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RELIS  作者: 孤独
一流編
495/634

力のなき者の戦い


「なっ、…に……」



王の顔がクォルヴァにバレていないから、成功できた要因でもある。治療する人物が春藍であったら、対応されたかもしれない。

しかし、普通。強者であっても、負傷兵に紛れて入り込むものか?それも、左腕という高い代償を払ってのこと。



ポーーンッ


「クォルヴァ管理人!!」

「いやああぁっ!」


住民達は騒然とする。目の前で頭を吹っ飛ばされた人がいたら、当然の反応。王はすぐにクォルヴァの頭を投げ出し、走って逃げ出した。



「これくらいで勘弁してやる」



王の任務はクォルヴァの撃破ではない。ダーリヤと勇浪の解放。”アルテマ鉱石”の入手。よって、クォルヴァの暗殺や殺害は任務ではない。過程を考えるならば、任務中にクォルヴァの注意を自分に惹きつける事だろう。



首を吹っ飛ばしたくらいじゃ、死なねぇんだろ!?俺の得意な接近戦でも勝ち目はねぇ!



クォルヴァの”エターナル”は治療や防御、サポートを主としており、破壊力は著しくなく、人体への攻撃手段もまた乏しい。

よって、王がとった戦法はヒットアンドアウェイしかなかった。

現場を離れてすぐ、クォルヴァの身体は即座に再生を始めた。



「まったく、ビックリした!」



並の管理人なら絶命する一撃を喰らっても、即座に蘇る。

顔は覚えられただろう。


「こっちがビックリです!」

「普通に蘇った!?」


驚く住民達に、即座に指示を出す!


「私はあいつを追う!この持ち場を任せるぞ!」

「し、しかし!」

「これ以上の負傷者は出せない!」


一瞬でクォルヴァも、王の性格を見抜き。追いかける判断をした。人数で物を言わせれば抑え込める者であろうが、そこまでに辿り着く犠牲はいくつか分からない。また、彼は人の命を容易く切れる。首を折られ、絶命すれば治療も不可能。


迅速に確実に。


「若!協力してくれ!」

『分かっている』


身体能力では王に劣るクォルヴァ。短距離走や長距離走となれば、王が勝てる。しかし、クォルヴァの不利を若の”ディスカバリーM”の空間移動で補えると判断した。ここで現した敵の1人を逃すわけにいかない。


「追いかけて来たか」


クォルヴァからすれば地の利も自分にあると踏んでいたが、王は準備の段階で逃走経路をいくつも持ち合わせていた。むしろ、地の利では王の方が有利であったかもしれない。

そして、若の能力の事も、藺兆紗の言葉や朱里咲の情報から得ており、彼による空間移動の先回りも予測していた。


位置を特定できるライラがいなければ、追いつくのは至難。しかし、無理にしてはいけない。逃げ切ることが自分の命のためだが、任務ではクォルヴァの注意を惹きつけること。

離れすぎず、近づき過ぎず、やり過ごす。



ベキィッ



道しるべのように出会った住民の首を通りすがりに折って、逃げ続ける。

出会い頭の待ち伏せは対処の仕様が無い。ならばと、建物の壁を破壊しながら待ち伏せを予測し辛く、移動する。

動き続ければ、クォルヴァの”エターナル”を喰らう可能性は激減する。また、



「くっ、簡単には先回りをさせてくれないな。住民まで攻撃するなんて」

『敵の方が身体能力が上だ。どー捕まえるんだ?』

「接近さえできればこっちのもんですが……」


クォルヴァは王の逃走に頭を抱える。待ち伏せを選ぶも、



「人込みが多い!早く、住民の避難を……って言っても。敵はその中なんだよね」



アンリマンユの巨体ぶりが住民達に見えており、これに反応し、恐怖で纏まって逃げるのも致し方ない。王のする派手な移動も、アンリマンユの姿からすれば滑稽にしか映らない。しかし、逃げ切っている!


『顔は覚えたんだろ?あとでやるのはどうだ?』

「いえ、住民の中に紛れているんです。早めの対処が肝心ですよ。取り逃がす可能性もある」


アンリマンユの動きは止められても、撃破までには時間が掛かる。治療をしていても、王が負傷者を増やすだろう。クォルヴァは王を急いで捕える必要が現状の最善。

それをここまで王は、準備万端で見越している。

弱者なりの戦いがいかんなく発揮され、クォルヴァは手を妬いた。



「鬼ごっこなら一晩中付き合ってやる」



朱里咲がこちらの味方と信じての、戦争。いや、これこそが王の戦い方。

任務を全うするならば、強さだけに囚われない工夫の数々。



逃げる、全力で逃げる。しかし、注意を離さない。




ドシーーーーンッ



「よっしゃあ!1体が倒れたー!」

「よーしよーし!」


王の逃走から4分49秒。アンリマンユの1体が崩れ落ちた。いかなる巨体であっても、数によって倒されるのは仕方ないことだ。

負傷者を出しながらも、この戦闘における重体者はいなかった。

医療班も駆けつけ、クォルヴァほどではないが、一命はほとんど取り留められている。クォルヴァは王を追いながら、2体のアンリマンユの動きを封じている。残りは1体。それは逃走する王の目にも分かること。



クォルヴァへの注意の惹きつけが終わってしまう。今度は、アンリマンユを倒した戦士や住民達による牙が王に向けられる。そうなれば勝ち目はない。


「最初からねぇよ」


だが、思った以上の時間が稼げている。


「5分はキッチリ、凌いだぞ!」



そうなれば、クォルヴァも異変に気付けるだろう。


「朱里咲は何をしている!?」


クォルヴァは激怒の声を出す。


「なぜ、あの巨大ロボットのところへ駆けつけない!どうなっているんだ!?」


自分が王に照準を合わせたのも、朱里咲という戦力がいるからだった。相手がいくら自分と戦う気がないとはいえ、見過ごすわけにはいかないのが敵という存在。

4分を過ぎたところで、敵の動きから内部でとてつもない事が起こっているのを知ってしまった、クォルヴァ。



この時間稼ぎが、確実にクォルヴァ達の悪い方へと流れていった。



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