強すぎる奴がいても、勝てる奴が相手だと強すぎる奴は負ける
時系列としてはやや先のことになる。
「琥珀の奴、遅いな。迷ったのか?」
ダーリヤは新たな拠点で勇浪など、14名の同志達と共に行動をしていた。資源の回収に向かっていた琥珀の帰りを待っていた。
とはいえ、待っていたという名の、侵略をする範囲が狭めているだけに過ぎなかった。
琥珀とアンリマンユがおらずとも、まずダーリヤ1人のみで一つの世界を滅ぼすだけの力量を誇っており、次いで、ロイに敗れたとしてもその実力は発展途上。
「きゃくくくっ」
マシな言葉を話すことはできないが、その強さはダーリヤの師事の元、急速に発展していった。
葬った骸を食い尽くしながら、
「勇浪。よくやったな」
「くるるるぅぅ」
ダーリヤに頭を撫でられると嬉しそうな顔をする勇浪。
素手のみで、世界にある命を全て握り潰した戦闘能力は本物である。
この戦闘集団が自由に異世界を飛び回っていたら、結果は違っていたかもしれない。
「ダーリヤ様!どうやら、北西の方で空間の亀裂が現れたようです!また、別の異世界と繋がります!」
「おおっ、そうか。手応えのある異世界だと良いな」
「きききききき」
彼等が滅ぼした異世界は数多く。
ダーリヤ達と繫がってしまう異世界はとても可哀想なことだろう。唯一例外であったのは、管理人ですら手に負えなかった"SDQ"が降り積もった、アーライアだけだろう。
そう思っている。そう思っていた。ダーリヤ達は。
バギイイィィッ
過去からある災害であるからこそ、解けなかった。気を取り直せることでもあった。しかし、彼等はどうしてか不運。そんな呪いでも掛けられているのか?
「繫がったーー!」
「さぁ、どんな異世界が待っている?」
冒険者のような気持ちで、やることは戦闘や戦争。命を弄ぶ連中への天罰となるのか?
『緊急速報です!西の方でまた別の異世界と繫がりました。警戒を強めてください!何名かの侵入も報告されています』
ダーリヤ達の情報を容易く得てしまった。そして、すぐさまに敷かれる防衛体勢。住民達への避難勧告。労働の休止。
この世界を支えている軍事力、あるいは武力を持つ戦士達の召喚。
「ただの繫がりじゃなさそうだな」
「侵入ということは侵略になるかもしれませんね」
「し、侵略!?まさか、そんな。お兄ちゃん、アレクさん、水羽まで出向くの!?」
「大丈夫!謡歌は僕が護るから!!」
春藍、アレク、水羽。それと、謡歌も。
「いかんなぁ、この持ち場はどうすれば良い?」
「朱里咲。あんた、魔物退治に飽きた顔してるな」
「そりゃそうだ。だって、私は強い敵を望んでいるのだから。侵入者とは良いウサ晴らしになりそうかもな」
「まー、好きにすりゃーいい」
ロイ、朱里咲。
「すぐに侵入者がいる近くの住民は避難させて、どんな奴等かも分からない」
「せっかく、順調に運営をしていたのに。なんてタイミングの悪い」
「とりあえず、私と若で様子を見に行きますよ」
『勝手に僕を入れるな!クォルヴァ!』
ライラ、夜弧、クォルヴァ。ついでに若。
そう。そして、彼等だけでなく。万なんて数じゃないほどの、人口を持っている。
フォーワールドの異世界にダーリヤ達は流れ着いてしまったのである。
ダーリヤに匹敵するだけの実力者が何人もいるという情報を、彼等はまったく知りえていない。慣れたかのように繫がった異世界に飛び込んで侵略を始めようとする。
防衛を軽々と突破していた事もあるが、今回は明らかに違っていた。
「さぁ、どんな異世界かな?」
「手応えがあればいいが」
自身満々にほとんどが個人行動。15名の精鋭とかけば凄いが、春藍達からすれば15名という数なのだろう。
そして、何よりもだ。何も知らずにここにやってきて、一番出くわしてはならないような奴に、ダーリヤは出会ってしまったのだ。おそらく、彼がかなりの不運の持ち主なのだろう。いや、それは彼以外の視点から見れば、なのかもしれない。
フォーワールドに侵入して、ものの3分で出会ってしまった同格の匂い。そして、いなくなったはずの管理人がそこにいる不可思議なこと。
「どーいうことだ?管理人は全て消えたと聞いたが?」
「んん?まさか、何も知らずにここに来たのかな?っていうか、ここを知らないで踏み入れたわけ?」
その不可思議。数秒で消える。なぜなら、相手が発する匂いが強烈に感情を揺らす。
「人類の進歩にたる逸材とみた。さすがは管理人か」
「君、態度が悪いな」
戦意が込み上げてくる。自分が誰を相手にしているのか、理解するよりもその根本は朱里咲と並ぶ戦闘を望む者。
「何か勘違いしてない?」
『いや、クォルヴァ待て!あいつの雰囲気は、パイスーやあの緑煙の魔物と似ているんだけど!僕達が戦うのか!?』
「君もだよ、若」
ただ。彼女やパイスーとの違いとしては、戦いの中を喜ぶ2人に対して。
認め合うことを喜びとするダーリヤ。
この超越し切っている自分が、人類からかけ離れていることに失望しており、自ら行なっている異世界への攻撃は彼なりの選別であった。劣る存在は共にいるだけで心に邪悪が浮かび上がる。認め合えないことは分かり合えないという答えを出して、生きている男である。
その考えは自ら超越者でなければ良かった考えであった。
ダーリヤは勇浪以来の出会い。彼との違いをクォルヴァに上げるとすれば、クォルヴァの限界はこの位置であること。成長性を感じられない、致し方ない管理人としての性能。強さが完成されている。
「勘違い?」
「君くらいなら倒せるよ」
見ただけでその強さを知りえる両者。では、その知れた範囲はどの程度のものか。
口だけではないのは分かっているが、口で終わってしまうこともありえるほどの強者共。ダーリヤは戦闘体勢に入り、腰を低く落として、拳を握った。
一方でクォルヴァは、のらりくらりとふらふら動きながらダーリヤと戦う姿勢を見せる。一見すればふざけているとも見えるが、クォルヴァが余裕を出しているに他ならない。彼からすれば調子に乗った人間ぐらいにしか思ってはいない。
プライドを傷つけるの行動であったが、ダーリヤには響かない。なぜなら、相手に合わせることはない。大勢いる人類の脆さに失望している男なのだから
「数、強さ、勝利…………貴様等にそれらがあったとしても」
ダーリヤは…………。
「この俺を超える事はできんぞ」
その一瞬で始まる戦闘。ダーリヤが本気を放つ言葉に
「そーなんだ?」
クォルヴァの挑発及び、見下しが。2人がかけ離れていることを示している。