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RELIS  作者: 孤独
"金の城下街"ゴールゥン編
43/634

囚われちゃった2人と共闘女子



「あなたって科学でできているんですか?凄く興味がありますー」

「ちょ、何をしているのよ、ネセリア!こいつは危ないわよ!!"ポリス"に突き出していいわ!」

「びびびばびあびあな(勝手に触らないで!おっぱい魔女!!)」


放送がまだ続いているのにも関わらず、ネセリアは目の前に転がっているリアの体に触れて、修理のような物を施した。


「ワタクシに離れなさい!!…………!?って」

「あー良かった!ちゃんと言語状態が良くなったね。次は足を直すよー」

「ネ、ネセリア!こいつを治療してるの!?」

「ううん、修理してあげてるの」

「意味は同じでしょ!!止めなさいって!!」



ライラは無理矢理、ネセリアをはがそうとしたが、



「でも、さっきの映像の中に春藍とこの方のお仲間がいらしてましたよ。たぶん呼んでましたし、それなら目的が同じで、協力する事ができるんじゃないでしょうか?」

「きょ、協力!?」

「ぐっ……あ、今度は足まで」

「だって、この……リアさんは凄く強いじゃないですか。ライラみたいに強いなら、きっと心強いですよ」



バヂィィンッ


8分ほどの修理でリアは、ライラから浴びた雷のダメージが0になった。春藍やアレクには劣るも、ネセリアもフォーワールドで働いていた製造員。リアを短時間で修復してしまった。立ち上がり、両手足の感覚を再度確かめるリア。本当に直っている事を確認し、頭を下げて



「た、助かりましたわ」

「どーいたしまして!」

「~~……ネセリア!考えてやりなさいよ!ホントに!」


少しハラハラしているライラ。春藍と似た優しさを持っているネセリアとの出会いに戸惑ったリア。状況は春藍が捕まっているので、助けに行こうと思っていて、優しく微笑んでいるネセリア。


「あー……ま。ネセリアの言うとおりね。アレクを探すより春藍を救出する方が先みたい」

「仕方ないですわ。春藍くんを助けるまでは協力致しましょう。インティが傍にいれば、多少大丈夫だとは思いますけどね」



顔を合わせず、ライラとリアは握手をして。一時休戦。その光景にネセリアは仲がよくなったねと、暢気な事を思っていた。



◇     ◇




一方、檻に囚われた春藍とインティ。浮かんでいる大きな檻が移動し始め、どうやら管理人が拠点としている世界の中心部に運ばれているようだ。



「うーん、一体何が起きたんだろー」

「何がですか?」



囚われたというのに両者共に緊張感がない。インティにはどうして素早い自分が、檻に気付かず捕まったか考えていた。



「普通、こんな大きな檻が目の前に見えたら避けるよね。なんで避ける事も、確認する事もできずに檻に入れられたのか不思議で。あー、少し悔しいなー!」

「その割に大丈夫という顔を出してますよね?」

「だってリアがいるんだもん!大丈夫!!それにやばかったら、パイスーや若とか呼ぶと思うから。…………あ、パイスーや若ってのは黒リリスの一団の団長と副団長(笑)の事」

「パイスーに……若……」



2人の名前をインティが発した時、春藍はキョトンとした顔になって、尋ねる。



「もしかして、パイスーというのは。あの……魔術を使う人で、獅子を作る…………オールバックの男性の方ですか?」

「そうだけど、知っているの?春藍くん」

「は、はい。イビリィアという異世界で、パイスーさんに助けられたので」

「へーーー!パイスーに助けられるなんて、それって相当気に入られてると思うねー。パイスーは人を見る力がある。ウチやリア、ザラマ、梁河なんかもパイスーがちゃんと見て、黒リリスの一団に入れたんだ。リアにも気に入られてるし、春藍くんがウチの仲間になったら楽しいかもね」



リアとは違い大雑把な喜びを見せるインティ。



「インティとリアはパイスーの仲間なんだ」


春藍の頭にはもやもやが引っかかっているようだった。

パイスーとはまたどこかで出会いたいと思っていた。そんな中、彼と仲間という人物が今、目の前にいる。どうして自分にそのパイスーが気にかかるかは、パイスーに会わないと解決がしない気がした。彼女達を通したら、きっと早く出会えるんじゃないか?



「インティ。そのパイスーやリアもいる。"黒リリスの一団"ってどーゆう組織なの?」

「ウチ達の事?目的はそんな確固たる物はないと思うけど」


インティは春藍の質問にぱーぱーと答える。自分もその中には入っているが、あくまでいるというだけに過ぎないと思っている。



「"黒リリスの一団"の目的って、いる人達それぞれの意志がちゃんとあるけれど。みんなが共通しているのは"管理人"からの独立ね」

「"管理人"からの独立?」

「だって、ウチ達がどうして、その世界それぞれに適応しなきゃいけないの?下を見てご覧よ、春藍くん」


インティと一緒に上空に浮かぶ檻の中、見下ろせば先ほどの放送と映像でみんなが急いで自宅なり、建物に逃げ込んでいた。警報が鳴ったらそれに従うというのは、誰もが習った事だろう。

