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RELIS  作者: 孤独
血液編
488/634

生きるに笑うも、女も要らない。楽しむのに笑ったり、女が要る

ライフラインを中心とした仕事は爆発的に増え、同時に壊れた箇所には人手という手段を用いて、修繕されていった。


「移民の成人、7割近くが職を持ったということであるか」


ヒュールは現状の成果に大きな喜びを抱いた。ただ、


「あとはアレク達が戻ってくることなのであるが……」


同室に同席していたクォルヴァに尋ねるも、


「まだ、向こうにいるんだろう。アレが一筋縄にいかないだろう」


春藍達、4人が三矢のいる異世界に向かって1週間が経った。三矢の話術に魅入られて、お互いに話をしているんだろう。

あそこは時が歪んだ唯一のスペース。


「4人を殺せる奴じゃない。また、ヒュール君が思っている通り、アレクが死ぬわけないだろう?」

「それはそうであるぞ」


三矢正明の扱いは、管理人という立場から言っても難しい。

自分達を造り上げた父親的存在であっても、自ら課せられた管理人としての宿命に、まったく反している生き物であるからだ。

しかし、人類の選択を妨げることは管理人の任務ではない。


「もっとも、それは夜弧ちゃんもだが……」


しかし、彼女はシグナルだった。

我々、管理人側の準備は整い始めた。

残る大きな課題は人類の覚悟と、未曾有の災害、"時代の支配者"の抹殺。



クォルヴァが神妙な表情を作り出している時、そいつは本格的に動いたという。



ガゴオォォォッ



「大きさに不満があるがのぅ」

「そんなこと言ってる場合か、後戻りできねぇぞ。琥珀」



突如、フォーワールドの本部に現れた巨大な科学兵器。それでもミニチュアサイズに過ぎないアンリマンユが、街の建物と並び立つほどの大きさで暴走していた。


「やっぱり1体に力を入れた方が巨大化できるんじゃがな~」

「だ~か~ら!してぇなら、この任務を成功させるしかねぇ!」



王震源、琥珀巨星。2人の侵入がここまで上手く行った要因と、勝算がまったくないという状況を疑わず、実行できたこと。



「俺はクォルヴァだ!お前は、ダーリヤと勇浪とかいう仲間を解放してから、"アルテマ鉱石"を回収しろ!場所、聞いただろ!?」

「先に後者をしたいんじゃが」

「うっせ!時間稼ぎがどこまでできるか分からねぇ、こっちの戦力を考えろ!」



情報の提供者がいる。

春藍、ライラ、アレク、夜弧の不在が確定であり、水羽の戦線復帰も難しく、バードレイや謡歌と共に本部から離れた位置にいること。

このフォーワールドの防衛の要が、クォルヴァ、ロイ、朱里咲の3名である現状を知り尽くし、それでもなお、差を埋めるという自信。


「先に向かえよ」


実力差を省みない特攻。それを作戦として組み込める姿勢は、ダーリヤとは違った戦士であること。わずかながら機会を頂いた琥珀は、この時だけは我を閉じて言った。


「お主に礼を言いたい。生きて帰って来るんじゃぞ」

「まったくだ。俺も、藺に報告ぐらいはしてぇからな」




街で暴れる小さめのアンリマンユが5体。王震源。琥珀巨星の2名。


「なんの用だ?」

「いかんなぁ、ロイ。ここにいて良いのか?」


ダーリヤ、勇浪などを収監している牢獄を見張り、護っているロイを尋ねる朱里咲。その眼はすでに覚悟を決めた面。

男には分かる。

そして、アレクが彼女をこの任務に回さなかった理由も聞いている。この女は、性別を超越して根っからの、戦闘狂。



「外で何かが暴れている。音と震動が聴こえるだろう?」

「下手だな。お前が真っ先に行くはずだぜ」



沈黙の牢獄の外ではなく、まだ。牢獄に続く途中の入り口といったところでの2人の構え。ロイの傍には仕事の報酬として頂いた可愛い子ちゃんが2人いた。


「2人共、ゆっくりだ。ゆっくり外に出ろ。クォルヴァに報告はいらねぇ」

「は、はいっ」

「と、通れるんですか?」


出入り口で戦闘体勢をとっているのは朱里咲だ。


「心配ねぇ。雑魚には目もくれねぇ、あの女に宿ってるのは自分でも抑え付けられねぇ怪物だ」


ロイの判断、思考。それは正しい。

誤算があったのは、



「いかんなぁ」


朱里咲の目的が戦闘をより楽しむという一点に絞り、なおかつロイをこの牢獄の看守から遠ざけることにあった。外に出ようとした、2人の女性達を問答無用で素早く首を撥ね上げて殺害した。

