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RELIS  作者: 孤独
劣等編
472/634

アレク VS ダーリヤ

穴から先に這い出たのは勇浪の方だった。



「ひゃっ、ひゃっ」



水羽を一撃で仕留める眼球潰し。限界の奥へ摘み、刳り貫いた水羽の左目を食いながら、地上へ生還する勇浪。


「えっ……」

「そんな……」



勇浪が出てきたこと。人の、目玉を喰らう光景を眼にすれば。全員、食べられるという悪寒を出すのも当然。謡歌も、水羽が死んでしまったことに腰がひけ、地面にお尻をつけてしまった。



「きゅるるる」



腹が減った。

これほど消耗した戦いを癒すのは、数の餌が必要だった。狭い空間への嫌悪、



「いかんなぁ」

「!」


それを妨げるのは、やはり。この場にやってきた朱里咲しかいないだろう。勇浪は一目で、彼女も水羽と並ぶ兵だとは察する。その溜め息は、勝ちを驕ってか。

否。


「敵から眼を離しちゃ、いかんなぁ」

「!?」



勇浪にも同じ事が言えよう。確実に、脳に達した攻撃を受けながら



「誰か、死んだ?」



再生能力は皆無。損傷は酷さと同等と見て良い。それでもなおその命、断てず。

背後から振り向きを許さず。勇浪の両肩を握り締め、その両腕を物理的に折り畳んでいく。間接が曲がらない方向へと連れて行き、人間という存在を箱上に変えていく。

皮膚と骨は力に耐え切れず、破損。血は堤防を破った波のように吹き出る。


「ぶっ殺す」


水羽。勇浪の攻撃で顔面の4分の1を失いながら、勇浪への追撃。そして、


「言ったら、お前は死ね……」


完全に勝敗を決する、箱詰め。これが完全な決め手!

動くことも抵抗することも、擬態することも不能となった勇浪の敗北。2度目の敗北。



水羽 VS 勇浪。勝者、水羽。



「はぁっ……はぁっ……」


勝ちはしたが、1対1でここまで苦戦したのは初めてかもしれない。油断を突かれ、危うく死に掛けた。逆も十分にありえた、どちらにも転ぶ戦闘。緊迫感。

急ぎ治療を受ける。


「お兄ちゃん、呼んでくるから!しっかりしてよ、水羽ちゃん!!」

「うん、僕は、死なないよ。謡歌」


謡歌の声に励まされながら、ゆっくりと呼吸を整える水羽。

緊迫した戦闘に恐怖を抱けた。ある意味、当たった相手が悪かった。それだけ強い奴が相手だから。

一方で、この戦闘を楽しめなかった朱里咲は


「不甲斐ないぞ、水羽。いかんなぁ」

「厳しいね、先生。そうだよね……」

「油断してもらった傷だぞ。しかと、首を潰せ。頭を潰せ。心臓を潰せ。戦闘を綺麗に纏めちゃいかん」


恐ろしいことを。そして、戦闘という命のやり取りの在り方を淡々と語る。自分ならばしたこと。水羽の鈍りにも心当たりがある。


「迷うな。敵は殺せ」


その言葉は違う。朱里咲は続けるように訂正し、


「いかんなぁ」


守りたい者がいるということは、失うことを恐れ。判断を鈍らす。


「大切なら、より強く守るのだ」



朱里咲になくて、水羽にあるもの。今それが、静かな2人の勘当であったのかもしれない。お互いは理解していなくても、片方がそう抱けば……。




◇    ◇



対峙している人間。"超人"、"科学"、"魔術"と、3つの要素。スタイルに分かれているが、生物としての素体は互いに人間。

自分こそがと、自惚れるところもあるだろう。特に、


「強いか?」


ダーリヤから先制する。空中を飛び回る身体能力を見れば、"超人"であるのは十中八九。そして、アレクが握るバズーカ。間違いなく"科学"。能力の大まかな予想は互いにつく。

想像の範囲内だと、理解し合っての対峙。



バギイイィィッ



「"魔天"」

「あ~~?」


空間に亀裂、ヒビ。

ダーリヤの拳は大気に多大な影響を与えていく。これは"能力"という類ではなく、ダーリヤが備えている身体能力があって成立している。


「!」


視覚からでは見えない拳に殴られたという情報であったが、回避できないほど巨大な拳に身体を持っていかれたと、アレクは受けた体験を瞬時に受け入れた。

血反吐が出るほどじゃない。デモンストレーションで来た攻撃だと、アレクは軽く見る。同時に対応する。


「邪魔だな」


ダーリヤは空を見上げる。ライラの"ピサロ"による雲が、2人に迫っていたからだった。本来ならば、それを妨げようなどできるわけがない。しかし、ダーリヤにはできる。天空に浮かぶ雲だろうと、この鍛え上げ研ぎ澄ませた肉体で地上からでも弾き飛ばす。



ガギイイィィッ



空へ向けた拳。その衝撃は天空に伸びていき、雲を揺らして弾いていく。



「はあぁぁっ!!」


さらには雲に働きをかけるほどの、蹴り。空を自在に操り、ライラも驚くほど天気が変わっていく。

"超人"としては異質ぶりの、研ぎ澄まされた光景。

パワー、テクニック、スピード、スタミナ。それらのMAXでも辿り着けるのか、生物という一個体の肉体でやっていいものか?


「で?」


アレクはこの間。白衣のポケットからタバコを2本取り出し、1本は完全に吸い終えていた。それが何を意味するか、このダーリヤには理解できていなかった。

確かに凄いんだなー。それがアレクの率直な感想であり、タバコの快楽で紛れる程度。



ゴロゴロゴロ……



ダーリヤの拳によって、空に生み出された雷雲の音。



バララララ……



徐々に強くなっていく雨。

悪天候そのものが、ダーリヤの力と言って良い。自然に勝てぬが、人間であり生物だ。それはダーリヤが人間という素体である理由からもできる回答。

タバコの火が雨で消える。


「ふーぅっ、タバコの火。消した罪は大きい。2つの警告をしてやる」

「警告?」


まだ理解はできない。ダーリヤが確かに強いというのは事実であり、琥珀博士が使うアンリマンユを持ってしっても、敵わないと言われる男なのだ。

しかし、今出会ったのは初めて出会った男。そして、秤にかけようがない人物。

同じ人間だということ。



「1つ、5秒前にお前は死んでた。その前にも死んでいた。つまり、お前は2回死んでいたということ」


それはアレクの慢心か、余裕か。

侵略者としてやってきたダーリヤ達。そんな状況なのだから、まず慢心はありえない。ガッカリだの、そーいった表情でもなかった。むしろ、憐れみか?


「もう1つの警告」


タバコを吸う余力があること。気持ちの切り替えを平然とする隙の多さ。

それはテメェにあると言っている。その理由が分からない知能の低さに呆れる。


「やっぱり、お前。死んだぜ」


アレクは"紅蓮燃-℃"を使用し、ダーリヤに向かって炎をぶっ放した。



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