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RELIS  作者: 孤独
自惚編
461/634

夜弧の、春藍の、水羽の、

難題はいくつかある。

そもそも、管理社会よりも前からいる存在が最後の相手。

全てを滅ぼす"SDQ"よりも、遥か前に存在だけはしていたらしい。



「夜弧は本来、ここに存在していない人間だ」


管理人が人間を見た時、人間の番号が見えるという。決して、人間には見えず、感じることもできないものが見えるそうだ。

その番号は管理しやすいため、振られる数字である。これを持たない人間など存在しないのだが、夜弧にはそれがなかった。


「それができるのは、"無限牢"の中で生まれた命じゃないということだ。夜弧はなんらかの手段で管理社会から外されたところで生きている」

「正解だね。本来の管理人なら、抹殺対象だ」



彼女がまったく違うくらいならまだ良い。しかし、その中身がなんなのか。信頼をして良いのか?彼女が"時代の支配者"である可能性は、現時点ではかなり高い。



「彼女は想定している"時代の支配者"の条件をクリアしているとも言える」

「突然、消える可能性もある。……だが、俺はあいつがそんな奴じゃないと言い切りたい」

「なんで?」

「動機が分からんからだ。曖昧さ。俺も、"時代の支配者"とやらが望んでいることが掴めない」



当然であるが、クォルヴァも怪しい。桂の遺言とはいえ、管理人が彼1人だけとなり、真っ当にクォルヴァと対峙できる人間はいないだろう。しかし、疑いを始めたらキリがない。クォルヴァからしたら、アレクもまた同じように感じているかもしれない。ポセイドンの意志は漆黒で危険が漂う。

味方の味方は変わらず、味方。敵の敵も味方だ。



「彼女に関しては保留が良いよ。本当だとしても早々、動けるとは思えない。気付いているでしょ?」

「ライラが付きっきりでいることにか?」

「ライラだって、それなりに情報を持っているはずだよ。夜弧を仲間と思っているだろうしね」



夜弧との行動をよくしているライラ。夜弧には感情を操作する能力があるため、敵だとしたらかなり厄介であるが、よくライラは付き合っている。


「戦うにしても、まずは情報だろう。私達がこの世界をしっかりと立て直してからでも遅くはない」

「相手がただ黙っているとは思えないけどな」

「だろうね。でも、こっちはしないとやられちゃう。やるしかないでしょ?」



"時代の支配者"の情報を所持しているとしたら、


"SDQ"、"遺産もない図書館"、夜弧、ポセイドンの館、唯一の生き残り……



「辛気臭い話はここで終わりにしよう。明日、1時間後。全てが変わっちゃうわけでもないよ」

「だな。ともかく、俺の留守中。頼むぞ」

「うーん、そうか確かにか」

「?」


アレクが掴んだことであり、懸念している事項。それを突きつけられたクォルヴァは、自分とアレクがこのフォーワールドを完全に空けてしまうリスクを多大に感じた。絶対の力をお互いが理解している。



「いや、さっき言ったじゃん。君達に会わせたい人がいるって」

「ああ。言っていたな」

「私がみんなを連れて行こうと思ったけど、止めるよー。代表者決めて、引っ張って来てもらう案にするよ」


◇   ◇



「よーし!ここにするわ!」


ライラ達は食べたり、周りとの意見交換をしながら、盛況な洋服店に足を運んだ。


「ほ、本当に僕をカッコよくしてくれるの!?」


春藍はこれでも男だと、訴えるかのような声を出して4人に聞く。

ライラと夜弧は。春藍の身体の半分がリアの身体でできていることを知っているため、その台詞はオカシイと内心思っていた。


「だいたい、春藍はカッコイイ系の男じゃないし」

「うっ」

「ホント、お兄さんなのが不思議なくらい、少年顔です。私と同い年……」

「ううっ」

「カッコイイに拘る必要はないよ、お兄ちゃん」

「うううっ」

「僕の方が強くて、男だと思うよ!……って、今!僕、自分を男とか言っちゃった!?この服のせいだー!このやろー!」

「ぐはあぁっ!?」


最後は水羽の八つ当たり?のような攻撃を浴びて、物理的にもノックアウトする春藍。アレクのようなワイルドな男を夢見ていたが、


「春藍じゃ無理無理!」

「同感」


即刻、否定される。今からとかじゃなく、遺伝子的に無理だと4人の女性は言っているようだった。

女性用のファンシーな物が立ち並んでいるお店の中。


「って、僕の!女性用!?」

「別にいいじゃない。初めてじゃないでしょ?」

「そうでしたね……(って、ネセリアの記憶が言ってます)」

「お兄ちゃんに合いそうな服、結構あると思います」

「お前!女装癖があるのか!?なんて奴だ!変態過ぎるぞ!」

「違うよ!ないよ、そんなのー!」


あれ?ただの虐めじゃね?女が男を虐めるあれじゃね?


