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RELIS  作者: 孤独
男性編
498/634

同調

言葉は発せられているが、お互いにしか聞き取れないもの。動きも、伝えている事も迅いやり取りであった。


ロイの拳がガードする朱里咲の両腕にぶつかった。



「お前がこうするとは、いずれ思っていた!」


訴える覚悟は実は言うと容易い。なぜなら、相手の気持ちを考えなければできることだ。酒の席、場の空気、拷問を浴びること。隠れた本心を手段選ばずに出させるのは酷く、簡単。

今、ロイが伝えたい事は朱里咲と、本気で戦えるかという覚悟の決め方。お前に言っているんだ。



「まだ!俺と戦うだけなら戻って来れる!考え直せ!お前はただ死ぬだけだ!!」


朱里咲は王とは違っている。王は特攻を前提にしている。それは死を受け入れなければいけないことだ。

しかし、朱里咲は死のリスクを負う必要などない。彼女はただ、判断を作られているこの世界に合わせさえすればいいだけなのに。


「いかんなぁ」


今度は朱里咲から仕掛ける、前蹴り。肘で防ぐロイに伝わる朱里咲の声。


「このまま死ぬのはダメだ!生きているのに、死んでる私を受け入れる事ができない!」


戦いしかしていなかった人間。それはロイも同じだったから、気持ちは伝わる。


「私の強さは戦いのためにあり、平和を作り、守るためにある強さではなかった!」


込められた気持ちは放たれた蹴りも強く、説得を止めろと訴えるものでもあった。

悔しい。

ロイはどうやって、倒すかではなく。


「諦めんなよ!」


朱里咲を説得するなど、自分には不可能だという事が理解してしまったからだ。なぜなら、ロイには朱里咲の気持ちが分かるからだ。戦いしかできない者が戦えないとしたら、死んでいると同じ。平和な世の中なんて、地獄や墓地といった恐ろしいところだろう。

それでも、それでも……。自分がこの道を選び、仲間と共に来たのなら。俺は助ける。助けなきゃいけない。


「お前はそれだけじゃねぇ!!」



自分がこうして、戦い以外に選べるから。

そう早く決断することではないと、朱里咲の拳を額で受けるロイだった。



「捜せ!生き方を捜すことは、死ぬよりも、戦うことよりも楽しい事じゃねぇか!!」



春藍達と出会っている順番が逆なら、きっと俺の相手が朱里咲であっただろう。俺は断言できる。きっと、俺自身が相手なんだろう。



「なんで、そんなに死にたがる!?」


拳を受けた額はそのまま、突っ走り。朱里咲の頭まで届いて響いた。

ここでお互い、力同士がぶつかり合っていた戦闘に技が入った。技を用いれば、朱里咲の本領である。胸元を掴み、垂直に反転するほどの高速の投げ。


「戦う血が叫んでいるんだ!」


頭から地面に突っ込まれた、ロイ。頭部へのダメージが連続して続く。グラァっと、視界に揺らぎが生じたが、素早く朱里咲の手首を握り締めた。


「じゃあ、自分の血と戦えよ!!」


朱里咲の要が器用である手首、手先。封じて、かました蹴り。朱里咲を飛ばし、自らも手を離すには十分なものであった。

足をつき、バランスを整え。



「気持ち、変えてくんねぇか?」

「いかんなぁ、無理だろう?」


息を落ち着かせる間、


「じゃあ。もう少しだけ、戦いながら待ってやる」

「期待してるぞ。10分そこらで終わる事は望んじゃいない」



両者の本当の会話だった。



◇    ◇



「おー、朱里咲は上手く中にいる奴を引き出したようじゃな」


ロイが朱里咲と交戦している様子を確認してから、琥珀博士は遅れる形で監獄の入り口にやってきた。


ロイもクォルヴァも、敵の情報をあまり得ていなかった事が今回のミスに繫がった。朱里咲の裏切りを理解しながら、ロイがこの持ち場を離れたのは致命的であった。説得したい一心もあったのも、あるか。

ともかく、琥珀博士がほぼ無人の監獄内に入り、


「!おー、ホントに捕まっておったんかい」

「!?……お前は……」



完全な想定外。ダーリヤと、仲間関係にある人物が侵入したことで、形成を大幅に変えるものとなった。


「琥珀か?なぜ、ここに来れた?」

「事情は逃げながら、話してやるわい。ともかく、我々がこんなところで倒れるわけにはいかんじゃろ?」


懐から取り出した小さなアンリマンユ。とても小さい物であるが、



『ON』



琥珀博士の”ギガント・モデリング”によって、一気に巨大化していき、動き出すロボット。アンリマンユが堅牢を物理的に、殴り壊してみせた。鍵など不要な自慢の破壊力。

牢を壊し、ダーリヤを縛っている鎖も外していく。


「お互い様じゃ。ワシも負けてな」


気遣いの言葉は王がいたからであった。


「たまたま、お主がいる世界に来た。解放はついでじゃ」


事前の段取りのように、組み合わせが決まっており、次の対処は分かっていた。


「ワシの目的は”アルテマ鉱石”じゃ。ワシはこれから、ヒュールという男を揺すりに行く。ダーリヤはここの連中を解放してから、好きに暴れてくれ」

「なに?」


琥珀の言葉は、それまで知っている琥珀の者とは思えず


「お前はホントに琥珀か?」

「ふははは、いかにもじゃ。ワシはワシの目的がある。少しでも成功するため、人を使うところは代わっておらんぞ」



バリンッ



ダーリヤが解放される。しかし、アレクにやられた傷は今も残り、万全とは良い難い。それは王も、琥珀も、計算している。少しでも確率を高めるためのことでしかない。


「誰かいるんだろ?でなきゃ、説明がつかん」

「そうじゃな、行ってくれるか?王という男でな……!おおっ、いかんかった。この手紙を主にやる」

「?」

「ここは敵地じゃ、王という男の連れ、藺兆紗という奴がこの異世界に明日、来ることになっている。この手紙を藺に渡せば、別の異世界に逃げられ、ワシ等の勝ちとなる。ともかく、ダーリヤ。お主が持ってくれ」


王直筆の手紙をダーリヤに渡した琥珀。それだけのこと。


「ここはもうお主に任せるぞい。ワシはもう行く」

「……ああ。助かったぜ」


ダーリヤがウサ晴らしに、隣の牢屋を殴り壊した。傷が癒えて無くても、その強さは健在だろう。



「生き延びてやる」


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