けれど、それよりもインティは別の視点で春藍に言っていた。


「この世界って、音楽が栄えている世界だよね」

「うん」

「ここの住民にはきっと、歌手になりたい、ピアニストになりたいって人達がいると思う。けど、それ以外の希望だと持っている人だっていると思う」

「それ以外の希望…………」

「悲しく思うなー。別の出来事に、例えば運動ができる事を幸福に思えたり、絵を描いて売る事で生活ができたり。今。変な見方かもしれないけれど、リアやウチ達のような異世界人を捕まえようとする警察も悪くないかも」



満足をしている人達もきっといる。世界で決められた出来事をこなし、わずかに与えられた平穏な休日に希望を描くだろうね。

でも、それはいつまで続くかね?希望はいつか失う物、絶望はいつか逃げる物。その内気付くんだろう。世界のルールを守る事で自分が手一杯になって、希望を手放して自分を救う事。



「希望を叶えてなんてのは望んでいないけれど、この世界みたいに音楽ができなきゃ救われない!という"人生"は味わいたくないなぁ。そうでしょ?ウチの言ってる事、正しいでしょ?」

「…………うーーん」

「難しいかもね。そもそも、人々が持っている希望なんてそれぞれだから。長くデカイ希望もあれば、短く今を見る希望もある……ふふ」



インティは自分達のやっている行為は決して、世界中の人達を救うような義賊ではない事を知っている。それを正義と思って笑ってしまう。みんなも思っているだろう?



「黒リリスの一団のみんなは、"管理人"が嫌いなだけだよ。よく言えば自由主義。悪く言えば安定を作っている独裁者を嫌うだけの存在」

「……………」

「力や意志があるから反抗している悪党だと思うな」



"黒リリスの一団"のあやふやな意志と、ハッキリと明確になっている意志がある。仲間意識はあるだろう。"管理人"という連中の数の多さ、異世界を自在に移動できる事などを考えれば、誰一人として欠けたら大損害だ。大いに涙を流すだろう。

だが、それ以外の意志は薄くなっている。特にインティが言ったように、"管理人"を消したその先は独裁者こそいないが、安定を欠いた世界になるのだ。その中の世界で起こりうる問題を解決するのは"黒リリスの一団"の目的ではない。

インティはこれが悪だと分かった上で行動している。だが、リアはきっとこれが善だと考えているだろう。彼女にとっては"管理人"というゴミクズは死んで、気分が良いのだ。自分の悲劇を唯一、絶対に向けられる相手である。結論、彼女にとっては彼女が中心となればいいんだ。

パイスーはどうだろうか?インティにもそこまでは分からないろう。



「あの、インティには」

「?」

「自由って言葉の意味が分かる?」



春藍にはインティから聞いた限り。パイスーが団長となって行動している"黒リリスの一団"の行動とやらは、自分達の考えで相手側の考えを知らない感じがした。自分の世界を含め、5つの世界を回った事でそれなりにであるが。

安定や生きる事だけにも喜びはあったんだと思えるんだ。欲深くなくても、幸せを感じられる事は多いんだと思っている。



「自由か……。ウチは自由が自由って意味だよ」

「結局、インティは意味が分からないんだね」

「ただ、以前。パイスーがそーゆう事を喋っていたけど、自由ってのは我が道を突き進む事、とても困難でも、とても悔しくても、その先に自分の心から望んだ物を手に入れれば良いって、長く喋っていたよ」

「わ、我が道を突き進む事…………」



2人が喋っている間に、檻は世界の中心部へと運ばれていた。この中心部は特殊なバリアが張られており、ちょっとやそっとの攻撃では突破できない頑強な物であった。そのバリアをわずかに解除して中に入れられた春藍達。



「わー、一体どこまで連れてかれるかな。管理人の拠点まで来ちゃった」

「僕達はどうなるんでしょうか?」

「リアがきっと助けてくれるよー。心配しないで良いよ」



とにかく、檻から出ないと何もできそうにない春藍とインティ。外からの救出を期待して待っている二人。



◇     ◇



そして、その2人を追っている3人の女子。



「これが乗り物とはファンタジーな物ですわ。インティの揺られながら運ばれるより、少しは楽ですが、遅すぎやしませんか?」

「知らないわよ!!楽に移動できるだけありがたく思いなさい!あんた、超重いんだから!!」

「高潔なワタクシに向かって重いなどという、卑劣な言葉を発するクラゲが!!」



ライラの雲に乗って、3人は春藍達を追いかける。中心部に向かえば管理人の拠点がある。"ポリス"の命令なんて超無視している。リア曰く、インティが傍にいれば早々死なない。まぁ、黙って捕まったらそれこそ奴等の思う壺だ。

