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RELIS  作者: 孤独
進歩編
520/634

DA-RIYA①

デートスポットにしては殺人現場的な海岸にて、2人は密会していた。


『ここに何をしに来た?』

『それは君も同じじゃないか?部下もお連れしていないじゃないか』


遥か昔のこと。

人類が行なう一つの戦争。その中心人物が2人、一つの場所に集った。


『綺麗な流氷地帯だね。ここの先がアメリカ、カナダだね』

『ああ』

『君はこっちに来るの?』

『いや、俺は日本だ。悪いがお前の相手はあとだ』


2人の名。

ラブ・スプリング。

ダーリヤ・レジリフト=アッガイマン。


お互いに、国を束ね、支配し、人を守り、人を進歩させる。しかし、ぶつかり合う者。

人としての遺伝子が変化、成長することを望むダーリヤ。

人が作り上げた技術と共に、共存と進歩を望むラブ・スプリング。


『戦う事になったら遅いから来ちゃったよ。内緒にね』

『お互い様か。時間もないな』

『ありがとう。僕の事が嫌いでも、僕が君を嫌いでも。見ている先は変わらない。率直に、君はどうして人が無くなる事を恐れる?』

『恐れるか……?勘違いだが』


ダーリヤは人であり、ラブ・スプリングは人ではなかった。しかし、"人類英知の結晶"、それがラブ・スプリング。人が生み出した存在であることは確かである。


『人とは五体満足と心技一体を成して、人であろうと思うからだ。人の心臓を持ってしても、それ以外が人ではないパーツであれば、人ではなく。パーツが本体だ』

『それが生きるためかもしれないのに?』

『死ぬことも生きるだ。俺は危惧する。人間という全てが今、支配者のように高慢で、非情を持つ。故に道具は付き従うが、道具を持ってして、人が人を保てることとになったら、立場が逆転する』



多くの生物は酸素を吸って、呼吸をする。それを原則として、世界の定義にしている。別に人は宇宙や世界から見ればゴミの1つであるし、定義していることすら嘲笑いたいものだ。

しかし、呼吸を必要とせずに生きる者もいる。先の先を見れば、人には適応という手段を持つ必要がある。


『それを技術で補う』

『それは生物が補う』


人のさらなる知恵、人のさらなる発展。


『どちらも変わらないと思うけど』

『人は技術進歩と共に、その多くを失う。お前だから訊くが、人を幸せにしてお前に何がある?人社会の平和をしてお前はどう思う?』

『僕はそれを幸福と捉えるのさ』

『人ではないのにか?』

『人じゃなくてもさ』



…………波の音が響いた。



『お前の先は、必ず後悔するぞ。今の人間は心ですら貧しい。俺達の選別が終わればそれもなくなる。人間の進歩に辿れる』

『でも、君のやる事も僕達の技術があってこそでしょ?』

『お前のとは違う。生物の成長を持ってしての進歩だ。身体能力の発達、脳の発達。基盤である生物の成長が人類の進歩に繫がる』



話はこれまでかと思い、ダーリヤは立ち去ろうとする。


『その思想は君が強すぎるから。じゃない?僕と互角なのはダーリヤしかいないし。僕は残念だけど、人間じゃない。人が持つ寂しい気持ちがあるんじゃない?』

『俺は寂しがり屋じゃない。部下もいる』

『いやいや、僕は君以外で。人という生物として、ぶっ壊れた強さを持った人。見た事ないんだ。だから、生物の成長を重視して、君のような人が生まれてくる事を願ってる。とか……?』


最後でなければ、話す事はなかったんだろう。どちらかが死ぬこともあれば、生きていても話せる事にならない。そんな状況もある。


『俺にはない。だが、もし。俺を超える存在が生まれて欲しいとは思っている』

『!へー………』


人間としてなら最強とも言われる存在にも、そーいう気持ちがあるのかと、ラブ・スプリングは興味を抱いた。だが、ダーリヤはちょっと違っていた。


『たった一人だ。俺が勝つことも、超えることもできなかった奴がいる』

『それは君にとっては、付き纏っているあの噂の……』

『……ああ。死んだ以上、もう手合わせできんが。過去を越えるのが今、今を越えるのが未来。そー願いたい』



人だから、人に超えてもらいたい……か。




◇       ◇




「行くぞ、勇浪」

「きゃっ!」


ダーリヤは春藍を倒し、勇浪と合流。藺兆紗の目的と春藍達の目的が対立する事もあって、先に進んだのは当然の事だろう。

メテオ・ホールの心配も、ライラ達の抹殺も目的とは違う。


「こんな異世界ならば建物があれば、そこがポセイドンの館と見るべきだ」


そこを破壊すること。


「しかしどうせ、世界の寿命はそうないんだがな。行くぞ」

「きゃっ」


ダーリヤ達は進んでいく。

必死に堪えて、駆け寄るタイミングも誤らず、敵ではなくその人だけを見ていた。



「春藍……様……」



夜弧が到着し、ダーリヤによって五体を崩された春藍の姿を目にした。ボロボロという言葉が優しいほどの姿に、尻餅をつきそうになった。しかし、


「必ず、助けます!まだ、……まだ、間に合いますよね!?」


夜弧は懸命な想いで、春藍の体を両腕で抱きしめる。

"トレパネーション"で生物の再生力を高め、生き返るための処置をすぐに施した。しかし、それは春藍の再生に繫がるのか?

春藍の皮膚、筋肉、骨、血。それらは夜弧の助力もあって、人としての再生力によってゆっくりと戻り始めていくが、リアの"機械運命"を施された箇所には反応がない。当然ながら、こちらは精神的な作用では働かない。



「"テラノス・リスダム"で、再生を……!目覚めてください!!」



意識を呼び寄せてみるが、"機械運命"の不調が春藍の意識をキャンセルしている。


「春藍様!!」


夜弧の言葉、呼びかけに応えたもの。


『私が春藍を直します』

「!!」


それは、中にいる者からの声。


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