侵略者達がボロボロ
ダーリヤ及び、侵略者達の思考パターンは残虐そのものである。
ある一定の水準より低い者を殺す。
その水準はこの侵略で生きられる者に限る。その分野など問わない。
生きられる者こそ生きられる世界を造ろうとするやり方。
「へはははは!斬らせろー!俺に斬らせろ!」
「うあああっ、逃げろーー!」
「止められねぇ!」
14人という少ない数でも1人1人の強さは突出している。そんじょそこらの戦士や狩人では止められない強者達。
そして、心なく残忍な侵略者達であること。
ガギイイィッ
「んんっ!?」
「これ以上、人を斬らせないわ」
侵略者である1人のイカれた剣士の剣を、あろうことか拳銃で受け止める。
避難者達や殿のようになってしまった戦士達が驚く止め方、
「や、夜弧さん!!」
「夜弧さんが来た!やった!」
「気をつけてください!そいつはかなりできる!」
正面からの戦いではロクに止められなかった相手を止めてみせた。
剣と拳銃が離れる。剣士は不敵に笑う。
「ふふふ、中々やるな。しかも、女かぁ。良い肉してるんだろうな、削ぎてぇな。その身体もその仮面もその表情も削ぎてぇ!」
強そうなのが出てきたと、剣士は楽しむ。自らが狩る側であると自尊する。
甘い考え。
「削ぎてぇぇっ!」
「さっき言ったでしょ」
夜弧は当然であるが、"トレパネーション"による身体強化を行なってから戦闘を望んでいる。剣士が踏み込み、斬りかかる動きを見切り、対応している。
「避けたか!?」
パァンッ
それだけではない。十分過ぎる時間と射撃ができる体勢を作っており、楽々と剣士の左足を撃ち抜く。
「くっ」
相手もまだそれでは倒れない。単なる傷に過ぎず、戦意は折れやしない。
拳銃を使いながら、剣の間合いに踏み入れたことを後悔させようと剣士の意地を張った。雄叫びとも、断末魔とも言える叫び。
剣が夜弧を襲い掛かるが、
「遅いわ」
今度は同時に2発を右腕に撃ち込み、手から剣を落とした。
「くっ、おおぉっ」
まさか自分が女に遅れをとるとは、ここまで何もできずに敗れるということも、襲ってくる敗北の屈辱。それを拒むようにまだ残していた予備の剣を取り出そうとしたが、夜弧が右手の拳銃を離してまで打ち込みたかったのは、
ポォンッ
「あっ?」
黒く歪んだ右手であった。
「身体がタフネスみたいだから、精神攻撃の方が効くでしょ?」
"トレパネーション"を発動させた右手で、剣士の脳内に刺激を与えて幻覚を見せ始める。存在していない痛覚を呼び覚ます。
「いぎゃあああぁぁ、あああぁぁぁっ!!」
今、剣士が持つ五感は強烈な痛みを発し続けた。神経が焼けるくらい、痛烈な信号を脳に送っていた。戦闘不能であり、再起不能のダメージ。
「あなたが殺した罰。そして、あなたが負けた罰よ」
夜弧。侵略者を1人、撃退。
強い。さすがに強い。
これならば、よほどの相手ではない限り、または戦いという間合いから外れた奇襲以外ならば夜弧達が遅れをとることはないだろう。
「住民達の避難はだいたいできた?」
『まだ完全には整っていない』
「そう。けど、しょうがないわね。避難の完了を待ったら、殺される人もいるわけだし。私が纏めて敵を倒すわ」
ポツポツ…………
そして、侵略者という奇襲にカウンターをかませるのが、防衛というもの。
ライラの雲が広がりながら、膨らんで発達していく。広い戦況を確認するための小雨を散らしていく。
雨の一粒にも魔力が込められており、ライラは位置情報を入手できる。
「全員に雷は落とさないけど」
ちなみに今のライラは上空にいる。神様のような立ち位置。人の命を奪えるとも言える立場にいると行って良い。
「私の目から見て、敵には容赦しないわ」
