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RELIS  作者: 孤独
一流編
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いかんなぁ

王は2人にお茶を出す。


「って、俺が用意するのかよ!言っておくが、侵入者だぞ!」

「そうだ」

「そうじゃのぅ」


まだ未入居扱いとなっている、集合住宅の一部屋を借りて3人は話す。"祭"が終わった後だが、残っていたお菓子やお茶の葉などを再利用している。安かったそうだ。


「おっ、旨いのぅ。誰にでも取り得があるんじゃな」

「お前、お茶入れ係として優秀なんじゃないか?」

「酷い褒め方だな」



圧倒的な強さに戦闘狂の一面を持つ朱里咲と、天才科学者であり、デカイ物だけが好きな琥珀博士だ。どう考えても、お茶入れをするなんて、ありえぬ光景。本人達もやったことがない。


「偉くて強かったし」

「天才じゃし」

「それでも、できなかったんだろ?」


王は溜め息をつき、こういったくだらぬやり取りをすぐに切った。


「それで朱里咲。どうするんだ?」


本題に入る。


「お前はこの安心ある平和に嫌気を差している。俺に罪を押し付けられるなら、手伝ってくれるのか?」

「どうできる?」

「何があるかだ。俺と琥珀には連中と派手にやる力はない」


その連中には春藍達のことが含まれているものだ。


「お前達に協力しそうな強い奴が、2人ほどいる。お前達と同じで、ここに侵略を始めた連中だ。私はこいつ等と戦ってみたい」

「随分それは危険だな」

「1人はダーリヤ、もう1人は勇浪と呼ばれる男だ」

「ぶふぅっ!な、な、なんじゃと!?」

「?」


飲んでいたお茶を噴いて、琥珀もこの言葉には驚いた。


「その2人。ワシの同志じゃ!協力者というか、少なくとも!ダーリヤはワシと繫がっておるぞ!」

「なんだよ。それじゃあ、益々やらなきゃいけねぇな」



ただの護衛がこんな大事になるとは思いもしなかった王。藺への連絡を通したいところだが、あいにくこっちは受け側。藺がこちらに来ないと何もできない。

朱里咲と、琥珀が認めて未だに握られていない人材がこんなところにいるとは……。


「そうか、知り合いか。奴等と殺し合いを申したかったが、すでに両者は満身創痍。もう少し後にしたかったところだ」

「!ちょっと待つんじゃ!ダーリヤが負けたということか!?」

「そうだが?」

「あれに勝てる人間がおるのか!?複数で挑んでも奴には……」

「1人で奴に勝った人間がいる。それと、最後の管理人。クォルヴァという奴もこの世界にいる。私の協力抜きではお前達に勝ち目はないぞ」


朱里咲はペラペラと喋った。退屈で、皆の幸せなど。どうにも耐え切れない苦痛だった。違うというところを見て欲しいのだろうか。


「随分やる気だな。良いのか?ハッキリ言って、あんたはもうこっち側に入っているんだぜ?」

「戦いがしたい。それになんの躊躇いがある?」


ハッキリと、自分の覚悟を軽々と決めているように思えた。もし、今の言葉がなければ揺ぐことはなかったろう。


「今の戦力を教えてやる。その代わり、お前達2人は確実にダーリヤと勇浪を牢から出せ。戦争を起こしたい」


人が生きる上で食べる事が必要。生きる意味に娯楽を求めるのも、在り来たりな発想。その部分だけが偏屈に曲がって他者の血を望んでいた。自ら宣言し、その迷いはまったくなくなった。


「手を取り合うことなど、もう私には遠く夢物語だ」


全ては戦うために生きてきた。それに殉ずる、自分の過去を重ね、外れぬよう。


「そっか」


それがどれだけ不幸か。王は惨い覚悟を立場によって止めることができず、彼女を手伝い、手伝わせた。


「琥珀はどうだ?」

「やるわいのぅ、面白い。とはいえ、ワシは誰よりも弱い。少し戦闘準備を整えさせろ。"アルテマ鉱石"がなくとも、それなりの兵器を造れる」

「俺も、お前の情報だけじゃなく、生の情報が欲しい。潜伏には5日は欲しい」


ところ構わず、王と琥珀は朱里咲へ要求をする。裏切りという行為を踏み止まれる、5日でもあった。それでも、揺れないだろう。王には核心があった。


「分かった。私がお前達を隠してやる」


朱里咲は溜め息はこぼれず、奮え立つ血を吐きそうになった。平和じゃなくなるという、不安定な世界情勢に存在の証明ができる独壇場の興奮。

どっちでも。2日くらいで王と琥珀を裏切って、殺してみる。

ダメ。

血はより、強きを求める。平和に向かう戦いを拒む。


強い、男達が、私の仲間にいる。これから敵となる男達がいる。




◇     ◇



朱里咲は去った。後で王と琥珀に隠れ家と、食料、情報を授けた。


「信用していいのかのぅ?ダーリヤとは違う武人じゃ」

「ちびるほどの戦闘狂だぜ。平和を壊す気が満々な奴は、悪党である俺達の味方さ」


どーゆう理屈だと、この自信には不思議なところがある。


琥珀博士は王の人間力に関心した。聞けば、朱里咲とは敵になっていたとも。

藺兆紗の推薦も分かる気がした。

冷静に状況を把握し、飛び込める覚悟の器は自分やダーリヤを越えている。


「どのみち、俺達は詰みだ。朱里咲が協力しなきゃ、生き残れないぜ」


この男には何が見えているだろうか?

死ぬという恐怖を克服できる人間が、何も持たずにいるのは面白い事だ。

強さによる諦めを持たず。ゾンビや機械のように感じていないわけでもなく。

かといって、人とは違う。命を賭けるに問答が要らない人。それが戦うとなれば、どんな犠牲も、どんな苦しみすら、関わらないと決めるのだろう。



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