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RELIS  作者: 孤独
別々編
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JWELUNEE GEENI⑧


藺兆紗には、春藍達が"マリンブルー"を訪れることが分かっていた。

それはフォーワールドで捕えた20万人という人間から得られた情報であり、春藍達が様々な素材採取をしていた事を知り、一つ一つ潰して残った素材がここにあったから。




そして、



「俺と春藍を戦わせたな」

「ふふふっ、いやぁ。ホントに残念ですよ。私、あなたのような人材好きなんですけど。どーも」


お前の人格が好きになれない。


「完璧主義にしては不完全が多く。精神の生ぬるさもある、悲しいことだ。色々ご指摘された通り、選ばれた肉体にしては残念な精神だ」


藺兆紗の黒い発言に、ややダーリヤが言葉を受けてしまう表情。

だが、


「お前はどー思っている」

「はい?」

「俺がダーリヤでないように、お前も藺兆紗ではないはずだ!!お前は、そいつの意志を汲み取ってどーなるという!?」


自らが違うように、藺兆紗に問いかける。彼はこっちよりだ。

それは正しい。そして、その問いに


「ふふっ、ふふふふふふ」


藺兆紗の笑みは狂気的で、自分と同じにしては受け入れているような。喜びも混じった顔だ。


「ふふふふふ、あははははははははは!!」

「…………何を笑う」

「いやいやいや!可笑しいんで!本当に、残念ですが!!」



同じ状態であれば、藺兆紗に勝ち目はなかった。だが、春藍やライラとの戦いで傷付き、疲弊しているダーリヤ。そして、圧倒的な物量攻めができる藺兆紗の状況から、ダーリヤが勝つ事も逃げる事も叶わないことであった。


絶対の優位から、ダーリヤと話す。その主導権も当然、藺兆紗が握った。


「あなた方に力を与えたそいつが、"時代の支配者"……と呼ばれる奴なのでしょうね。私がそれに成り代わりますが」

「なに……?」

「強さと引き換えにそこまで気付くとは、あれは大した事ないようですね」


藺兆紗の言葉にダーリヤは、辻褄が合わない事にもう一度訊き返した。


「俺とお前は、そいつに力を与えられたはずだ!!メテオ・ホールも、勇浪も、琥珀博士も……お前の元部下もそのはずだ!」

「証拠はないですよ。曖昧でおぼろげな記憶の刷り込みです」

「違わない!!」


断固として認めない。極端な事であるが、それが正しくないと合わない。なんのためのことか。

そして、藺兆紗はさらに自分の知らない事を知っている。もしくは、知ったのかもしれない。

ダーリヤの必死の顔が藺兆紗には面白く、語らせた。


「……良いでしょう。教えますよ。結論から言います」

「!!」

「あなたの記憶と読み通り、メテオ・ホールさんとレモン・サウザンド、山羊波 春狩、琥珀博士、勇浪。そして、あなたも"時代の支配者"から力を与えられた人材だ。しかし」


私だけは違うんですよ。


「!?なに……」

「残念ながら、本物なんですよ。しっかりと人格を生成し、かつての能力を取り戻したんですよ。あなたと違いましてね」


ただのハッタリか。そしてお互いに言えるが、


「今、証明はできませんがね。私の本当の名を、伝えたところで分かってもらえませんが。ダーリヤさん。藺兆紗とは、捨てた名前の引用で……私の本当の名は、伊賀吉峰いがよしみねと申します」

「…………!!」


何かを感じた。それは春藍と対峙した時にあった、奇妙な違和感。その名を聞き、しっくりと来るものがダーリヤには感じた。おそらく、藺はもっと前から


「あの頃の肉体を取り戻したわけじゃないので、確かに本物はおかしいですかね?ま、あなたと違い貧弱だったんで、変わりませんか。さーて、あなたはですとー」


そもそも力を与えられただけの偽物であり、精神的に非常に追い込まれ、裏切られ、死を選べずにおられる。とーっても、可哀想な方だ。


「私はあなたを本当に、大切に、扱いたいので……ね?私達は、仲間でも部下でもなくて、共通の目標があるだけでした。人類の進歩のために、協力してくれますよね?ダーリヤさんの偽物さん」

「…………そーか。裏切られるわけか、その名前を聞いて納得した。お互い首に手を掛け合った、共闘だったかな」



ダーリヤと伊賀は似た目標があった。しかし、一方が崩れた目標となれば足枷になる。

食って自分の力にする方がためになるものだ。それを喜ぶわけもないが、


「お前の未来は、人のためになるのか?」

「そー、怖い顔しないでください。嘘、言ってませんよ」


それが逆に怖かった。分かるから、自分が偽物であることを痛感する。恥と思い、屈辱として残る。


「安心できないな。なんか。お前の未来は温かい感じがしない」

「恐怖で麻痺しているだけです。私は、人々がなるべき人になっていただきたい。そんな社会や世界を作り出すため。あなたもそうなって頂きたい!!」


光り輝くような言葉も、そのほとんどが黒色であった。

次々に現れる、藺兆紗によって洗脳された人間達がダーリヤを取り囲み、どこにも行かないようにした。条件が整えば、彼を手中に収めることができる。お互い、首にナイフ翳した仲間だったに過ぎない。同盟や共同戦線なんてそんなもの。


「お前はそれで良いのか?お前の理想や夢には、お前がどこにいる?」

「私は今います」


だから、あなたという人格が好きなれない。真に残念ですよ。

人からの評価で人の価値とするあなた方と、自分の評価を自分の価値とする私の感性。

どちらが優れるか、勝つかは。後者には無関係なことです。



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