ロイは自分が標的であることを初めて知った。そして、2人が殺害された瞬間にはロイの方から拳を朱里咲に向けていた。



「朱里咲ぃぃぃっ!!!」

「よい、その怒り。心地よい」



ロイを外に引っ張り出し、向こうの爺さんが囚人を出す。

まぁ、それももうどうでも良い。私の血が戦いを求めている。この高揚する相手との、戦闘のみが私を癒す。



◇    ◇



カランッ



同刻。


「俺の職業に興味があるなんてね」


バードレイが気になった職業。

溜め息をつき、女性達が自分の職場に足を踏み入れることをやっぱり辞めたかったが、編集長に頼まれたとあっては頷くしかない。


「アカヤさん。漫画家なんですよね?」

「ああ、漫画を描いてる」


この世界に来たばかりで、片付けなども済んでいない。グチャグチャに積まれた資料や練習用に描かれているノート、様々な種類のペン、これまで描いてきた漫画の数々。


「女性ばかりです」

「女ばっかりだ~。R指定って何?」

「あいにく、俺は成人用コミックしか描けねぇの。可愛い子が来るって言っても、引き受けるもんじゃなかったな」


アカヤは自分がやってきたことを改めて、多くの考えを持つ人々に売り込んでいくことに溜め息をついた。疲れというより


「なんか、描きたいもん描けねぇんだ」

「描きたいのに、描けない?」

「漫画なんて売れなきゃいけねぇ商売だし。俺、ぶっちゃけロリコンなんだけど」


なんのカミングアウト?


「紙面に少女が○○○するような展開は控えてくれ言われるわ、考えたことが上手く通らない。それで上手く行くこともあるけど、上手く行かない時は俺の力不足だって話だ」

「…………」

「ああ、後者は俺が前にいた異世界でのことな。今の編集長は結構まともだよ。売り込みが違うよ」


ライフラインに関係する仕事ではなく、お客様に楽しんでもらうためのサービス。お客様あって、成立する職業。

難しいな。自分の考えを押し通せるわけじゃなく、お客様のニーズに合わせた物を提供すること。バードレイの心にそーゆう難しさと、理想の追求が重なって葛藤する生き方に感銘を抱いた。



「素敵です」

「嘘付け。エロ本描いてる人間はまともじゃねぇぞ」


そんな職業をしていくことに対して、否定するアカヤ。


「俺は生まれてこの方、漫画しか描いてねぇから。こーゆう生き方しかねぇと決めたんだ。なんで描いたかは、幼女が描きたかっただけだ。なんて名前だったっけか……?」


自分を否定したくなる。けれど、今までそうして生きてきた事を忘れず、捨てず。立ち止まることはあっても、その歩みをゆっくりと進める。

なんかカッコイイよ。

今の姿に後悔していても、過去の自分を大切にできるのは素晴らしい。



「うーん、漫画家の収入というのは」

「それは期待しないでくれ。今、生活に終われる人が多い中。こーいった娯楽の売り上げは期待し辛い。アシスタントが欲しいけどな」


漫画製作体験として、ベタ塗りなり、ペン入れなどを実際にやってみるも。分かっての通り



「技術職だ。素人がすぐにできるほど、甘くはない」

「確かに基礎的なことでも難しいですね。お兄ちゃんならできそうだけど」

「僕、意外と不器用なんだね」

「今更?水羽ちゃん……」


できれば、背景を描ける人材を欲しているアカヤであるが、そうは簡単に見つからない現状。収入が不安定、拘束時間、集中力、求めている能力。

単純な作業であっても、それに不向きや向きがあるのはこれまでの職業体験やレポートなどから実証されている。


「まぁなんだい。漫画家やゲーム屋、小説家とか、ミュージシャンってのはエゴい奴じゃねぇとできなくて、その道で生きるとしたらエゴを捨てる覚悟がなきゃいけねぇ。溜め息ばかりの夢さ」


見えないファンに描いた事など、一度もない。

多くのほとんどを自分のためにやってきた。



「でも、夢をやってるのは。現実にするのはそーゆうことなんだよ。アホだけど、アホだからできる。バカだから、バカにしかできねぇことがある」


そんなバカに付き合ってくれる人がいると。こっちもなんだか嬉しくて、最後までやっていくよ。例え、その人が俺だけになったとしても。



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