JWELUNEE GEENI①
凄まじい攻撃を浴びた。生きた者がどこにいるのか。
いや、むしろ。
ガラァァッ
「……はぁっ……はぁっ……」
なぜ、生きた?
俺はどうして生きられた?
満身創痍となりながらも、起き上がってくること。それが果たして生きている、という行為なのだろうか?星が生まれるほどのパワーの直撃。ライラの一撃を避けたならともかく、直撃しての生存は本人自身も驚きを隠せないことだろう。
「冗談でしょ。まったく」
すぐさまという程ではなかった。しかし、ライラにも気付く事があった。春藍とほぼ同じ事。
「あんたねぇ。立ってくるのは良いわ」
「ふぅ……ふぅ……」
「でも、あたし以上に驚いた顔してどーするのよ?」
合わない強さ。
理解の届かない強さがあれど、納得のいかない強さもある。
「あんた。もしかして、自分がどーして強いのかを分かっていない?」
なるほど。アレクがこいつに勝てた理由が分かった。
ライラが現状、魔力がほぼ尽きた状態で、満身創痍とはいえダーリヤから戦える状態はほぼない。だが、生きる程度の余力は残している。戦い以外ならやりようがある。
「ダーリヤは……強い……」
「?……は?」
「強さ、数、勝利……貴様等に、……それらがあろうと……この俺を、超えることはできん」
傷やダメージの影響にしては、魅入られているような俯きな表情。
信念にしてはあまりに黒く。夢や執念にしては雑過ぎる理由。
にも関わらず、立ち上がる。
「戦うのだ。勝つのだ」
往生際の悪さか。一対一で見れば、ライラの全攻撃を耐え切ったダーリヤの勝利とも言える。
「たっは~……」
ライラの溜め息が、ダーリヤの目に入った。諦めという感情ではなかった。
「あたしがムカつくような戦い方して。そこはねぇ、油断でもさせなさいよ!立てる余力があるなら、死んだふりぐらいできるでしょ!?ボロボロになって頭がイカれるなんて、あんたの強さにも矜持にも、合わないと思うわ!」
指摘。
予想外の攻撃。ダーリヤはそれでも立った。立ち尽くし、拳闘の構えをとる。戦い続けるのも生きる手段の一つであるが、大きな間違いがすぐに来た。
「あとは僕がやる。今度は負けない」
「!!」
「春藍、夜弧」
「ライラ、私の魔力を渡します。春藍様、どうか気をつけて」
意外にも。ライラもダーリヤとの戦いが熱すぎて、春藍と夜弧が近くにきていた事に気付けなかった。
「無事だったのね」
「ライラがタイミングよく、ダーリヤに魔力を集中させていたから」
「それまで、巻き込まれてたんですけどね」
偶然。しかし、お互いが把握していたからこそ成せたこの加勢。理解できる強さというのも、彼等にはあって。
「ふぅー……」
ダーリヤには分からなかった。自ら、立っていた事も含め。
ただ一つ言うのなら、
「貴様等は強いのだな」
その一言でしか表せなかった。それが悔しかった。自らの強さとは違う何かを知りえた。
「まぁ、良い。構わない。俺は……」
「死ぬまで戦う」
「いや、……そうだな。俺は」
春藍の問いかけは少しだけ、ほんの少しだけ
「強くなっていくのさ」
「それはいい事だね」
ダーリヤは微笑んで、地を蹴って春藍へと向かった。同じく春藍もダーリヤに向かっていく。
蹴りと蹴りが交錯した。
ライラは溜め息をまたつき、夜弧に肩を持たれながら。2人の戦いから離れていった。
「今の春藍の顔、見た?」
「はい」
「やけに嬉しそう。男の子だねーって、顔」
「ライラは嫌でしたか?」
「可愛くないってだけよ」
「それは同意ですね」
勝敗はほぼ見えている。だが、わずかながらダーリヤにも勝算がある
暗い藍色の空を見上げれば、この世界の不気味さを感じられずにはいられない。自身が相当暴れただけに、世界が終わる速度も早まっていくのを予感する。
「あ、目的の方は?」
「無事に回収しましたよ。"深海泥"は。あとは春藍様がダーリヤを倒すだけです」
「そうなるね。あいつ等がどーやって来たか、気になるところだし。今を逃したら、マジでチャンスがないわよ」
自らの魔力を"トレパネーション"で与えながら、夜弧は少し失礼でありながら、ライラの気持ちを汲み取った。少し気になった事で、春藍とライラが彼に対して、奇妙な態度をとっているからだ。おそらく、アレクもロイも気付いたであろう。クォルヴァや水羽などでは分からないこと。それほど小さい違和感。
「ライラ。あなたとあいつ。どこか似てますか?」
「"魔術"と"超人"の違い程度でしょ。似てるとこ」
「そーいうところもありますが」
記憶では探れませんね。
「なんかコソコソしてない?ハッキリ言うけど、あいつの事はよく知らないわよ」
「……あー。そーいうことですね」
「なによ?」
「いえ、"トレパネーション"でも分からなかったのでつい。でも、分かりました」
先ほどのことも含めて、ですが




