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RELIS  作者: 孤独
防衛編
431/634

想定外が連続


ボチャァンッ




"港未来"よこはま。そこはもう水だらけの異世界となった。

海洋生物にとってはとても楽園だろうが、人間達にとってはそうはいかない。

しかし、人間とは違うのだから。彼等が争いという結論を出しているのもおかしくはない。





ドバアアァァァァ



「おいおいおい。今度は滝か?」



舞台は再び、フォーワールド。突然、襲い掛かった洪水を対処したクォルヴァとアレクであったが、その量はまだまだ増えていく。水が浸入してくる量も脅威だが、箇所もまた多すぎる。



「キリがないって感じかな?」


クォルヴァが止められる範囲に限りがあり、アレクにも水を一気に蒸発させられる回数に限りがある。長引くほど不利なのは分かっている。そして、長引けば被害が増す。



「どーしよっか?アレクくん!」

「この水が"ザクロ水"ってことは、欲しいのが転がり込んでラッキーだったが。位置が悪ぃ……か」


人間が多く住んでいるところに、こんな危ない代物を管理させることは考えになかったが。向こうから来ちまったのはしょうがない。



「クォルヴァ!ここに海を造るぞ!!」



海を造るという計画。人間らしい発想ではない。せめて、ダムが良いだろう。



「海ねぇ。……それも仕方ないよね」



フォーワールドは自然が不足しており、土地の大半が平面でできている。海を造るといったが、平面の土地に大量の水が流れ込めばほとんどが浸水する。

かといって、ここから水をせき止める工事を始めても遅く、それよりも水は早く増えていくだろう。



「土地をぶっ壊す」



春藍がいない(いても、止められない規模でもあるが)ことを考えれば、土地を破壊して造るしかなかった。地盤を大きく下げようという考え。

しかし、問題は当然ある。


「どうやって、もう水に沈んだ土地に穴を空ける?この水の量と勢いは待ってくれないよ?」


破壊は簡単であるが、地盤を沈めるとなると大掛かりな用意が必要となる。技術的には可能であるが、時間と人材が足りていないだろう。

発想は買うが現実的ではない。


「大丈夫だ!策はある!!」

「え?」

「若にライラの部屋から、"例の物"を盗って来いと指示している」

「女性の部屋からの物取りを指示するんだね。若くんも不憫だね」




そんな若はライラの部屋に侵入して、アレクに言われた物を探していた。



「くそー!どこにあんだよ!まさか持ち出したのか!?」


綺麗に整頓されていたライラの部屋がみるみる散らかっていく。彼女の衣類も勝手に取り出される。帰ってきたら、完璧に説教される。

アレクの記憶が正しければ、持ち帰って来ていたらしい。



ドガラァッ


「おっ!これか!?」



持ち帰ったはいいが、これを扱える仲間がいない。ファンタジー物にしては珍しく、剣を使う連中があまりいないんだよね。

ライラの部屋から見つけた剣。いや、刀か……



「桂の愛刀!"一刀必滅"!こいつで間違いねぇな!!」



"科学"ではなく"超人"の力を宿す刀、"一刀必滅"。管理人ナンバー030の存在が刀となったものである。あらゆる物を破壊する能力であり、制御することは難しい。ライラが桂の遺品ということで預かっていた。



「なるほど、桂の"一刀必滅"を使って、無理矢理、土地を壊すんだね」

「防波堤とかはしっかり建造するがな」

「ひとまず、土地を変えなきゃ話にならない。"一刀必滅"が届き次第、私が水中に入って土地を削ろう。私なら溺死になることはないから」



とはいえ、クォルヴァが防衛に回れなくなること。


「人の数が必要になってくるな」

「しばしの辛抱だね」


現状、2人でなんとか、流れ込んでくる水を塞き止めている状況だ。

アレク1人ではとてもじゃないが、防ぎきれない。決壊が始まってから1時間経ち、ようやく大勢の作業員と資源、重機機材が集まり始めた。



「うおっ、水がこんなに……本当に止まっているのか?」

「あっちなんか水がドンドン流れ出ている。このままじゃ、……この異世界は浸水するんじゃないか!?」



移民達も含めて、4千人にも及ぶ人間が集結した。急ピッチの塞き止め作業を行なうための人員だ。また、その後ろには円滑かつ効率よく運搬が行なえるよう、山佐達が抱える輸送業者が並んでいた。


