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RELIS  作者: 孤独
崩落編
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LOVE SPRING⑥


準備に少々、手間取った。でも、それだけの奴等。



「ふーーぅっ」


メテオ・ホールと対峙しながら、夜弧をサポートし、勇浪を引き剥がした。魔力の消費はメテオ・ホールに等しいか、それ以上とも思われる。

だが、そーいう実力的な強さ以上に、作戦と連携。さらにはしたたかさ。それらを含め、強さというのならライラがメテオ・ホールを圧倒しているという意味にもなる。メテオ・ホールは恐ろしく強いが、朱里咲のように弱点や対抗策をとれる敵と対峙すると、途端にそれがブレてしまう。それは真の強さではない。そして、それを理解はしない。




バリイイィィッ



『今更、雷を落としてどうなるんだ!?』

「普通の奴なら、雷叩きこんでしまいなんだけど」



雷も、氷の押し潰しも、風も、雨も効かない敵は本気で厄介だわね。

でも、こいつの大半は魔力を根源としている生物。人間以上に魔力を必要としている。気体の生物である以上、直接的に触れるのは難しい。だけど、気体だからこそ



『ん?』

「"元素"を操るって、凄いわねぇ。その能力だけは」



モクモクモク



メテオ・ホールの気体(緑色の煙)にして、大きく広がる体型を雲で包み込もうとする。雲の発生は速く、大きい。メテオ・ホールも何かの企みを感じ、雲の間をすり抜けて姿を保つ。


『なんのマネだ?』


しかし、そのすり抜けてライラの前に現そうとするメテオ・ホールを、ライラは幾重にも雲でメテオ・ホールを覆い尽くす。鬱陶しがり、雲を元素で分解しようと始めるが、ライラはその分解よりも早く、雲でメテオ・ホールを捉える。この雲に攻撃性も、ましてや捕縛する性能もない。あくまで覆うのみ。目暗ましに思えるか?


否。


攻撃性、敵意を現さない、ただの雲であるからこそ。メテオ・ホールの危機感を削いだ。それは確かであり奥まで気付けなかった。メテオ・ホールは脱出する術を持っていたが、感知が欠けていた。

すでにこの雲の領域は、



「あたしのもの」



メテオ・ホールを倒すには、根本である魔力を尽きさせること。人間と違い、魔力が血のような代償を持って、容量と出力、濃度を持っている。肉体と同化しているというより、常にむき出しのまま操っているのがメテオ・ホールの特徴。

それをメテオ・ホール自身は知らない。人と魔物の差。神との差かもしれない。

雲の中に姿を消し、静かにゆっくりと降り、繋げる。


「無事だったようね」

「霧でちゃんと確認してたんでしょ。私に任せて」


ライラは夜弧と合流した。

黒々と染まった夜弧の両手を握り、ライラは雲に変えた魔力を回収し始める。メテオ・ホールを包み込んだ雲を、丸ごと回収する。



シュウウウゥゥッ



『雲が、消えていく』


いや、下へと吸い込まれていく?何が起こっている?我の体も引き寄せられていく。



メテオ・ホールは体外へと魔力を放出し続けている。一方で、いや。メテオ・ホールこそが例外である故、体内に魔力を残し、放出することによって魔術を操るライラ達。放出した魔力を回収する技術の応用かつ、夜弧との連携で成そうとしていること。


「あいつはデカイわ。体は持つ?」

「心配ないわよ。しっかりとコントロールする」


メテオ・ホールの体が魔力と気体であり、今。ライラの雲と魔力に繫がれていれば、魔力の回収の際にライラの体内へとメテオ・ホールは引きづり込まれる。

夜弧の"トレパネーション"によって、魔力の操作をより精密にし、ライラの魔力に混ざったメテオ・ホールを逃しはしない。通常であれば、メテオ・ホールに物理的に触れることはできないが、放出した魔力を介して繋ぐことはできる。繋ぎさえすれば、メテオ・ホールの意志など問題はない。



ゴパアァァッ


『!!?』



足を掴まれた感覚。金縛りというのを初めて感じる。


『何が起こってる!?何が起きた!?』


この雲の中。なぜ、我の体に変化が起きる?動けぬ感覚をなぜ、今!?体の一部がどこかに流れていく!?


