JWELUNEE GEENI⑨
世界の時間はゆっくりと進み、崩壊へと向かう。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ
人類なんてちっぽけに思える。しかし、その全てが。
この世界中全てが、人類が歩み、生み出してきたもの。現在までにやってきた全てに人がいた証。崩壊も、人が最後に味わう結末でも、悪くないかもしれない。死の先を考えても分からない事だから。
春藍達がフォーワールドに帰還したと同じタイミングで、一部の人間が9割の崩壊を確認。核心した。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ
「地震?」
「最近、揺れが起きてますよね」
多くの人達にはそーいう感覚で、そーいう答えをする。しかし、事実を知る者達には地震なんて生ぬるいものではないと。
「"SDQ"で近くの異世界が崩れた衝撃が、この異世界まで伝わってくる」
「なんとかならないのか?管理人」
アレクとクォルヴァ。
「無理だろ。あれは俺達の代から残る災害だ。どこぞの魔王を倒す、ぽっとで勇者様でもできねぇーよ」
三矢正明。
「そ、そんなことを言わないでほしいのである。住民達が気付き、不安を抱くのは遠くないのである!」
ヒュール・バルト。
彼等のいる場所は、一部の人間しか許可されない研究施設。
その外では
「ったく……。人を牢獄なり、研究所なりの護衛に回しやがって。水羽ちゃんもやってられんねぇーだろ」
「…………そーいうわけないです」
「……朱里咲の事はしゃーねぇよ。あいつは戦いてぇ、貪欲な戦闘狂だよ。いずれ、俺かアレクであーなったさ。大事なもん色々無くしちまったって、落ち込んでいたらまた何かを失うぜ?」
「ロイさん。僕を監視しているんじゃないんですか?」
「そんなわけあるか。アレクには言われたが、あいつが神経質なだけで俺にそれはねぇ。あいつも用心程度のはずだぜ」
施設に入るためには電子ロックの解除と、さらにロイと水羽の認証がなければ入れない。
アレクが来るべきの時のため、自分で用意していた研究所の中の研究所。
夜弧が終わった未来から届けに来た科学、"REROAD"がアレク達に整備されている。これが全ての人類の希望であり、現在のいる人類にとっては、希望すらない無価値な物。
当たり前であるが、存在すら住民達には公表されていない。
動揺しているのは、現実の事実だけでなく、彼等の行動も含まれていた。ヒュールがアレク達に説明の協力を願っているのも、仕方ないこと。
「20万人以上の人間が突如消え、これまで作ってあげた社会の構築計画がほぼ頓挫である!!また一からのスタートになったのであるぞ!」
未来を観ている彼等に対して、現実を見なければいけないのが、人間達みんなのリーダー。今ともっとも向き合っている人間。
「ヒュール。お前に任せる」
「アレク!!」
「悪い。お前しかいない。今はホントにお前しかいねぇ」
「……ごめんね。ヒュール。私も、管理人としての立場があっても、こちらの方が優先事項。管理人全ての願いだから」
アレクとクォルヴァが外れ、信頼というものが壊れそうであった。
そして、もっともこの中でそれを言っていわけがない人物が、
「遅かれ早かれ、人間共は死ぬぜ。俺は何千とモニター越しで見て来た」
「!!」
「人間同士で殺し合うか、災害で死ぬか。ここはどっちが早ぇかな?」
怒りが、全てに、こいつが悪いって、社会的な怒りを向けさせる。アレクとクォルヴァを護っていた事は、ヒュールには分からないこと。お互いに戦闘力が皆無であり、傍に止められるだけのものがいる事。
「あなたのせいである!!」
「そうだな」
「死ね!!」
「悪いが、そいつはできねぇな。けどよ」
笑える余裕。そして、誰であっても堪える感情を吐き出され、流すこと。
できねぇことを向けられても、三矢は
「落ち着いたか?」
「!……」
「盛大に怒った後は、冷静になれるもんだぜ。現実は変わりはしねぇって、受け入れも始まる」
「何を冷静に私共の怒りを受けるのであるか!?」
「俺とお前も、そーならなきゃいけねぇ。ど偉い立場だ」
ヒュールの頭をぽんぽんと叩く。それは失礼であるが、慰めとしてする。三矢なりの行動。
気持ちを分かっているなんて事。知りたくもない事だ。
今と……未来。夢。希望。ゴチャゴチャとした人類共にあるもの。
「一から?アレクとクォルヴァが協力できない?しょーがねぇだろ。地道に行こうぜ。俺は何度でも、あの人でも、そーやって進んできた。辛いのを共有するしかねぇ時だ」
「力になれるのであるか?」
「俺が連れて来られたのはそのためだ。実のところ、俺の仕事は時間稼ぎだけだ。整備についても、戦略についても、力になれねぇ」
信憑性をもっとも気にしていた、ヒュール。
その姿がラッシに似ているところもあったんだろう。しかし、こーやって会話すればまったく違う人物。しょうがないとか、俺だって嫌だって言いたいながら、そうでもない自信が感じる。不思議であるが、腹立たしいものだ。
それと
「これが俺の役目だ。まったく、お前等も覚悟決めてやれよ」
「偉そうだな」
「相変わらずですね、三矢さん」
その不満。不快感。気にしたのはヒュールだけでなく、アレク達も同じだろう。
「………私の方も覚悟が必要ですね。本当の覚悟を……」
特にクォルヴァは何かを思っていた。
桂、ポセイドン。自分すらも繋ぎの一つ。"人類存亡の切り札"と、異名をとるのはその実力だけでなく、役割も課されているという点もあるだろう。
ガーーーーーッ
「戻りましたー」
「随分と厳重にされているのね」
そして、ダーリヤ達との死闘を経て、"深海泥"を回収し、帰還を果たした春藍達がここにやってきた。
「戻ってきたか。つーか、ロイと水羽も来るのか」
「良いだろうが。言っておくが、ライラの提案だぞ?」
「僕達にも分かっている事があるよ」
「あんたもそーでしょ?アレク」
そう遠くはないもんがある。
これがおそらく、最後かもしれないと。