「見て分かる通り。この波を止めなきゃ、フォーワールド全体に波が押し寄せる、スピードも正確性も問われる」


クォルヴァは若の身体を借り、半永久的に動けるだけの準備も整った。腰には"一刀必滅"がぶらさがっている。

そして、アレクはどのような形で防波堤を製造するか、決断していた。資料を作る余裕などない。的確に人員を配置し、口のみ指示をこなしてもらうしかない。


「もっと広がれ!土地や家を守ることは考えるな!自分達の命を優先しろ!」


フォーワールドの南側を大半、水にすることにした。それはこの地域に住んでいる人達にとっては、糾弾するなというのが無理な話。しかし、アレクはその判断を自ら決めた。ヒュールでもなく、クォルヴァでもなく、彼がこの判断を決定したこと。


「おーっし!それで良い!7分後にクォルヴァの能力を解除する!!今から"壁"を作れ!」


アレクは急ピッチに造られた高台の上に立っていた。波が来れば壊れてしまうほど脆い。この上で全体の指示と波を食い止める役割がアレク。

同時に、津波が押し寄せる前にやっておかなければならないこと。



「すまねぇ」


スタートが同時ならば確実に範囲とスピード、パワーで津波が勝つ。

しかし、下準備ができるのはアレク側。"紅蓮燃-℃"を土地に向けて放ったのだ。津波が来るよりも前に、町が焼き尽くされた。


「守りきれるもんは決めてんだ。このフォーワールドは守る」


アレクの炎がかけられた範囲が、津波被害を食い止める最小限の範囲の設定。それは他人から見れば広すぎるものだが、ここにいる者達にとってはそれが本当に狭量だと感服する。

"ザクロ水"は一定の温度でなければ増加することはない。アレクの炎ならば小さくても、多くの水を蒸発させられる。



「あと3分」



準備は整っている。アレクは土地を焼くだけではなく、クォルヴァの能力が解除される数秒前に"紅蓮燃-℃"を起動させて、津波の第一陣を焼き尽くす。第二陣を事前に土地を焼きつくした炎で足止め、……それ以降は状況次第。


「さーって、覚悟はできたよね?若」

『ホントに大丈夫なんだよな!?僕の身体だからな!』

「大丈夫。水の質量をまともに浴びても、死ぬことはない。痛みもあまり感じないよ」

『ホントだな!?痛いのは嫌いだから!』

「ああ、それは私だけの話だけど」

『なんだとーーー!?』

「嘘だよ、冗談冗談。一心同体なんだから平気さ」


土地を破壊するクォルヴァと若。一気に津波の中へと飛び込んで、土地を"一刀必滅"で穴を空けまくる。この刀は手加減が難しいため、とにかく、掘れとの指示を受けている。


「さて……?」

『どうした』



作戦決行まで、残り1分と切った時だった。



バギイイィィッ



新たな空間の亀裂が入った。


「ちょっ!」

『は!?』


その亀裂の大きさは予想していた水量を超える量が来ると、断定できた。それを最も近場で見ていたクォルヴァと若には理解できる。これはもう一瞬で自分達に襲い掛かる。



「アレク!!始めろぉぉぉっ!!!」


無論、クォルヴァが大声で叫ぶ前に。アレクだってこの現実を目の当たりにしている。想定外のことが本当に起こる。



ドバアアアアアァァァァッッ



新たに現れた空間から大量の水が噴出し、津波と化してクォルヴァを飲み込んだ。だが、それよりも早く。自身の能力を解除し、止めていた周囲の水を動かしていた。つまり、クォルヴァは自分を守るための能力を使えたこと。



ボコボコボコ



『平時』



クォルヴァは若の肉体を借りており、身体能力は若ほどのパワーしかない。しかし、若の肉体は津波の直撃を浴びても壊れることも、溺死することもなく、勢いに勝れないが、負けることもない。

若の呼吸が止まった。しかし、それでも生存している。



「如何なる力でも今の私達はこの状態が保たれる」

『津波直撃だったが、無傷かよ。なんつー防御性能だ。やっぱり、桂やポセイドンクラスの実力者なんだな』

「防御ではないです」

『へ?』

「今の身体、すでに100回は死んでいます。しかし、臨死の状態から超高速で蘇っているだけ。私は防御より回復が専門なのです」

『人の身体を勝手に何百回も殺してんのかよ!?』



押し寄せた津波を乗り切ってから、クォルヴァは地面に向かって"一刀必滅"を突き刺すのであった。超有能なドリルみたいな扱いになるとは、桂は思ってもみなかっただろう。



ドゴオオォォッ



一刺しで広範囲の土地が消滅する。さらにはその周囲の水までも打ち消す。まず、クォルヴァ達の始まり方は順調に近かった。




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