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RELIS  作者: 孤独
崩落編
513/634

LOVE SPRING②

重量。

パワーを語るならば、手っ取り早く、これほど分かりやすい基準はない。

体積、質量、そのいずれも桁外れであった海。それを支えた大地。さらに真の姿が現れ、海以上の重量を抱えてもなお、負ける事なく大地はあった。




ガラッ



不思議な苔が生えた変わった大地には、ヒビすら入らない。

ややぬめりというか、柔らかさというか。単純な硬度だけでは打ち勝てないからこその、物体の変貌。

"深海泥"と呼ばれる代物が、その重さを支えて世界の鉄板を壊さずにいた。

単純なパワーと真正面から受け止めることができる、厳しい自然が生んだ素材。


最硬度というより最頑丈度。


その形を留めることに関して言えば、もっとも適した物質。

ポセイドンがこの異世界で研究を続けた理由でもある。



ガゴオオォッッ



しかし、全て防ぎきれているわけでもない。それほどに重力場が暴走を起こし、空間を捻じ曲げている事実がある。


「これはマズイね。どこまで落ちるんだろ」

「もー何回も人生振り返られるわよ!」

「まったくです!」


深海の深さは上空の高さよりもあった。春藍の造ったボールの中、3人は人生を振り返りながら、落下先での対処を考える。


「でも、泳いで潜って行くよりも早いよ」

「いや死ぬわよ!まったくねぇー」


加速度MAX。

地上に辿り着く前に全て分解されそうなものだ。火球でも生まれる空気抵抗。

再度の死に予感させられたが、春藍の"テラノス・リスダム"が場を改善する。



ボチャァンッ


「あ」


創造したのは海。自分達を中心に包み込んだ海は、重力などの抵抗を大きく和らげた。しかし、それでも墜落の死がある。


「僕に捕まって」

「えっ?」

「何すんの?……分かるけど」


両手に填めた"創意工夫"が、ライラと夜弧の体を変化させていく。生み出した海と似たように、二人の体を液体に変化させる。そして、春藍の体もだ。


「ちゃんと戻しなさいよ」

「当然だよ」


体が散るものの、衝突を受け流せ、その後肉体の構築。春藍が思い浮かべた生存手段は悪くない。



バヂャアアァァァッッ



包んだ者の全てが吹き飛んだが、いくつものの無言の協力があった。

地上にぶつかる、刹那ほどのタイミングで。ライラは"ピサロ"を発動させ、自分達の周囲に包みこむ雲を生み出す。雲に重量を持たせ、液状になった自分達が飛び散る範囲が自分の中に留めるためだ。



バシャアアァァッ



3人の肉体は散り。春藍の意志で動けるものがどれくらいあっただろう。

痛みや肉体の四散は生半可では行動がとれない。そこで夜弧の"トレパネーション"で、春藍を操作し、自分達を助ける動作を強制的に与えた。意識がなかろうが、体がどうなっていようが、込められた魔力によって春藍は動き出した。




◇       ◇



同時刻。


ドバアアァァァッ



「むっ」

「きゃっ」

『なんだ』


藺兆紗の指示により、ダーリヤ、勇浪、メテオ・ホールの3名もこの"無縁地底"、ニュー・クローズにやってきた。当たり前であるが、


「…………」

「きゃーーーーっ」

『重っ!!重力か!?』


ここに来た瞬間に、春藍達が味わった重力のパワーを味わった。

3者それぞれ違う気持ち。落下を受けての対応はまたそれぞれだろう。


「なんだこの異世界は?」

『貴様、冷静だな!?』

「俺の異世界は雲の上で生活をしていた。空から落ちるのは珍しい事じゃなかった」

『それはそーいう問題でいいのか!?』

「きゃーーーー、きゅ~~~~」



落下に乗じて、勇浪はダーリヤに抱きついて、落下も含んで楽しんでいた。


「メテオ・ホール。お前はこの程度なら死なぬか?俺と勇浪では庇うことはできんぞ」

『我は神なるぞ。落下程度では朽ちぬわ!』

「ならばいい」


物理攻撃のほとんどを受け流せるメテオ・ホールが、重力で押し潰される程度ではくたばらない。効く攻撃と効かない攻撃の差がある奴だ。

一方、"超人"である2人が、この強力な自由落下から生き延びる術はあるんだろうか。メテオ・ホールはわずかであるが、気にかけていた。


「!メテオ・ホール、あっちに行くぞ」

『あ?』

「岩にぶつかる。行き先はもっと下のはずだ」


一気に止まる事無く、落ちていくことを選ぶ。春藍達と違い、まったくのガードなく。視界良好な空中を見通すダーリヤ。


「!」


落下速度に違いがある。ゆっくりと差が出てきており、ダーリヤ、勇浪、メテオ・ホールの順になって、落下していく。彼の行く道に後の2人についていく形になってしまった。

落下中に障害物があれば避けたり、



「ふんっ」



ドゴオオォォォッッ



ダーリヤの身体能力を持ってして、殴り壊す。空中でもその肉体を自在にコントロールして、落下を止めることなく落ちまくる。それに続く勇浪とメテオ・ホール。



『しかし、どこまで落ちるんだ?』

「さぁな」

「きゃ~~~、ふぁ~~」

欠伸あくびもするか、勇浪」


10分以上も落下しているとあって、あんまり変わらない景色と状況に飽きた勇浪。緊張感のない奴だ。だが、見えてくる。


「地上だ。もうすぐ、着くぞ」

『長いスカイダイビングだった』


そのあまり変わらない景色であったが、ようやく。避けようのない巨大な地上が見えて来た。足をつけて立っていたのが懐かしいくらいだ。

しかし、……




ドガアアアァァァッッ



ダーリヤと勇浪は、文字通り何もしなかった。そのまま……



『何をしているんだ、貴様等ーーーーー!?』



体を分散して衝撃を和らげたメテオ・ホールとは、まったく違う対応。衝突の直前まで何もしていない。というか、さっき。庇えないとか言っていたのは、ダーリヤであっただろう?


『なるほど。庇えないと言ったのは、何もできないということか』



勢いそのまま、ダーリヤと勇浪がその形の穴を作って地上に降りた。強力な重力は地上に降りても感じるもの。



「むっ……むーー、少々効いた」

「きゃーきゃー」



"超人"が、この自由落下から耐え切るには、強固な肉体を宿す他ないと。理解していただきたいと思える行動で、穴から這い上がって来たダーリヤと勇浪。


『馬鹿共が、人間とはこうも馬鹿なのか?』

「何も変わらないことであったよ。死なぬこともな」

「きゃっ!」



同じく、生き残った3名。


「さて、どこに行くか。まだまだ下に落ちられるのか?目標とする施設の破壊なわけだが」

『この重力で潰れている可能性もある』

「きゃーーーーっ」



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