掃除機に吸い込まれる埃のようなものだろう。メテオ・ホールを操り、その魔力全てをライラが握る。即ち、メテオ・ホールの吸収。


『うおおぁぁっ!?』

「ううぅっ」

『!!き、貴様等!?正気か!?』


メテオ・ホールがライラ達の真意に気付いた時、手遅れであるのと同時にありえぬことであろうと、驚愕もした。


『我の全てを、飲み込むと!?1人の人間ができると!?』


何事にも容量がある。魔力を体内に秘め、制御できる量というのは必ず存在する。無限に思えるのような連中も多くいるが、無限ということはあり得ない。"エターナル"のクォルヴァですら、容量というのが存在している(回復力も込みで実質無限であるが)。


『人間の容量は確実を超えておる!!』


雲を発生させ、雲を媒介として様々な現象を発生させるライラ。夜弧以上に魔力の質も量もあるだろう。しかし、メテオ・ホールはその上を確実にいっている。メテオ・ホールの自信も、彼の強さもそこにある。

ライラも自分の魔力と、メテオ・ホールの魔力を全て、体内で留めるのは厳しいと思う。


『肉体が壊れる!!それは死だぁっ!』

「あんたねぇ」



肉体的なスペックでは、メテオ・ホールに劣るライラではあった。だが、それを覆せるだけの精神の差があった。


「神とか言ってて、死ぬの怖いの?」


弱ったメテオ・ホールの精神。魔力を制御する意志が抜けてあれば


「屈服させるよ。あたしの体、魔力で、あんたの全てを」


夜弧の"トレパネーション"によって、ライラに取り込まれていくメテオ・ホールの魔力の制御は切断され、浮遊していく。それを己の強靭な意志で拾って、体から放出させない。放出するとメテオ・ホールに制御をとられる。


「いっっ、うぅぅっ!!」

『や、止めろ!』


体の多くがこの女に飲まれていく。逃げなければ、体に取り込まれたら、逃れられない!


「逃げられないし、逃がさないわ……」

『!!』

「だってもう、あたしの魔力はあんたを上回ってる」


魔力の一つも逃さなかった。体から吹き出ていくのは汗と体が急激に熱くなったことによる、湯気のようなもの。歯を食いしばり、夜弧にも痛い思いさせるくらい。彼女の両手を握り締める。自分との戦いであったが、隣にいてくれる仲間がいることでライラはほんの少し、痛みが和らいでいた。


『止めろおおぉぉっ』

「うああああぁぁぁぁっ!!」

「頑張ってライラ!!あなたなら、絶対にできる!!」


膨大に思えたメテオ・ホールの姿。それを屈服させて、自らの魔力に置き換えて操る。ライラとメテオ・ホールの性質が非常に似通っていて、相性というのはとても良かった事も幸いした。肉体の痛みは疲労や熱を中心としており、四肢を捥がれて魔力を暴発させることはなかった。


『ああ。我が……おわ……る』


嫌だ。嫌だ。こんなところで。我は……我は……



死ぬという事を自覚し始めた瞬間。メテオ・ホールの意志による抵抗は崩れた。同時に、完全にライラの魔力となって、肉体を蝕んでいく事が同じ。

メテオ・ホールはあまりの高慢さ故にいくつも生まれてしまった、心の隙が大きく響いたことだった。最後の最後まで、抵抗をし続ければ分からなかった。


メテオ・ホール。ライラと夜弧のコンビプレイによって、魔力を引き剥がされ、ライラに取り込まれるという形でこの世に意識を失くす。


「ふああぁっ!!あああぁぁっ!!?」


一気にメテオ・ホールの魔力がライラの体内に入り、意識が何回も連続も飛び始める。力が一気に抜けて、崩れ落ちる。


「ライラ!ライラ!!しっかりして!!」

「ああ、……あぁっ……」


制御するという負担はなくなり、意志の緊張が解けた。しかし、肉体が魔力を多く詰め込み過ぎて、ギスギスとライラの体を痛めつける。すぐに起き上がれなかったが、それで良かっただろう。念を入れてのこと。


「こいつを完全に物にする。肉体に馴染ませるから」

「平気なの!?手伝ったけど、こんなやり方は……」

「こーするのが手っ取り早いわ!効果的よ!……はぁ、はぁっ」


完全に屈服したとしても、あたしの体がまだこいつの魔力を完全に制御し切れてない。つーか、こいつの魔力はなんなわけ!?メチャクチャ、力が溢れてくる。今までにない"ピサロ"が使えるって、まだ使わなくても分かるくらい!

持ってよね。あたしの体!まだ、敵は2人はいて、春藍がまだ下にいるんだから


「夜弧!先に春藍を追いかけて。あたしの事はもういい。あとで追うから」

「平気なの?ホントに。敵に、逆に取り込まれるとか」

「あんな意志の弱い奴に負けるもんですか。大丈夫!……肉体がちょっとキツイだけ、10分もすれば慣れるはずだから……」



声はハッキリしているけど、表情は固くて、冷たい汗が沢山出てる。夜弧ができる事は



ポンッ


「え?」

「20分寝てて!」


ライラの頭に"トレパネーション"をかけ、ライラの意識を遮断させる。抑え込むという負担を軽くさせるため、全ての意識を断たせる選択。



ドタァッ



ライラはぐっすりと眠ってしまった。



「大丈夫!20分過ぎれば、効力が切れて起きれるはず!必ず、追いかけて来てよ。ライラ!」



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