表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
RELIS  作者: 孤独
移民編
435/634

移民達の関心①

ボロボロな帰還を果たした春藍達。なんとか"アルテマ鉱石"を大量に手にしたが、ぶっちゃけると渡されただけである。



「いやぁ、酷いね」



全員一命を取り留めているが、重傷と重体者ばかり。治療に当たるクォルヴァも思わず、苦笑いを浮かべるほどであった。

春藍、ライラ、夜弧、謡歌、アルルエラの五人には強烈な精神攻撃による汚染を浴びていた。今はほぼ正常な精神状態だと本人と検査から現れたとしても、心の判断というのは難しいのだ。

後々の選択を変えてしまうもの。性格を壊されること。



「精神治療に完璧はないんだがな」



クォルヴァの治療能力は人類の救済に当たり、様々なものに対しての治療能力を備え付けられている。精神治療も可能であった。(本人は得意ではない)

精神汚染された対象者の肉体と"同化"し、一度、身体をクォルヴァが支配する。その肯定中に、自分と対象者以外から浴びた魔力が体内に残っていれば、クォルヴァの能力で体外へと弾き出す。

この世の黒さが表された、どす黒い煙が身体の外へと流れ出る。



「ここまでの精神攻撃を懸けられる人間がいるなんてね」



あくまでこの治療はすでに掛かった状態以降に対して、有効である。

つまり、一部ではあるが。性格に変化が生じていることも全員が承知しなければいけない。深く考えるほど、どんな性格だったか歪んでいくだろう。



「とはいえ、終わったよ!」



藺兆紗から浴びた精神攻撃の全てを取り除いたクォルヴァ。

多くの人間を管理してきていたが、これほどの能力者がいるとはにわかに信じられない。




「ふーむっ……」


一方で、春藍達と共にやってきたアメジリカの住民。それが全員強くて戦う女性と来たら、優男共の目も変わってくるもの。

しかしながら、大半は男に興味がない連中である。そんな中、1人の男を見つめている朱里咲の姿があった。



「君、タバコは止めた方が良い。せっかくの強さが損なわれる」

「あ?さっきからなんなんだ?」


春藍の無事の帰還にホッとし一服しているアレクに、金言のようで失言を発する朱里咲であった。


「アレクくんと言ったか?君とは一度、真剣な殺し合いをしたいな」

「ふざけたこと言ってんな。俺は暇じゃねぇーんだ」

「ちぇーっ、いかんなぁ」


アレクもまた、朱里咲のことを強く警戒した目を向けていた。

お互い感じることは戦ったら、どっちが勝つかわかんねぇ。しかし、ともかく。


俺の方が、強い。


私の方が、強い。



「こらーー!お前等、なに見つめ合ってんだ!!俺は許さんぞ!」

「いや、してねぇよ」

「色恋沙汰ではないんだがな」


そんなことは分かっているが、なんつーか納得いかんのだ。ロイにとってはやはりこう。なんなんこれ?


「伝説の女性だけの異世界、アメジリカになんで春藍は行っているんだよ!!しかも、移民としてここに彼女達が来てくれるなんて!!どーゆう運を持ってやがるんだ!?くそーー!」

「……ロイとか言ったか。一体なんのことを言っている?」

「さぁな?」


妬み&妬み。

女性パーティーを率いて異世界に行ってきたら、その異世界の女性全員を移民として連れて来てしまう、異様な女性を引き寄せる強運。


「俺がそーゆう役でもいいじゃねぇか!」

「無理だろう。お前は損するキャラだと思う」

「ちくしょー!」


なんだかんだ漂うネタキャラ臭ではあるが、発言とは裏腹に中に秘める成長の予感。アレクとは違い、まだ完成に至っていない素質。


「ロイ君との死闘も楽しそうだな。血、湧き、肉、踊る」

「随分な戦闘狂が来たもんだな。あの野郎を思い出す」

「うおーー!俺もなんか素敵な出会いがしてぇーー!」


朱里咲は新たな出会いに闘志を燃やし。

アレクは新たな人材に警戒感を抱き。

ロイは新たな運命を求めた。



「むぅ~~……」

「なんだい。水羽ちゃんと言ったかな?」

「また謡歌の中に入るつもりかぁぁ!?」

「そうしないと治療できないんだ。君にだってしただろう?」


一方で水野水羽は、管理人であるクォルヴァと対峙していた。謡歌の治療を行おうとするクォルヴァを強く警戒していた。

当然といえば、当然か。体内を乗っ取ることによる治療をやられた水羽だからこそだ。


「もうさせないぞ!謡歌に危害を与える奴は僕が倒す!」

「勘弁してよ。私は戦う気ないんだけど?」


治療の仕方が悪い。

手術という光景を生で目撃したら、医者以外は不安を感じるのと同じだろう。クォルヴァは立ちはだかる水羽をどうやって説得すればいいか、思案する。そんな時に声を掛けてきた人物が一人。


「クォルヴァ殿。少し急かして宜しいですかな?」

「ヒュールさん」

「誰!?そこのおじさん!」


ヒュールがその場にやってきて、水羽の機嫌の悪さをあっさりと和ますことを言ってのける。


「謡歌は必要な人材なのですぞ。早急な治療をお願いするのですぞ」

「だってさ、水羽ちゃん。医者じゃないが、私は管理人。君の心を踏み弄るような行為はしないさ」



まだ謡歌が眠っていること。意識が戻っていないこと。


「私は謡歌の先生をしていたのですぞ。だから、君以上に謡歌を知っており、謡歌の兄よりも知っておるのですぞ」



何よりも謡歌の回復を望んでいるヒュールの言葉。得体の知れない存在はお互い同じ。水羽は謡歌に近づくクォルヴァを止めようとするも、ヒュールが制した。殴りそうになる。


「君の拳をモロに受ければ、私は死にますぞ」

「………ホントに、あんたは謡歌の先生なんだよね?」

「無論ですぞ」


治療をするのはクォルヴァだ。水羽と同じなのは分かっている。

ヒュールができることは治療をさせるための環境作りのみ。説得する言葉のみ。


「100%を尽くすけどね」

「真剣であれば結果もついてくるものですぞ」


クォルヴァは自分の範囲内でしか行動できないと、しかと2人に伝えておく。多大な影響を与えられているため、性格や記憶に乱れが出るのは当然だと思って欲しいと伝える。

そう伝える。とても大切な事だ。伝え方で気持ちは動く。心が変わる。


「これからどうなる?」


現在、およそ200以上の異世界の住民達がこのフォーワールドに集まり始めていた。彼等を取りまとめているのは、管理人であるクォルヴァだという表向きの名であるが、実際はヒュールとアレクがクォルヴァの下を支えているどころか、2人の思想と行動が色濃く反映されていると言って良い。


仕方ない。なぜなら、この異世界は彼等の場所なのだから。



「どーなっているんだ!?」

「これから未来はどうなるのです!?」


避難という言葉を使えば、助かったと思うだろう。

しかし、移民という立場であれば避難とは一時的。彼等が寝食に居住まで手にすれば、住民に変わる。故郷に帰ることは難しいが、これからのビジョンをより明かして欲しいという声が高まった。

支配の色を知りたいのだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