天空から任意で雨なり、雪なり、氷なり、雷なりを落とせるだけでも恐ろしい上に、その術者が雲に乗っているとなったらどう手をつければいいか。
知っても対処しきれない。それが襲われる恐怖の一つ。
「落雷!」
ドオオォォンッ
「ぎゃああぁぁっ……」
一撃も痛烈なものである。身体が焼かれるほどの電撃を浴び、地面に倒れても
「落雷!!」
2度、3度と。止めることなく、ライラの雷は落とされる。完全なる停止になるまで、攻撃は続く。
侵略者という脅威もあるし、並じゃ倒れないことも観察して分かったから容赦しない。無慈悲で理不尽過ぎる、雷の制裁によって侵略者の内8名がライラの手によって葬られた。
しかも、ライラ自身は魔力を消費したくらいでの勝利。
「アレクの方は……ま、あいつが負けるわけないからいいか」
ライラは雲の上から敵のチェックを行なう。侵略者の人数も調べる必要がある。
『ライラ、聴こえるー?』
「夜弧、何かしら」
通信を取り合える科学で、情報交換を行なっている。常にこいつのスイッチはONの状態である。
『今、私が倒した奴の記憶を調べたところによると。侵略者の人数は14人だそうよ。私が1人倒して、アレクさんが今1人と戦ってる』
「私が8人ほど倒したわ」
『じゃ、残りは4人ですね』
「頼りになるわね、夜弧」
『春藍様から言われたいです!』
本人に吐き出す意志がなかろうと、"トレパネーション"で記憶を引き出して覗けることで、敵の情報は大きく知れた。侵略者の数がもう4人となれば時間の問題。
アレクが今、交戦中。
ロイと朱里咲も、交戦中。
不明な人数は2人。
「私が強くないと思っているんでしょ?」
ダーリヤに逃げられてしまい、その回復力だけは知れたものの。攻撃力や破壊力という点では見劣りする。
クォルヴァもまた新たに侵略者を発見し、交戦中であった。
「そりゃ"人類存亡の切り札"ですよ。戦うためにではなく、回復や防衛向きに製造されてますよ」
『分かった分かった。凄いのは知っているから、いじけるな』
もう戦いながらぶつぶつと言うのだから、戦う相手からしたら気味が悪い独り言だと感じるだろう。内側に若が隠れていることなんて分かるはずもない。
「でも、私の強さも見せたいです!」
『信じてやるから!もう戻ろうぜ!ごめんな!』
「もっとご理解してください!」
再生力だけではない、クォルヴァの攻撃が今放たれる。
ズパアァァッ
敵の槍に刺さりながら、同化するように再生していく。力一杯に振り回そうが、クォルヴァは槍から離れることができない。
「ぐっ!」
「おおーっと、もう君は終わりだから」
槍の構造にも融合し、その柄を握っている敵の両手にも融合を施す。するとどうだ。
「っっ!ぐおおぉぉっ!?」
「ふふふ、相手が気絶するまで離れないよ」
『な、何が起きてんだ!?』
敵が一気に苦しみ始める。もがき、槍から手を離そうとしてもクォルヴァと融合されて、離れない。強力な団結によって離れられない。
「今、この槍によって喰らった痛み、ダメージを。神経の構造を書き換えて、相手にプレゼントしてるんだ。離そうとしても融合したからまず不可能」
『いっ』
「自ら放った攻撃をそのまま相手に返す。これが私の攻撃手段さ」
確かに飛び道具といった類がないから、攻撃手段は接近に限る。加えて、カウンターのような性質だから攻めには不向きなのは認める。
「普段ならこっちから殴ったり、相手から殴られたりで融合するんだけどね。すれば、まず負けないし」
『お前!やっぱりメチャクチャ強いんだな!!』
「ふふふ、認めてくれた?そりゃ桂やポセイドンと並ぶ管理人ですから」
クォルヴァが侵略者の1人を撃破し、残る侵略者はやはり4人!!