだ。そして、理由をつけるべきものが春藍にあるから。

この場に出席しているクロネアとラッシは見逃している。彼が必要というべきではない。ただ、桂の人情に従っているだけだ。だが、それが本当にマシな選択なのかが3人には分からない。



「ライラが蒔いてしまった種は、また君を苦しめるかもしれない」

「え?」

「それでもあの子と仲良くして欲しい。拙者はあの子の育て親だからだ」



何か。早急に一手を打つべきだと、ライラのため。春藍慶介のため。



ガラララァ



「あ、もうみんないらしていたんですね」

「結構集まっているし。街の皆が勢揃いじゃない…………」



そして、ようやく登場した主役とおまけが2人。だけれど、どう考えてもその美しさや顔、服装に至るまで。主役とおまけが入れ替わっている感じがした。


「おおおぉぉっ」


どよめく。

2人共、綺麗と思えるが。7:3で胸の膨らみが立派を超えているネセリアの方を見ていた。両者共に着物に包まれ、古風なお姫様として立派な姿をしていた。ライラはちゃんとした姫カットになり、少しだけクラゲっぽさが薄んだ。それでも紐ではなく、デフォルメでクラゲの形をした髪飾りがまだ印象を残していた。ネセリアは黒いポニーテールを解いてとても長いストレートヘアになってそれはもう綺麗な色をしていた。特別な物を付けない自然な状態で圧倒する美しさがネセリアにはあった。

2人の姿に春藍は結構を目をずーーっと、惚けて見てしまうほどだった。


「綺麗な人だー。ネセリアさんと言ったか?」

「ライラちゃんもこんなに可愛くなるんだなー」

「和服似合うじゃん、ライラー!」


ライラにとっては地元の、ネセリアにとっては二十日ほど過ごした人達の声が届いた。


「あははは、凄く盛り上がっていますね。遅れて申し訳ございません」

「あたしだって、和服が似合ってもおかしくないでしょーよ!」


2人は挨拶と挨拶(?)をしながら春藍とアレク、桂の方へ歩いていった。淡々と春藍は2人を見て、ぽかんとしている口が動いた。


「二人共綺麗だね」

「ありがとー」

「思われなかったら逆に嫌よ」


アレクは特に口にしなかったが、タバコを吸おうと思ったが手を止めるほど目をやっていたと思う。


「なら拙者は少し席を空けるか」


桂は立ち上がって2席ほど移動してまた座り、春藍と桂の間にネセリア、ライラが座り込んだ。春藍の隣に座ったネセリアで祝福すべき笑顔を春藍に見せて、ライラは少し不機嫌そうに桂の隣に座った。桂は隣にライラが座った瞬間に


「着物は良い物だろう」

「ここまで歩くのに時間が掛かったわよ、着物フェチ」

「拙者にそーゆう趣味はない。ただ、少しは服装に気を遣えと……」

「そりゃ分かってるけど」


不便なところに愚痴を出すが、程々に自信があるような表情を出している。やっぱり少し変わったんだなーと、一番長く世話をしていた桂にはよく分かる。


「春藍、アレクさん。何か頼みました?」

「僕はまだ」

「俺はタバコを2箱と鮭の味噌煮だ。俺と春藍が釣り上げた奴だ」

「じゃあ私もアレクさんと同じで」

「僕も!」


春藍達は注文し、自分の釣り上げた魚の料理や山にあった色々な野菜をふんだんに使った料理、数ある異世界で取れるおコメの中で最高品質の白米を頂いたり。モームストの料理に匹敵するほどのご馳走であった。お酒が飲めない春藍とネセリアだったが、アレクやライラ、クロネアを中心に日本酒と呼ばれるブランドにはかなり力が入っていると言っていた。


「拙者は食と職には気を遣う」


この世界の管理人である桂は言う。


「働く喜びは一生懸命の汗と熱意から来るものだし、流した汗と熱は食事が潤してくれる」


"和の国"吉原は全体的に見てバランスがよく整っている。桂の独裁的な物はなく、仕事も食事もお金も、魔物なり、自然なり、遊戯施設も。春藍達が見て来た世界の中でもどれもよく出来ている世界はなかった。いい人で凄い人なんだと春藍は桂に言ってしまったが、


「どうだろうか、ライラのようにどうしても不満を持っている者だっているんだ」

「あ、あたしを悪い例みたく言わないでよ」

「良い悪いというのは己が決める事であろう?拙者は拙者なりの思想を流し落とし、皆がそれに浸透しただけに過ぎん」


良い世界だと呼ばれても肯定はしない桂。管理している環境と支配している環境の明確な境というのはやはり難しいのだ。



「それじゃあー、ライラの帰還を祝って乾杯!!」



キーーィンッ



そして、お祝い会が始まって。皆が夜遅くまで飲んで食べて、喋って、笑っていた。とにかく祝いの席だという事で誰とでも春藍達は話した。自分が旅した異世界の話をライラに変わってした。自分が味わった物はやっぱりとても貴重な事だと認識できて。多くの人達が、春藍達の冒険話に興味を出していた。同じような、似たような話を続けてしまう事もあるけれど、自分も、みんなも楽しんでいた。辛い事もあったけれど、ただの一ページしか過ぎないと思えた。浮かんでくるのは良かった出来事ばかりだった。



「……やはり、パイスーとも接触していたのか」



桂は春藍の話を横で聞いていた。盛り上がっているところ、ライラは桂の方に来て誰にも聴こえないように話した。



「あと少ししたら、話があるけれど、いい?」

「構わない。拙者もする事があった」

「約束。忘れないでよね」

「場所は変えるぞ」



ライラは桂とまた密談する約束をした。飲み会も良い感じ盛り上がりを向かえ、ネセリアのジャンケン大会なり、アレクとラッシによるフォーワールドのイザコザ話なり、クロネアの日本酒18本目 など。有終の美のような形でこの飲み会が終わり。



「はーぁぁ。ちょっと着替えてくるね」



飲み会中に着崩していた和服とようやくお別れできると思ったライラ。春藍達より早く出て行き、着替えて桂と約束した場所に向かった。

そこで20分くらいは待ったが、3本も飲んだ酒の酔いを醒ますには良い時間だった。桂がやってきた時には平常心を保てた。


「もういい?周りに誰もいない?」

「ああ、いたら拙者が斬り殺す。心配するな」


ライラは桂に頼らずとも、霧状になった魔力を周囲に張って警戒していた。誰もいない事は分かっている。ライラは口を開いた。吉原の人達でも存在を知らない場所の名。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