女性を着せ替えして、ぐふふふふ……だったらいいのになぁ(泣)
本当だったら、自分で作ってみたかった。でも、時間はきっといくらでもある。お別れなんてまだないから
『このデザインで……このサイズの服はありますか?』
『あるよー。何々、彼女にプレゼントするのかい?』
『彼女って。女性に渡すのはそうなんですけど。あと、そこの月のデザインのセーターを……』
春藍もまた先に"祭"を楽しんでいた。だから、アレクも水羽もしばらく放置して、先に向かっていた。
「で、何をもらってきたのよ?」
「みんなの服だよ!」
料理や工芸品だけじゃなく、衣類なども当然、試着品としてここに出されていた。手芸なども好きな春藍にとっては、人が作った衣類にも当然興味を示した。
『何、あの男の子。先ほどからずっと、女性用コーナーでウロウロして、服をチェックしてますよ』
『試着品や無料販売品を良い事に買い漁ろうとしているのでは?』
『きっと変態だわ。女性の服を着て過ごそうとする変態だわ!』
そして、いくら真剣な表情で服を選んでいても。男と女の差は当然ある。無垢で可愛らしい顔をしていたから、女性店員も最初は女性だと思ってしまったが、服装が男っぽい格好で、ようやく気付く。
まぁ、今の春藍の身体はリアの体を半分以上も使用されているサイボーグ状態であるため、女性っぽくはある。むしろ、その事実を知った方が春藍がかなりのど変態であると納得してしまうか。
「やっぱり"祭"なだけあるし、色々な異世界の洋服の文化があって楽しめちゃうね」
「女の服を買い漁ってそれを言う?」
「え?」
春藍は首を傾げる。彼をよく知らない、水羽や朱里咲は少し引いた。
「な、なんだお前!お、お、お、女の服を欲しがるような変態だったのか!?そんな奴が謡歌の兄なんて許せない!」
「メカにして、そんな性癖まで持っているとは、いかんなぁ」
「え~?僕ってそんな変?ロイはどう思うの?」
「自然な流れで俺に振るな!でも、良い趣味だと思うぜ!」
この天然助平ぶりが少しでも解消されればいいのだが、っと、ライラや夜弧などは思っている。
でも、
「分かったわよ。私だってちょっと、気になるなー」
ライラが、春藍が重そうに持っている袋を一つ手に取ってあげる。
「ありがとう」
「で、私達にどんな……」
袋の中に手を入れ、乱暴にも何着か取り出してみる。白に、黒に、チェック柄に、パンダのような動物の絵柄の……
「…………」
「っ………」
「え?」
ここにいた女性陣がかなり引いてしまった。服を買ってくるとか、もらってくるとか。許せるというか、嬉しいという範囲内ならば肌を隠すとか、温かい服とか分かるんだけれど。
「色々とあったから、みんなの下着から揃えて見たよ!ライラにはこれが似合うと思っているんだ」
純粋に嬉しそうな顔をしながら、喜んで欲しいと訴えるような声なもんだ。そして、ライラには春藍から特別かつ、公然の面々で
「この下着と、ブラがきっと合うよ!」
自分に合うとか、付けて欲しいとか、そんな物を付ける前どころか、もらう前に見せられるという羞恥。ライラの顔が赤くなっていくのに対し、他の女性達は冷ややかな目を両者に送る。
「?あれ?」
「あ、あのね……」
ライラはプルプルと、右手を震わせながら。
「みんなの前で下着を見せるんじゃないわよ!!」
春藍の顔面に正面から一発、素早く上半身は引きながら、足を踏み込んで肘打ち!さらに身体を一回転させてからの回し蹴り!!
"超人"ではないが、身体能力の高さは匹敵とも思える。
「この変態がぁーー!」
「ぎゃああぁぁっ!!」
春藍の身体はサイボーグ化にあるため、打撃攻撃は通じにくいがされていないところもある。首から上はまだ完成形に至ってはいないため、集中して打撃を叩きこみ、踏みつけるライラ。
「春藍様が100%悪いです……」
夜弧も、春藍が持ってきてくれた衣類をチェックしてみると、下着、シャツ、ブラ、靴下とかまで揃えている始末だ。しかも、ピッタリとサイズが合いそうだった。もう少し、大きいブラを持って来てください。
「お兄ちゃん。私はどんな服を用意してくれたの?」
「謡歌の服もあるの!?」
「いや、水羽ちゃんのもきっとあるよ。私とサイズが近いのが2着ずつある」
ライラ、夜弧、謡歌、アルルエラといった付き合っていた時間を考えれば、そのサイズが分かるかもしれない。しかしながら、水羽と朱里咲の服のサイズをキッチリと揃えてしまうのはどうなんだろうか?
「こ、こいつ!まさか、一目でスリーサイズを見抜ける目を持ってしまったというのか!?それ、俺より変態な目で女を見てたということじゃないか?」
男として、激震が走ったロイ。
「いや、仮に春藍が変態という部類……に入っているとして。ロイもまた変態であることに代わりはないぞ」
アレクは冷静にロイも春藍と同類だと語る。多少の差はあるが、ロイも同じアホだ。
「いかんなぁ、女性の身体の秘密を探るような男の子は……。大層良い服でなければ満足はせんぞ」
「そうですわ。もらうのは当然として、中身がちゃんとしているかどうか気になりますね。殿方のセンスが問われます」
なんだかんだで春藍が持ってきた服をそれぞれ手にとって、確認し始める一同。タダでくれるならちゃんともらう。そして、
「ま、いいんじゃない?どっかに更衣室があれば着ようかな。せっかくの祭だし」
「気の変わり早いね、ライラ」
「だって、春藍をボコボコに殴ってこの点にはスッキリしたから。ねー、その方がいいんでしょ?」
「う、ううっ……僕は嬉しいけど。ライラは僕を殴り過ぎだよ」
ボロボロになって地面に転がっている春藍。
「お兄ちゃんがこれを着て欲しいなら、謡歌も着るから!」
「なっ!じゃあ、僕も着るぞ!というか、謡歌の着替えを手伝う!」
「私もたまにはオシャレでもするか」
「皆様が着るのなら私も着ましょうか」
「広東やNM_Hの分まであるなら気がとても回ってますね」
女性陣は春藍が選んでくれた服を持ち寄って、着替えをすることに決めた。なんでサイズがピッタリ合っているのか不思議であるが、そこは置いといてお礼として着てみる。次にこんな風にするのは、いつになるだろうか。
「なー、春藍。誰かに際どい感じの服を選んだか?」
「際どい?可愛いのを選んだけど」
「そうかそうか。ともかく、グッジョブだ。俺は目の保養をしたかったところだ」
一番楽しみにしているのはロイだろう。みんなが楽しむのなら、まずは見た目から楽しみたい。
「あ」
「どうした?」
「ロイ達の服も貰ってきたんだ!ライラ達も着てくるみたいだから、ロイも着てきなよ」
「お前、どうして俺達の服も用意してんだよ?そしてまさか……」
「?全部揃えているけど?」
こいつ。無自覚でやっているとしたら、幅広すぎるだろ。そして、
「アレクさん!どうですか、新調した白衣は!」
「良いな。随分と良い生地を使ってるな」
「だって、アレクさんの白衣だけは僕がオーダーメイドして気合から違いますから!素材の糸から厳選してます!」
ライラ達がこの場に良かっただろう。いくら師とはいえ、アレクだけ優遇し過ぎだろ。師弟で済ませていいのか?