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RELIS  作者: 孤独
本音編
480/634

○つやま○あき

三矢正明は知り尽くしているのではない。


「管理人を造り出す前はホントに人類は終わりかけていた。災害も、人間同士の関係も。管理人が造られた理由、"無限牢"を造って様々な異世界を生み出したのにも理由がある」



初対面に近い人を信頼させるには、初対面とは思えないほど、話を聞かせることである。


「発端……いや、道が変わったのはやはり。一つの"科学"、なんつーか。とある1本のゲームがこうさせた」



新聞やテレビ、ネット。そういったマスメディアからの情報ではなく、三矢にはその時にその現場の中にいたという、強い証明と事実があるからリアルな話ができるのだ。

三矢は語る。時間稼ぎの限り、その意図をまったく悟らせないほど、数十億年と続いた孤独を忘れるように。

今の人類がどう動くか、


「そいつをプレイすると、あらゆる個性を確定できる」

「個性の確定?」

「ポセイドンからもそーいう話を聞いたな」

「知っているのか?なら、もうちょっと詳しく話してやる。たぶん、あいつは個性を失くすとも言ったかもしれない。その見方も正しい。だが、俺達の"多く"は個性を生み出すために造ったのだ」



その当事者。



「懐かしいな」


たった一言。物思いにふける言葉を発する。

それもまた、信頼を高める手段が一つ。当時を振り返るように、善良な気持ちであったのは、本心。


「あれは俺と俺の仲間達で作ったもんだった。丁度、最悪最凶の戦争が終戦した時に世界中にばら撒いた。大勢が善意だった」


不平等に始まる人生。それを取り返すことなど、ほぼ不可能。


「腕を失った人、頭に異常を抱えた人、苦を知らない天才と言うべき人。老いに怯え、幼さに指を咥える人。差別、区別、悪く例えたらそうなる。気持ちを分かって欲しいとは思ってないが、成りたい姿はあるもんだ」


ポセイドンの意味と、三矢の意味は解釈違い。


「流行りみたいにな。人類は誰からも嫌われないよう、最善を選んでいった。知恵を得れば、選択は絞れる」


衰える頭や窮屈な頭を入れ替えたいと願い、高い知能を手にした。それは機械に等しい洗練された脳に変わった。しかし、大勢の人間が高い知能を手にすれば並ぶ。

肉体も同義であり、100mの速さを競ったとしても、誰にも差がつかなければ意味がない。

人は競争を失った。


「俺達は人々の努力と、才能を壊した。それが管理社会に繫がった序章だ」



◇     ◇



これが答えか?人類の進歩か?


「否」


ダーリヤはフォーワールドの大型の独房の中にいた。腕も足も縛られ、身動き一つとれず、最大の危険人物として彼はここに収監されていた。

脱出する状況ではないし、万が一出られたとしても、出入り口付近でロイが看守をしている以上、戦いは避けられない。情報も当然少なく、ダーリヤはまだここに自分を倒したアレクがいると考えていた。



「私が劣ると?」



あまりに強すぎるからこそ、勝利のみを知っており。敗北を知らない。人間が感じる痛みを知らない。凄い人にも無知はあるものだ。

掻き毟れない髪。上の歯と下の歯が、食い合いをするような歯軋りと共に。



ダーリヤの歪みきった、不正極まりない強さが表になった。


声を強く押し殺し。その中を決して外に出さないよう。



「随分、でけぇ殺気だな」


とても捕縛され、動けぬダーリヤの様子を見に来たロイ。


「?」


そして、彼の表情が自分と作られた、特に"超人"としての、形作りとは大きく異なる事を見て。人類の中にある異常を知れた。



「どーゆう作りだ?」


ロイの疑問の声など、届いていない。ダーリヤは今。激しい葛藤と、自分を妄信していた。



【俺は強いはずだ、ダーリヤ・レジリフト=アッガイマンだ。この世に俺を超える者などいない。誰一人超えられない。人類は俺に追いつかなければいけない】


激しい形相に反し、今のダーリヤの肉体は驚くほど萎み始めていた。強さを手にしていながら、その強さを制御し切れていない精神。


【があぁっ!あぁが!】



似非の力と言えば、正しくはない。


「強いのにそりゃねぇだろ?」


肉体の急激な衰えは精神的なことであると、ロイはダーリヤの様子を判断した。

傷が少ない。



◇      ◇



「"黄金人海"」


藺兆紗は本を読んでいた時だった。姿を消していても、様子を伺うメテオ・ホールの存在に気付けていた。


『よく呟くな』

「ええ。私の、完成形です」



藺が人材を欲する目的もある。ただ、人類全てを支配しようなどという目的に限らず。


「ああ、そうだ。この際、神と謳うメテオ・ホールさんに教えてあげましょう。王くんがいないことですし」

『?』


この怪物が、一体何を知っていた。また、何を知らないでいるか。



『この我とやる気か、藺』

「まさか。仲間割れなんてしませんよ。そもそもできませんし」



藺が望んだことか、あるいは見えない何かに願われたか。



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