「僕はお前を逃がさない。変態は!これ以上好きにさせないぞ!」

「離してよ、水羽ちゃん……」


水羽がしっかりと春藍を掴んで、逃がさない。とても強い握力で動ける気がしない。良く思えば、春藍の腕をもぎ取った腕力を持っている"超人"

春藍が動けないことが決まっている中、ライラと夜弧、謡歌は服選びに夢中になる。本気で選んでいるのだろうか?耳を澄ます。


「やっぱり本格的にいきたいわよね?」

「パット使いましょう!これで乳が分かるんじゃないですか!?使ってみたい!」

「夜弧さん。なんで、試したい口調なんです?」



楽しそうな女性達の会話……



「そうだ!ここは私達の服にちなんで、ペアルックでどう?」

「ジャンケンで?」

「いいですね!お兄ちゃんと、ペアルック!絶対に譲れない!」



楽しそうな女性達の会話………



「やった勝った!じゃ、春藍の服はドレスで決まり!」

「なら、私達はデザインを選ぼうかしら?」

「それは夜弧さんに譲ります。あたしはお兄ちゃんを着付けします!やっぱり妹という家族がしないといけませんからね」



楽しそうな女性達の会話…………



盛り上がっていくたびに憂鬱になっていく春藍。自分にドレスを着せようとする、ライラ達だって変態だと思っている。しかし、お前には言われたくないと3人は思うどころか言い返すだろう。丁度良い罰ゲームだ。

そんなとき、気づく事があった。自分を抑える水羽の様子が少しおかしいことに、歯軋りみたいな音もする。水羽の方から春藍に問いかける。


「お前!変態のくせに、どうして謡歌にそこまで好かれるんだ!?」

「う~ん、わからないけど」

「ふ、ふざけるな!僕はお前みたいな軟弱そうな男が嫌いなんだ!というか、男が嫌いだ!」


うん、なんかそれは雰囲気で知ってる。


「理由があるはずだ!可愛いとかの理由だったら怒るぞ!男のくせに、女みたいな趣味を持っているのに、可愛いなんて許せるか!」

「女の趣味だって?僕は造ることが好きなだけだよ!」

「洋服作りは一般的な女の仕事だろ!?しかも、女の身体をジロジロ見ていたとしか思えないほど、正確にサイズを当てやがって!」


ギリギリと握力を強めていく水羽。春藍への嫉妬を今、ぶつけているようだ。


「だ、大丈夫だよ。僕達は兄妹だし。それに僕はアレクさんが好きで、ライラと夜弧が好きかな。次に」

「ほ、ほ、本当だろうな!お前、謡歌を襲わないだろうな!」

「するわけないじゃん」

「なんか爆弾発言をしてた気がするけど、なんだか忘れたよ!!」

「そう?」


そのことを知ると、水羽は手を離した。物凄く痛かったため、春藍はかなり安心した。したが、水羽が頬を膨らませていた。


「僕が謡歌を好きなままでいいか?」


なんだろう、その質問?


「?いいんじゃない?」

「女と女だぞ。兄は心配じゃないのか?」

「ううん。友達でも、なんでもいいけど。謡歌といてくれるなら嬉しいよ。もちろん、兄として」


その時、水羽は謡歌が兄のことをよく思っていることを知った気がした。こーゆうところが惹かれた。謡歌と同じ。


「お前、優しいんだな。寛容というか……」

「そうかな?僕は優しくするのが普通だと思うけど」


兄と妹が似るのは血液的なこともある。なるほどなるほど。と、水羽は軽く頷きをしながら


「よし、僕もお前を嫌いになったりしないぞ!僕の兄ぐらいにしてやる!」

「ありがとう……あれ?何か聞き逃したような?」


アメジリカって女性だけの異世界のはずだから、男はいないんじゃなかったっけ?


この水羽に感じた疑問が解けたのはしばらく後のことであり、また水羽自身も、春藍に対する気持ちに気付けたのもしばらく後なのである。


「じゃあ、この黒と赤のドレスで!」

「妖艶な感じね」

「お兄ちゃん!着付けするから着てー!」

「いや、凄く遠慮したい……」



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