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RELIS  作者: 孤独
男性編
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とても素晴らしい日になるよ②


意識を取り戻したのは、朱里咲が繰り出した『地天崩震ちてんほうじん環我意かんがい』による衝撃音であった。



「……っ………」



王の身体は何度も空から落ち、身体の外も中も血まみれとなり、折れもし、欠けもした。何度、こうやって地面に叩き落とされたか。生きているから、4回くらいか。



「あれは朱里咲かな?私達の敵と戦っているならいいんだがね」



クォルヴァはその音の方向が監獄であることを知っており、今言った。良い方向に転がる事とは思っていなかった。王に手間取る時間は無意味だ。

もうすぐ、助けさえなければ、彼は死ぬだろう。


「待て、こら……」

「?」


言わなくても、クォルヴァの両腕と王の両腕は繫がっている。


「ま、だ……だ」


自分が生きている事はやるべき事がある。朱里咲も、琥珀もやり切ったんだろ。あの衝撃はそっちも良いとは思っちゃいねぇだろ。


「しつこいな。死にたがりは良くない」

「は?」


死にたがり?なめんな。俺は、こんな素晴らしい日に死ぬんだ。

まだこいつを止めることも、任務も、まだ全然始まってねぇ。1分がクソなげぇ日だ。ホントに、すげぇ日もあったもんだ。


「死んでから離すよ」


上空に再び移動するクォルヴァ。周囲の状況を探るための、偵察の目的もあった。散々驚かされた王だったが、さすがにここまで来れば、命が続く限り粘るしかできないだろう。軽視、油断。


「!」


報道局で粉塵が上がっている。誰かがやって来たのか?

それと、先ほどの衝撃音は監獄近くで起こったようだね。あの馬鹿デカイ、ロボットは片付いたみたいだから、残るは人間タイプの敵だけかな?


クォルヴァは上空から戦況を計る。一体、誰がどこで何をしているかまでは分からなかったが、次、どこへ向かうべきかは検討がつく。報道局のところへ行こう。単なる騒ぎではない事は感じ取れる。この位置からではまだ、ヒュールが人質にとられたという情報は得られていない。



ガヂイィッ



「っ!」


一方で王も、準備を整える。

散々、やられて掴んだクォルヴァの隙。恐るべき執念で閃く、反撃。


いい気になるなよ、管理人。その再生力が仇だぜ!


2人揃って落下していく最中。この攻撃は非常に地味なところであるが、強力であるのは変わりなく。クォルヴァも墜落するため、多大なダメージを背負うがすぐさま、持ち前の回復力で復活を遂げる。

王にはどうしようもなく、避けられない。次もそうだ。


5度目の落下が今もうすぐ、決まろうとする時であった。



王の両腕の関節が高速回転する。まるで、電動ドライバーのような速さで回転を始める。


「?なんだい?」


しかし、クォルヴァの両腕と融合されており、指、手首、肘を制御しているのはクォルヴァであった。つまり、動かした関節は上腕の関節の箇所だけであった。

自らに"関節技"を仕掛けることで可能とした物であるが、その努力がいかなものを生み出したかは、



バヂイイィィッ



「ぐっ」



クォルヴァの融合から離れる事に成功した王。上空という、移動手段の限られたところであり、若の"ディスカバリーM"による回避も間に合わないタイミングでの切断。


「ば、馬鹿か!?」


クォルヴァが叫ぶのも無理のない事。王は自らの関節を外すどころか、切り離した。人体から……



ドジャアアァァッ




地面に叩きつけられる両者。



「お、おぇっ……」



両腕を自ら切り落とし、クォルヴァの融合から逃げ出した王であったが、そのダメージは計り知れないものであった。死ぬ。ホントにものの、数秒でだ。


「ぐあああぁっ!?ああぁっ!」


クォルヴァの痛みは落下の衝撃だけではなかった。むしろ、それよりも厳しい、腕を切断されたというダメージを背負った。



や、やってくれる。私の"エターナル"による自分への治療は、"現存"する状況からの再生だ。落下によるダメージの再生は可能であるが、切断され離れてしまった部分から先の再生はできない。



王は何度も攻撃を浴びたことで、自分の両腕だけがクォルヴァに再生されている事に気付いた。おそらく、痛みを共有しなければならないリスクがあるだけでなく、自分の体として取り込んだ部位も再生させなければ痛みが癒えない事も、察した。


クォルヴァの体内に残った王の両腕は、切断面だけが再生されず、確実かつ大きなダメージとショックをクォルヴァに与えた。



「ぶはぁっ」



王はふらつく、両腕を捥いだ彼は地面で足掻くのみ。死を間近に感じ、これ以上、クォルヴァへの悪足掻きは無理だと諦めかけていた。おそらく、自分の両腕との融合を解除すれば、クォルヴァが逃げ勝つだろう。

その通りにクォルヴァは動いた。


「!!」

「また会ったな」



しかし、それよりも速く。上空から落下していたクォルヴァと王を発見した、ダーリヤがこの場に駆けつけており、



「次の命はないぞ!クォルヴァ管理人!」



稲妻が生まれるほどの、自然災害に匹敵する蹴りがクォルヴァの身体に命中した。



「ぶふうぅっ」



融合を解除するため、再生を一時的に緩めていた事と不意に襲い掛かってきた強烈な一撃。蹴りの威力が強く、クォルヴァは大きく吹っ飛ばされ、




バギイイィィィッ



いくつもの建物を打ち破り、なおも止まらず、二人は完全にクォルヴァの戦闘範囲から外された。



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