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RELIS  作者: 孤独
血液編
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仕事の多くは単調の連続であり、天才である必要より集中力と持続力のある方を求める。

ブロロロロ……



モノノヘイタの運転する車に乗り込む、謡歌、水羽、バードレイの3人。


「俺も3年前はこうして車やバイクを使って、配送をしてたな」

「今はしてらっしゃらないのですか?」

「立場は部長だからな。全体の指揮と責任をとることだ。配達できる奴をこっちに回してどーするってんだよ」



アレクが熱心にライフラインの強化を行なっていたことで、道路は立派なところがある。交通量は物量よりも穏やかであり、何より移民達が資格を獲ることに奔走している状況だ。

工事による足止めも大した障害に感じない。信号待ちのように平然としていて、気分良く言葉も出る。


「物流は世界の血液だ」

「!」

「だから、俺はこの仕事の大切さと重要性を説きたい」



ブロロロロロ………



「漁師が新鮮な魚のまま、料理屋に持っていって欲しいならしたい。食い物に困った奴がいるなら、すぐにでも届けてやりたい。欲しい物があるならちゃんと包装して届けたい」


それは仕事を大切にしている者の声であり、言葉であった。

社蓄などと悪く言うかもしれないが、人には考えがある。


「飯を食うってこと、帰る家があるってこと、一緒に眠る妻がいること。俺が幸せだから、人を幸せにして何が悪い?」


取材に美女が3人も来るから、ちょっと調子に乗っているような発言をしているようにも思えるが、

ホントに、何が悪い?



「いえ、私だってそう思って仕事をしています。そうやって、生きています。悪くなんてどこにもありません」

「嬉しいなぁ」


水羽にはそこに誰かがいれば良いと、絆による生存理由を出すだろう。謡歌とモノノヘイタの気持ちを理解し辛いけれど、生きている理由は付く。

そして、


「そうなのか、謡歌。僕は謡歌達と一緒にいるだけでいいのに」


その気持ちは平凡や当たり前に分類され、無くなることで初めて意識できることだった。

3人の声を聞いたバードレイには、どちらにも頷けることじゃなかった。


「…………」


だんまりと、この中で聞いていた。

おかしいのかな?そんな疑問を自分に問いかける。


「ちゃんとした生活って、それだけ大事って事だよ。水羽ちゃん達とこうして過ごせる日々を作るには、お仕事をする。お金を使う。食べる、寝る、遊ぶ、学ぶ。話す」



在り来たりに過ごすことが、人としての生きるの理由か。

特別に生まれて来ていると思って生きてみた。それを否定することなく、漫然と生きていることでも良いのか?



良くない!!



「血」


不自然にバードレイの右手人差し指の爪が、惨く剥がれ落ちていた。それでも痛みが走らなかった。なんか、使い辛くなった感じで済んでしまいそう。

右手を3人には隠して、自分には苦痛になりそうな声を聴いていた。


「誰かを嬉しくさせて、生きていると自分も嬉しいです」


謡歌の眩しい笑顔が羨ましい。きっと、水羽もそーいったところに惹かれたんだろうと、バードレイは深く考えてしまった。

なんでこうして、胸が苦しいのだろう?何が違うのだろうか?

言葉が出ていた。


「人を幸せにする事は特別ではないのですか?」


世の中には悪い人もいる。しかし、悪とは何かの信念、理由から作られる。自分という存在を護り、幸福にするため。悪に染まることもある。

何気ないようにバードレイは質問した。間髪無く、謡歌が答えたことで本当なんだろうと、頷けた。


「特別に感じないようにしてます」

「特別じゃない?」

「確かに難しいかも。世の中、間違いがないことを常時させなければいけない。それが、生活の有り難味だって……私はそう思ってる。バードレイちゃんは?」

「私は……」


その答えが早く、質問まで来たのだから。

バードレイの言葉の本音はすぐに零れ落ちた。


「誰にもできない事や自分にしかやれない事、してみたいのかな」


それが具体的になんなのか、分からないで10年以上は生きている。日常の中で溶け込むことすら特別だと、思える意見もある。そして、自分から見たら特別だと思える謡歌が羨ましく感じる。それを誇示しない、多くは認めないから。



「いいじゃん。それこそ、特別って思われる」

「発明家や政治家の志だな。でも、俺達以上に大変だろう」



深くを追求しなかった謡歌の姿が、自分のまだ分からない。原型のその先にいるようで少し嫉妬してしまった。



バタンッ



「着いた。ここが集荷先の一つだ」


モノノヘイタは3人を降ろし、仕事姿を見せた。お客様に頭を下げ、挨拶。運んで欲しい荷物の数、重さ、サイズを集計し、専用のケースに入れて、領収書を発行してお客様に手渡す。

その仕事風景はお買い物をするのと非常に似ている。


「簡略化しているから今は速いんだよな」

「そうなんですか」

「地味」

「単調な作業ですね」


ボロクソに言っているのが、2名ほど。それをモノノヘイタは厳しく訴える。


「馬鹿野郎!多くの仕事は単調なことばかりだ!仕事の数が膨大だからこそ、数がいる。機械がいる!誰だってできそうな事でも、1人がやれば何千人とこんな手間を出さないで済むんだ!」


仕事は、労働は、きっと1人で生きていたら多くをしなきゃいけない事を解消する。見えない世界で生きる人々の団結なんだろう。


「まったく、単純でも舐めちゃいかん。集荷する荷物によって、作業が異なるしな」

「そーいう事もあるんですか?」

「ああ、特別な料金で預かっている物にはサービスがある」



日常に不可欠な仕事があって、それらを特別にされてはいけない理由があるから、誰にだってできるよう工夫がされている。強要してくる。

それを深く感謝しながら、学んで伝えていこうと思う謡歌。

一方で、バードレイはこーいった仕事が在り来たりと済まされてしまう、悲観な気持ちを抱いていた。



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