表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
RELIS  作者: 孤独
血液編
484/634

人間生きてたらどーなるの?

一生懸命に頑張る人々がいる。だけれど、失敗してしまったら誰も手を差し伸べない。声をかけることはない。



やってみると良いを、口にした者はいなくなっている。そして、みんないなくなっている。



上手くいかないなぁ。残念だなぁ。

そして、悔やんでもしょうがないんだ。機械のように動きたいよう。今、この時だけ感情を忘れられたらきっと、身体の震えは止まらないんだ。

怖いよ。見捨てられちゃう。されちゃったんだ。

そんなところまで、感じる必要がないくらい変わってしまえ。


世界に人間など要らない。世界が汚れる人など、要らない。



「謡歌は良い事をしているのに、どうして気付いてもらえないのですか?」

「え?」



水羽とは別の視点。戦うことができない人であるが、可能な限り尽くせる忠誠心に対して、不釣合いな世の中の疑問。バードレイには常々感じていた。


「人に優しくして。みんなに仕事を提供して、みんながきっと動いているから世界が成り立っている」


言葉は上手にできないけれど。


「謡歌は偉いとか、お金とか、友達とか、恋人とか……そーいうことだけじゃ、足りないよ。何かの報酬が必要だわ」


生きていることに頑張っている人がいる。そう思えた人だった。バードレイにとって、初めて出会った気がしたちゃんとした人間という存在。まぁ、そもそも。"ちゃんとした"ラインは誰が決めるのやら……。


「んー、いらないかな?」

「へ?」


謡歌は無欲に近い。


「あえて言うなら、お兄ちゃんに褒めてもらいたい。それだけでいいよ」


フォーワールドの環境が異質過ぎるから、どうにも仕事をしていないと落ち着かない。マゾ社蓄体質。休息は確かに頂くが、何をしていいのやら分からないこともある。



「だって、こんなに色んな人達と触れ合えて、お話ができるのは面白いかなって。仕事が楽しいと思えるの、みんなに良い事をしてたら」

「……いいかも」

「いいでしょ?」

「はい……」


謡歌自身の本心を。どうにも納得できないバードレイだった。それはやっぱり、人それぞれなのかな。良い事をできたら楽しい。悪い事や苦しい事をしたらつまらない、嫌だ。

不思議なことだ。




ポチャンッ



今日の3人は海で釣りをしに来ていた。ただの遊びではなく、漁業の楽しさと人材募集も兼ねてだ。



「あー、僕が満足に動けるなら海に潜って獲るんだけど」

「人魚みたいなことをしないで」

「それは迷惑だからね。決して、海には飛び込まないように……っと」



川釣り、海釣りとある。"ザクロ水"によって、広大な海が誕生し、漁師達は船を借りて海へと飛び出した。より魚を獲る事、万が一。海の魔物に出くわした時、護ってくれる凄腕の戦士の募集。


「暇~……」


水羽にはとても向いていないことだった。疲れているせいもあるか、すぐに眠ってしまった。


「もう、水羽ちゃんは……」

「人には向き、不向きがあるものよ。静かにしてあげましょ」


漁師は男の大仕事。大半が漁に参加できる男手であった。


「女性は危ないから。色々、船の上だし」

「1人の女性が大勢の男達によって……」

「い、いきなり何を言い出すの!?もぅ!」

「あっ、糸引いてる!」


女性の仕事についても考えている。漁業への関心が高まることも含め、1人海釣りを提案された。


「力がいりますね、えいっ!」


バードレイ。まず、1匹目。ゲット。


「ぬるぬるして、気持ち悪そう」

「でも、釣り上げたら嬉しいわ……っつ。この」


魚が食った針を抜こうとしたバードレイであったが、暴れる魚に手を妬いた。謡歌もこれは体験であったが、釣り上げると分かる魚の気持ち悪さを知った。あまり触ったことがなかったから、好意を抱き辛い。


「口から針を抜くの、大変ね。魚の鱗で手から血が……」

「でも、やっちゃうんだね」


改めて。


「漁師さんって凄いね。農業を営む人も、天気や土地、害虫と戦いながら、私達に新鮮な物を届けてくれる。働く人って偉いね」

「そうね。そーして、世界は動いている」



当たり前にやってるんだから。それだけでも凄いよね?そう思って欲しい?



「世界はこうなってれば良いね。みんなが何事もなく、何かができること」



有り難味を知る。

そっか。一生懸命にやっているんだ。それが



「一生懸命に生きて欲しいね。それが人の在り方。どんなことでも、美しくある」


最初に感じていたことがなくなった気がした。何もかも、失ってしまえばこうした普通を感じられない。苦労の中でみんなが生きている。しょげることはあっても、一生懸命にやればきっと、生きていることに意味があるんだ。

今まで空っぽでなんのために生きているか、不思議だったけど。



私が一生懸命に生きることが、私が生まれた理由なのか。



失ったら、また取り戻そう。いや、それ以上に得るんだ。一生懸命に、一生懸命に。

私は私の生き方をしていく。


「ありがとう、謡歌」

「え?」

「私、謡歌と出会えて生きていける。謡歌みたいに出来るか、分からないけど。一生懸命に、自分の生き方をしたい」



それが屈折ながらも、自ら宿した怪物を。いや、"時代の支配者"を呼び起こした覚悟であった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