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RELIS  作者: 孤独
劣等編
469/634

バードレイの姿と、朱里咲の憤り

夜弧にライラに、クォルヴァ。



そして、ダーリヤと悠然と対峙するアレク。



これにまだ待機中の春藍に、水羽がいる。



さらには………



「おい!朱里咲!どーする!ボーっとしてんな!」

「……!いかんなぁ。すまん、ロイ」



この男もいる。

なんというか、戦力がいかんせん充実し過ぎている。せっかくの侵略者と知って、久々に胸を躍らせるような展開にトキめいたのにこんな敵。こんな状況。


「くっそ、ライラ!雷を落として敵を倒せよ!感知できてねぇのか!?」



やられることじゃない。守ることじゃない。私が望むのは……



「せ」


朱里咲が自らの葛藤に迷いを呟こうとする時だった。

遮蔽物も多く、守るべき人も多い、敵の姿がまったく見えない。戦うこともできない。戦況は2人にとって苦しいもの。



「私が囮になります」

「あ!?」


逃げる住民、守るロイと朱里咲。その2人より後ろに立ち尽くした。

それはバードレイだった。


「撃たれているという事は、銃の類。逃げる人々に銃弾が当たればどこから来たのかは予想し辛い。しかし、」


そう言いながらも、バードレイにはある程度の敵のいる角度には目星を付けていた。そちらの方に自然と正面を向く。敵が覗いているだろう、スコープにキッチリと顔が納まるくらいに正確に。


「私がこれから倒れる方向、撃ち込まれた角度、向きから。敵の居所はある程度、推測できる」


その行動力は決死にしてはいささか軽い。あるいは、死なないと自信を持つのだろうか?



「ばっかやろ!!」


ロイにも朱里咲にも、彼女の行動力を抑える状況になかった。

かかしとなるような行為が相手にとって、楽しみはなく。度胸を買う行為になるのも当然。バードレイの行動の暴走にして、静止だ。

ロイが彼女に駆け出した時には遅い。



ドパアァァッ



バードレイの左胸を銃弾は貫いた。そのまま、ほぼ後ろへと倒れていくバードレイ。


「っ!」


ロイは彼女を抱こうと、一瞬の気持ちを。唇を噛み殺して抑えきった。叫ぶ!


「朱里咲!バードレイを守れ!救え!春藍のところへ運べ!!」

「!」


その願い。朱里咲自身が望むことじゃなかった。しかし、常に進んでいく現実の。それも朱里咲がもっとも体験している戦闘の中でだ。

やるべき行動を仕方なく、とった。


「分かった」


ロイの代わりに倒れるバードレイを介抱する。一方でロイは全速力かつ、



「させっかよ!!」


敵が放ち続ける銃弾を、進みながら叩き落としていく。これ以上、撃たれる人間を出さないための防御にして、前進。

銃弾が通る直線上をひたすらに進む、ロイ。



「っ!」


敵は大きく接近してくるロイに恐怖を感じる。

この時、強い心があるのなら。そのままロイを殺そうと銃弾を尽くしたことだろう。しかし、ロイのスピードと銃弾を捌く技術にその心が崩れかけた。なにより


「こそこそ人を狙ってる奴が、戦闘をできると思うなよ!!」


敵の心は弱くなった。恐怖に唆され、あろうことか選んだのはやってはいけない逃げ。まさか、ロイから逃げられる足を持つわけがないのに、逃亡を図る。


「見えればこっちのもんだよ」


ロイが敵を確実に視認した時。


「ひぃっ!やめっ」

「うるせぇ!!」


ほぼ、同じくらい。それこそ、銃が放たれたと同じくらいの瞬間だろう。

ロイのスピードはさらに高まり、逃げる敵の背を貫手で襲い掛かった。


絶突ぜっとつ!!」


その身体が兵器と言っていいだろう。”超人”の身体能力を現している一撃。敵の身体を確実に貫き通した右手。

敵に断末魔を出させる間も、隙も与えない瞬殺。


「ったく、手こずらせやがって……」



これで残り、3人。



「大分、朱里咲とバードレイから離れちまった」



ロイは殺した敵を腕から外して、戦況の確認をこの場で行う。

空を見上げる。ライラの雲が見えるが、ここには雲が近づいていなかったようだ。なんでだと、不満を出しながら立ち上ったものが見える。



「おっ」



上空に舞い上がるほどの、巨大な炎の龍。それを観ただけで、納得する。


「アレクが戦っているのか。なら俺も加勢に行くか」


しかし、その理由をまったく理解していない。心配というか、興味というものか。戦闘が好きなのはロイも変わらないのだろう。


「なーに、こんな奴等にてこずってんだ?」


いや、たぶんお前等の方がてこずっている気がするんだがな……。




◇   ◇



ライラの雷の裁き、索敵を目的とした小雨。それらを掻い潜って、フォーワールドの中心部まで侵入を果たした。強き者と、ただの幸運を携えた者がいた。



「くきゃきゃきゃ」



その1人。強き者は、ダーリヤに素質を見出され、短期間に目覚しい成長を遂げた勇浪が入る。すでに彼はこの中で暴れていた。



ガツガツガツガツ……



食器がどんどん重なっていく音、無くなっていく食料の山。

住民達がとても心配かつ、驚きを込めて勇浪に視線を送る。



「きゃうきゃうきゃう!!」


その姿、徐々に太っていく。胃のサイズを疑うほど、身体の体積を超えるほどの食べ物を喰らい尽くす。山の中やダーリヤといたところでも、味わった事のない舌を潤す旨さ。



「な、なんだあの男は……」

「人間なのか?」


尋常じゃない食欲に驚き、立ち尽くす住民達。彼が侵略者の1人であることを察するのにはそんなに時間は掛からなかったが、逃げる事も戦う事もできなかった。

発する言葉はどれも理解できないものだが、その姿はとても嬉しそうを完璧に現しているからだ。


「ちょっとちょっと、騒ぎを聞いて来たよ」

「すみません。通ります」



そんな勇浪の前にようやく。認めるべき敵がやってきたのである。



「!なに、こいつ……」

「きゅるるるる?」


勇浪と同じく、それほど背丈はないが。発する強さは同類のような物だろう。


「水羽ちゃん、あの人は」

「謡歌!下がってて。ここは僕が相手をする」


戦士というより獣。人の形をした魔物と見るべき相手。水羽は止まっている住民達の避難を指示せずに、勇浪に近づいていく。


「きゃっきゃっきゃっ」

「楽しいって言っているの?」


勇浪も。食事を止めて、さらに求める強者を喰らう狩りを行なおうとしていた。本能で水羽が強いことを理解した。

対峙する、獣とゾンビ。その戦いは戦闘というべきものではなく、じゃれ合いにも見えない奇想天外に他ならなかった。



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