さっさと行って助けに行く。向かうところも、ライラには好都合だ。



「とはいえ、あたし達がそこに入るにはあの見えない壁みたいのを突破しなきゃいけないんだけど、やっちゃう?」



春藍達が管理人の拠点に入ってから、30分後にここに到着したライラ達。雲からバリアの頑強さ、地上に待機し迎撃しようとしてる"ポリス"達の状態も確認したライラ。



ドルルルゥゥゥ



「!」

「台風でぶっ飛ばそ」



ライラの体から泡のように飛ばされる小さな雲が、上空で発達しながら積乱雲の束を作り出す。世界全体の気候をも変化させ始め、雲を引き寄せる。集まった雲は渦巻きながら、雨を降らし、風を呼び、雷を伴った。



「"台風躍起”」



ガラジャアァァンンッ



10分ほどの大型台風を再現するライラの"台風躍起"。バリアで包まれる管理人の拠点に襲い掛かる。周囲にいる"ポリス"を堂々と巻き込み、立てないほどの剛風と貫くような雨粒、地面を切り裂く雷。雑魚を一掃しているが、



「あ、あれ?」

「肝心のバリアを突破できてないですわ!馬鹿クラゲが!!雑魚を倒しても意味はないのですわ!さらにワタクシ達にも雨を降らせるなんて!真面目にやってますの!?」

「あ、あたしは真面目にやってるわよ!突破できるって思ってやったもん!」



バリアを突破できず、続いてリアが大荒れの天気の中。

両手を祈るように握り、腕を左回りにして自分の体を変体させる。ネセリアはその変化に、すごーいという描写でうっとりとしていた。両腕が巨大な大砲となり、この豪雨の音の中、リアの鼓動が大きくなって、ライラ達に聴こえるほどの音と熱が伝わる。右目の近くも変型し、スコープが作り出される。



心の奥底(バィブ・)で突き抜(マァコ・)ける一線(クライシス)



動力が流され、スイッチも押した。次の瞬間。リアの大砲から現れたのは弾ではなく、白く濁った光だった。真っ直ぐと伸びていき、バリアと大激突。



メギイィメギイィッ



「!ヒビが入ったわ!!」

「わー、凄く綺麗で高密度なビームです!」



バリアが破裂しそうな音とヒビを作り出すリアの一撃。……だが、……



フヒュゥンッ



エネルギー切れで光が消えてしまい、さらにバリアが自動修復されていく。



「な、なにやってんのよ!?」

「う、五月蝿いわね!ヒビを入れたワタクシを崇めなさい!あなたと戦ったせいで、少しエネルギーを使ってしまったのよ!」

「役に立たないわね!仲間が捕まっているの忘れたの!?そーゆう時は気合よ!気合!」

「あなたこそ、ワタクシ達の全身を濡らしただけじゃありませんか!!?邪魔よ、邪魔!」



両者共に失敗。言い争いを始め、この困難をどうするべきかという時だ。



「ライラ、リアと続いたから、次は私だよねー」

「ネセリアには無理でしょ!?」

「あなたは黙って見ていなさい!」

「え、えぇぇっ」



ネセリアがこのバリアを突破する事を立候補したが、圧倒的な実力者の2人から無理だと宣言され、雨ではないハッキリとした涙を流した顔を出したネセリア。その顔に言いすぎたと思い、ライラは納めるように言った。


「わ、分かったわよ!次はネセリアよー。どーやるのー?(アテにはしてない)」

「うううぅっ、確かにライラやリアみたいな力はないけど。考えがあるんです。地上に降ろしてください」

「はいはーい(さっさと諦めてあたしかリアにやらせてね)」

「まったく、時間の無駄ですわ」



雲は地上へと降りた3人、ネセリアは突然走り出した。その先にいたのはライラが台風で巻き込んで倒れている"ポリス"達だった。一体何に使うのか、よく分からないライラとリア。ネセリアは"ポリス"の頭部を調べ、操作していた。



「何をするつもり?」

「この"ポリス"って管理人の"科学"ですよね?ならきっと、このバリアを無条件で突破できるシステムがあるはずです」


ネセリアは雲から、バリアの張られた拠点の内側から簡単に"ポリス"が出てくるとこを見ていた。それをヒントに3人分のIDカードを作ろうとしていた。



ポウウゥンッ



"掃除媒体"から自分の道具を取り出すネセリア。"ポリス"の頭部からバリアを突破するだろう、IDを入手。自分達でも使えるように加工をして……およそ5分。



「はい!これを絶対放さないでバリアの方に行こう!」

「こ、こんな物を持って……」

「ただのカードですわよ?」


ネセリアを先頭に、ライラやリアの攻撃でもビクともしなかったバリアに近づく二人。そんな事が本当にできるのかと思ってやってみると、ファァンッとアラームが鳴り、"ポリス"が通ると認識したバリアはあっさりと3人を中へと入れてしまった。

その瞬間、ライラとリアの顔は嬉しさと同時に自分達の凄まじい無力感に襲われ、激しく顔を歪めてしまった。



「知恵が勝ったよ!いやったー!これで春藍を助けられるねー!……?」



凄く嬉しそうに笑い、二人のプライドをズタズタにしている事すら分かっていないネセリア。



「あ、あたし達の魔法や科学は結局なんだったの…………」

「こんな方にワタクシが劣ったとは…………」

「今日はあたしよりもネセリアがかなり頑張っているわね……」



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