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RELIS  作者: 孤独
血液編
483/634

世界の血液

人々の憧れとは異なるものが多い。


「ぶひび、ぶひ」



農場見学をしに来た謡歌達。

かつてのフォーワールドにはなかった、畜産施設に驚きながら、研修に励んでいた。


「可愛いなー、こいつ。僕、動物は好きだぞ」

「食用ですよ?水羽ちゃん」


まだ、バードレイと水羽の怪我は癒えておらず、満足には動くことはできない。


「なるほど、このような仕事をこなしているのですね」

「毎日が除菌だよ。動物好きより綺麗好きであることが条件だね」



謡歌の仕事は、様々な仕事のマニュアル作りであった。上司のヒュールから水羽とバードレイのお世話だけでなく、住民達の職業斡旋の手助けを依頼されていた。

アレクや春藍のような技術職にはかなりの年数と、経験が必要とされているため、移民達のほとんどはその職につくことができなかった。

元々、人を選ぶ仕事だ。



「よーし、僕も家を手に入れたらブタさんでも飼おう!動物王国を建国だー」

「だから、食用よ?ペットじゃないわよ」


和むような、水羽とバードレイの会話を聞きながら、仕事内容を懸命に頭の中に入れる。自分達が学びながら、マニュアル作りに励む。

普段の意識はそれほど高くないのは、それが当たり前の現状であるから。



「ちょっとどーゆうことよ!」

「こんな当たり前のことができないのかしら!?」



そんな文句はよく耳にする。当たり前のことができないこと、しかし。当たり前のことをしたことがない人は当然いる。

謡歌としては、与えられた仕事をしっかりとこなせる環境作り、研修期間を設けたいところだった。自分たちが共存して生きるための仕事を、誰にでもできるよう。


「やっぱり、どれも仕事は大変です」


謡歌の職業なんて、教員という形でみんなには捉われているだろう。



世界も一つの命。

謡歌は様々な仕事のマニュアルを作る度に、それを実感していく。世界にも血液がある。みんなが分かれ、その歯車を動かす。誰一人、無駄があってはならない。

真剣に、世界のため、仕事に励んでいく謡歌。その姿を見守る2人の友達。


「あーいう顔、素敵です」

「そーだよな!やっぱり、謡歌は可愛いけど」


それ、あなたがレズなだけでしょ?


「何かのために身体を捧げられるなんて、羨ましい。私も見つけたいわ」

「そーいうことか。それも謡歌のポイントだね」


命には終わりがある。そして、世界にも終わりがある。その最後まで尽くせたらいいのかな?


バードレイの感情は謡歌に対する羨望があった。しかし、今から謡歌と同じ道を歩む気はさらさらなかった。


「よーしよし。一杯食べろよー、あとで僕がお前等を丸焼きにして食べるんだからな」

「ブタの食欲を失せさせる餌のやり方ね」


そして、水羽のような戦える女にもなれないと思っていた。弱気な一面。まぁ、精神の関係なしに強さを得るには覚悟より大切な下地があるものだろう。

それでもこの2人と出会えて、共にできるとしたら。バードレイ自身も答えを見つけるべきはずだ。なんだろうか、何になろうか。



「今日はありがとうございました」

「いやいや、こちらこそ感謝するよ。こんな職業でも、みんなの食生活を支える一つなんだ。知ってもらえたら嬉しいよ」



マニュアル作りに限らず、職業の宣伝もある。

ライラと夜弧がいなくなり、アナウンサーの募集もしていた。謡歌とバードレイも、一つのコーナーに出演する役割を与えられた。


「僕は僕は!?謡歌とバードレイだけズルイ!」

「君は勝手に原稿以外を喋るから向いていないよ」

「あははは……」

「それに包帯だらけで、みんなに心配されるしね。水羽ちゃんは絶対に向いていない」



クォルヴァとバードレイに否定されて、水羽は泣きながら謡歌が出演している放送を見守っていた。


『それでは今日の体験講座の予定です』


職業斡旋マニュアルに限らず、職業体験の場も設けている。それの宣伝アイドル的な意味で謡歌が任命された。人材難を、人材の質で今は補えている状況だ。


『午前9時より、海洋調査の学習。配送業者の体験。薬剤管理の講習。調理学習……』


謡歌の紹介する職業は基本的に、明るくて、一般的なものだ。バードレイが最初に務めていた風俗店とかは深夜の時間に斡旋がされている。



「当たり前の職業って、悲しいですよね」

「なにが?」

「当たり前ってことが。謡歌がこうして呼びかけなければ、知らないから行けない人がいる。必要とされているのにどうして、関心が少ないのかしら?」



一方で、バードレイが担当している宣伝がこちら。



『こんにちは!今日も様々な、異文化を紹介していきます!皆様、ごゆっくりご視聴、ご静聴くださいませ』


子供向けの娯楽コーナーの紹介であった。経済の発展にはやはり娯楽が必要であり、技術職や製造業も、廃れがなければ維持も成長も期待がもてない。

小さい子供達は特に流行物に目がない。時代に追いつけ追いつけと、この世界に報道されるという利点を活かした情報番組は楽しさを重視し、マネごとをする。


ゲームやスポーツ、小説、漫画、音楽、工作、料理、出会い、飼育、コミュニケーションなど


それは人が生きる事に必要ではないが、1人の人が生きる目的を生み出すには必要と言えること、謡歌の言葉は世界を動かすためのもの。バードレイの言葉は人が生きるためのこと。


紹介していることはあくまで、生きる活力を上げるため。世界をどうこうしていくかは関係のないこと。


「支持されているのが、私であることに少し……気を悪くするわ」

「バードレイの方が綺麗だしね。いいことだよ」

「ですが、……」


謡歌に励まされる。しかし、納得のいかないこと。バードレイが困惑している表情は、どこか印象的で可愛くあった。




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