JWELUNEE GEENI③
何をするにも、力が、強さが、必要であった。
その場にあった事がなく、気付かされて身につけようとする。そっか。
そーいう必要や願望、……ううん、行動も含めて、必要なんだな。
バヂイイィッ
人間が造り出す兵器を持ってして戦う春藍。
それでもダーリヤの耐久力の前では、かすんでしまうものであったが。ついにその限界は来ていた。
肉体の痺れ、亀裂、流血。
「ぐぅっ」
ダーリヤは堪え、なおも己の肉体を動かし、春藍を殴り飛ばした。
そして、硬い身体を殴っての反動も感じた。
「"無限世界"」
距離をとった事で春藍は、ダーリヤを空間に隔絶する。ダーリヤの強さは能力を知っていたとしても、対処が非常に困難な脅威の身体能力にある。一方で、春藍の能力は多種多様であるが、知っていれば対処が打てる。
「!」
なにか来る。
今までの兵器攻撃でも、震動による攻撃でもない。ダーリヤが直感して抱いたことは、読めない事であった。アレクやライラ、そこに春藍もいるが。読みきれる攻撃はあった。
一度見れば分かるもの。対応すること。
それができない。
ガシイィッ
「!!」
一瞬で背後をとられるだけでなく、下から掴まれる。精神的に追い込ませるには十分な攻撃プラン。
「俺の影……?」
春藍という敵を見ながら、突如現れたもう一体に気を向ける。
ダーリヤの影は、ダーリヤ本体を殴りつけた。
「っ!」
自分の影に殴られるという初めての経験。それでも、ダーリヤは春藍への意識を切らなかった。混乱し、嵌められたらおしまいだ。
下を見て、自分の影が無くなっている事に少し驚く。だが、もっと驚くべきは
「"光影色人"」
グニョ~~~ン
春藍の創造力の高さ。及び、想像力の高さ。影という黒い形であるが、それぞれ細かい造形人形がダーリヤ達の周囲に造られていく。
ライラ、夜弧、アレク、ロイ、リア、水羽、朱里咲などの人間だけでなく。桂、ポセイドン、クォルヴァなどの管理人までも創造し、ダーリヤに攻撃させる。単純な人間としての攻撃ではなく、一人一人が持っている能力を駆使してだ。
ドガアアアァァァッ
ダーリヤへの一斉攻撃によって、強烈な光が発生。
影を媒体としている彼等は、その光で消し飛んでしまう。しかし、影ができる環境と標的がまだ生きていれば、生み出されていく。
「ぐふうぅっ」
一度に様々な攻撃を喰らった。が、一人一人の質は軽い。俺に多人数での戦闘手段が乏しいと見ての攻撃か。やってくれる。
単純な強さだけでは超えられないもので、春藍はダーリヤを削る狙い。
影がまた人の形になろうとする。ダーリヤは瞬間、空気を掴んだ。
キュウゥゥッ
「はあぁぁっ!!」
空気を擦る拳。風よりも、熱を周囲に生んで発光させる。"魔天"の肉体を持ってして、作り上げた火球は周囲に閃光と熱気を与えた。
生まれてこようとする影も、一瞬で焼き消される。攻撃はないという確信を得た瞬間、ダーリヤは春藍との距離を縮めず。むしろ、離れた。
「!」
火球を生んだ技を続けて放ち、春藍に仕掛ける目暗まし。距離をとれば、優位と思っていた自信を逆手にとり、姿と気配を消す。
バギイイィィッ
地面をぶん殴り、粉塵の巻上げも含めて、大規模な目暗まし。
「…………」
春藍との接近だけでなく、奇襲を狙ってのこと。ダーリヤの行動は悪くない。だが、その上を行く。巻き上げられた粉塵の中。春藍の目の前に現れるダーリヤはすでに、蹴りを放っていた。
完璧なタイミング。
バギイイィッ
「!!」
蹴った感触は確かに鋼鉄であったが、体に穴が空いても血も肉も出ない。贋作。
目暗ましで嵌めたかに見えたが、対応する術を瞬時に実行する春藍。読み合いとなると、差が如実に出てくる。
どこからくるか。姿を探してしまう一瞬、春藍を探してしまう。煙の中から鋼鉄の巨大ハンマーが現れてきたのに、数コンマ遅れる。
ベギイィィッ
「くっ!」
やってきた攻撃の後、短い間隔で次の攻撃が来れば、固まって動けなくなる。
肉体的な接触を避け、ダーリヤのカウンターを封じる。四方八方から今度は銃撃。多彩な攻撃を用いるが、距離をとりつつ、見えないところから攻撃する。このパターンが軸。
真っ当に戦ってない。
苛立ちもあるが、戦いの変化、仕方だ。
男の戦いじゃあない。だが、強さの上限に向かえば向かうほど。自分も距離を選ばずに戦える術を持つわけで、ダーリヤは一つずつ強くなっていった。
バギイイィィッ
やられるだけ、やられている。
俺の強さはここまでか?俺のような人間ではダメか?人は、あのようなものになるのか?
精神がくたばる寸前。そのダメ押しがまだ足りない。
生きている限り、戦え。
まだ俺はやれるだろ?堪えていっ
ガクゥッ
膝が折れるか。足を狙われていたんだな。動きを封じられれば勝ち目が薄い。あまりの強さに忘れていたな。一つ一つ細かい差で勝利を手繰り寄せるか。戦略という面で数段劣れば、こうなってしまうのか。
強さだけに囚われ過ぎていた。
俺は……
ここで終わりか……。
戦えないなら、人として……。