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RELIS  作者: 孤独
別々編
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JWELUNEE GEENI②


圧倒的に強い事。手にした物、会得した物。

自身が他者を上回っていること、あるいはない事。

今の彼が手にしている強さ。生まれ持った事とか、何かによって得た物とか。

幻を追っていたと、今になって分かった。そして、分かった事で感謝する。

自分とは違い、それこそが強さであること。



強い方が強く。勝ったもんが勝っている。

意見の捻じ伏せ合いには、どちらでも優る必要性がある。



ベキイイィッ



「ぐぅっ」

「っ!」



立っている事も、戦っている事も。不思議に思える状態でダーリヤは春藍に先制の蹴りを放った。

今にも崩れそうだから、受けに回れば終わってしまう。

己の体をよく理解し、頭がついてきた。風前の灯であっても、ダーリヤにわずかな勝機があると



「くくくっ」

「ははは」


春藍には分かっていた。

ライラが魔力切れ(夜弧が少しは回復させるが)。夜弧の戦闘範囲は狙撃を含めれば、射程は長いがダーリヤを仕留めるには足りない。身体能力の差で逃げられる。自分が死ねば、敗れる。

仲間の現状を知っていること。敵の現状を把握すること。それもまた、強さ。

ダーリヤがそれに気付くか。



ミギイイィッ



否。

気付いていない。

戦略的なものは頭に入っておらず、獣のようにここにいる存在全てを殺し、生き残る。

彼の頭はそう考えていて、最も戦力となっている春藍と戦っている。

同時に……



「春藍。お前、その体は自分で改造したのか?」

「!僕とみんなでやったよ!」

「……お前はそれを人の強さと言うか?」

「強さ?これは僕の、」


そーいう問いに答えたい言葉は。


「選択だ!!」


兵器を思う存分に出し、ダーリヤへ向ける。一人の人間に対して、兵器と一体化する人間がいる。


「人はやってくる選択を選ぶべきなんだ。この体も選択したんだ。強さって言葉、分かりやすい表現だけど、足りないものばかりさ」

「人の形でなくてもか?人から外れてもか?」

「君の身体能力も人並み外れてるけど?」

「言ってくれる」


春藍のレーザー光線を拳のみで弾き飛ばす。まだそんな力があるか。

そんな自分を改めて見て、ダーリヤは笑った。


「くくくく、どうやら俺には強がって言えんな」


嫌いな感情だが。激しい嫌悪ではない。分かち合えんというものにしては、キチガイ染みたものではなく、そのままで良いという敬意もある。


「お前が辿ってきた道はその体で分かった。だが、俺には俺の道がある」

「!」

「人を絶やさないためだ」


分かるよ。

お前を知らずとも、お前の覚悟とその体が確かに大きな背景を作っている。


「お前のような奴を人と認めたら、人は機械に全てをとられる。劣化した生物になる」


だが、俺は…………もう見えなくなり、感じなくなった。

ただの強さだけがここにあった。それだけだ。それでも、


「人の進歩のため、俺は、お前だけは倒す」


名をもらった以上の事をしよう。生きているからこそ、強くなることは当然でなければならない。

これが俺であるためで、だ。

人間であるなら、ヤケクソにしろ、無謀にしろ、生き甲斐と、幸せと、信念と



「うおおぉぉっ!!」


自分を自分で信じ、生き抜いていくだけだ!!



ガギイイィッ



本当に、戦うことに関しては強い奴だと春藍は認識した。

そして最後に、ダーリヤが出した表情はかつての自分と重なった。吹っ切れたという表情と心理。それがどれだけ人を成長させるか、春藍自身分かっている。だから、強くなり、人のに立ち、周りから力を借りた。そーやって乗り越えるしかなかった。


もう少し、違う形であれば。


「良かったね」


春藍の"震戒"と、ダーリヤの"魔天"が激突し、衝撃波が周囲を襲った。



「ううっ」

「危ない!」



ライラと夜弧は二人から離れていく。どっちからも聴こえる声だ。


「近寄らないで、か」

「勝ちますよね。春藍様」

「当たり前でしょ。勝つに決まってるでしょ、あたしの与えたダメージも考えなさい」



近くで見たいんだけど、ダメなんだね。

春藍。さっきの表情、詰め込んだ本音の語り合いができる相手を見つけたみたいな顔して。仲間じゃ、それは無理なんでしょーけど。

あんたがリアの体を移植し、ハーネットの魔術も完全に引き出し、ポセイドンの科学も取り入れた。出会った時は可愛い奴って思ってたけど、もうあんたは十分強くなって、自分であたし達の事を考えながら、あたし達の事を考えずに強くなった。

たぶん、今のあたしより。アレクよりも、クォルヴァよりも。単純な強さならあんたが一番だって。

でも、強さに呑まれたり、溺れないでよ。あんたがあんたじゃなくなる。

選択しているからって、無理ばっかして受け入れてるでしょ。多くの科学を内臓して平気な顔して、魔術の適正も確かにあるわけじゃないのに、ぶっ放してる。



「はぁ」



あんた達の戦い。

あたしからすれば、人の先を決めるようなものが見えてくる。正しいなんてありゃしないけど、勝った方が正しくなっちゃうのが歴史って奴。その過程で何をしてしまうかも、……。あんたはあんたのまま、そいつに勝ちなさい。



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