○つ○ま○○き
万が一の侵入者がいた場合の、迎撃用の魔物達があっという間に壊滅させられる。
強さだけをとれば、春藍達が彼に会えるだけの資格はあった。
その張本人は高慢と、す。
「東の方向でいいのよね?」
「かなり歩いてますけれど、ずーっと砂一面。たまに魔物。飽きが来た」
気温は過ごしやすく。歩く道が良質でも、能力を使いながら進んでいくことに消耗は隠し切れない。
「ふーぅっ」
「大丈夫か?春藍」
「あ、大丈夫です。やっぱり2時間以上になると、疲れてきますよね」
そこまで負担の掛かる生成ではないが春藍の、汗の流れ方はこの砂漠の暑さによるものではないと、誰もが理解できる。
「速い方が良い。進もう」
理解しながらも、一刻を争うという状況を考えて進んで行く。ライラの雲に乗って進むという手段もあるが、その入り口は地下という難点。
歩き続け、進んで行き、
見えてくる人影。砂漠に住んでいるとは思えないスーツ姿に、七三分け。
「あそこ、人がいる」
「!!ちょっと待って、あいつって」
見覚えのある。そして、怒り込み上げて来そうな奴が
「どうも、はじめ……」
男は挨拶をし、頭を下げた瞬間。ライラは凄まじいスピードで彼のところへ行き、拳を繰り出した。
「ぶっ殺してやっ……」
「え?」
しかし、ライラの拳は彼の身体をすり抜けた。攻撃されたことなど、意に介さず続ける。
「まして。私は、藺兆紗と申します」
「こいつは」
「映像ですね」
外見は間違いなく、あの藺兆紗であった。しかし、ライラ達の目に映るのはただの映像。そして、
「私は案内人でございます。彼に会いにきたのでしょう?」
彼の横には奇妙な黒い穴が現れていた。こんな案内人がいるとは聞いていないが、この雰囲気は正しいと4人は感じた。
「ちょっとあんた!私達の敵でしょ!出てきなさいよ!」
ライラは感情を剥き出しにし、映像の藺にキレる。
「いや、あれは映像だから……」
「そうですよ。私達と戦った藺兆紗ではないですよ」
春藍と夜弧はライラを抑える。殴っても、口論になっても、無意味。
しかし、映像の藺はライラの要望に応えてくれた。とりあえず、敵という姿は止めた。
「分かりました。では、彼のものになりましょう」
藺兆紗の映像は崩れ、次に現れた映像は。黒い長髪のポニーテール、和服姿に腰に差す刀。
「拙者の方が正しかったか」
「か、桂!?」
「桂さんに変わった!?」
いや、だから映像だ!って言いたいところだが。アレクが先に構えて、ちゃんとした質問を彼にした。
「お前、何者だ?」
その質問をより、興味を惹かせるように桂の姿も変わっていく。アレクがもっとも嫌っているような男の姿。
「我を知りたければ、会うだけだ」
「今度はポセイドン!」
最後には
「こんな辺境の地まで足を運んでもらってすまない。いずれ、君達がここに来る事は桂から聞かされていた」
「クォルヴァにまで……」
「どうなってるのよ?」
「降りれば分かるんだろ?行こうぜ」
アレクが一番に、その黒い穴の中へと入っていった。
◇ ◇
そこは"無限牢"の運営施設の一つであった。
アナログの時計が大量に並んだ通路。
「ここは存在している世界とは違います」
「あ、クォルヴァさんに結局落ち着いたんですね」
「その方が良いわよ!」
映像のクォルヴァに案内される形で通路を進んでいく4人。ここがどんな場所か、どーいったところか。まず、4人の目的の前に語ってくれた。
むしろ、そっちの方が良いとライラとアレク、夜弧は思っていただろう。
「主に全世界の監視と環境変異が役割としています」
「全世界の監視と環境変異だと?」
「管理人は人と我々が繫がるための存在に過ぎないのです」
例えば時間。
1日24時間という概念は、異世界によって異なったたりもします。また、日の出、日の入り。これらの根本の操作はこちらが担っています。
空気の濃さ、水の性質、空の環境にいたるまで。人間が住むべきところを造り出すのが役目。
「環境はおろか、生活にですら争い、嫌悪を抱き、死に至る。それが人間」
「管理人は人間のサポートやパートナーってことか?」
「それはそうでしょう。なぜなら、管理"人"なんですから」
「そうね」
「では、この場所で全世界の環境を変えられたのですか?」
「可能ですが、劇的に変わるわけでもありません。雨量の調整、日照の調整、世界を隔離している範囲の調整。やれることは大規模なことですがね」
管理の根源たる場所。そういうところに来たと、4人は感じた。
「本物のクォルヴァはフォーワールドにいるが、……桂やポセイドンは死んでしまった。じゃあ、ここは無人なのか?管理人がいるのか?」
「いえ、管理人はいません。しかし、人がただ1人います。ご安心を、詳しい昔話も彼から聞けることでしょう」
「人…………あたし達と同じ、普通の人間がこんな大事な場所を制御してるの!?」
「"普通"ではないです。あなた達もですよ?少々、気の難しい方です」
話と共に徒歩を進めれば、立ちはだかった扉。威圧感より、邪気の気配がこの奥からする。ほとんどが難しい奴と語る。
「鍵は開いています。では、中へお入りください。彼のものは座って待っております」
それを最後に映像のクォルヴァは消え失せた。アレクが代表して、その扉を開けた。
同時に4人が反応した。ソファに座る、一人の人間の顔に。
「え?」
「ああっ!?」
春藍とアレクは、いの一番に驚いた。それほどあの管理人とソックリな顔であったからだ。映像なのかとも思えたが、人間としての存在感はある。
ライラと夜弧も、驚いている。そんな中、彼は4人の顔を向けた。
「まぁ、俺をベースにした管理人がいるからな」
「!そ、そっくりだ」
「マジか」
実はお前なんじゃね?そう、思っていたりもする。それほどソックリな顔。
「就かせるために苦労したよ。ポセイドンは当然、反対したからな」
「言っておくが、俺はお前の顔が嫌いだ」
「僕もあまり……です」
そう言うな。本音から聴こえる。
彼は立ち上がって、しっかりと挨拶をした。
「自己紹介をしよう。俺の名は三矢正明。管理人や無限牢を製造した、1人の男だ。管理人ナンバー328、ラッシのモデルとなった男でもある」




