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RELIS  作者: 孤独
"金の城下街"ゴールゥン編
42/634

え、お前とお前が捕まるのかよ?


ザザザザザッ



「ハイチカンリョウ」

「ゼンタイトツゲキタイセイ」



罠に掛かった虫を取りにいくように集まりだした"ポリス"、その数300体以上。300以上ともなれば当たり前のように強者達は気付く。


「囲まれたみたいね」

「昨日の"ポリス"が外に沢山いますね」



店の出入り口の近くに来ていたライラとネセリアには、その光景がハッキリと見えていた。



「春藍くん、ワタクシ達。どうやら用事ができましたわ」

「え?」

「初めからそう言ってよ、リア。結界オーライに感じる」



溜め息をついて、インティは春藍の左肩に触れていた。リアは窓から外を眺め、人数を確認する。それに釣られるように春藍も外を見ると、"ポリス"とやらが店を囲んでいるのを知った。



「春藍くんは任せるわよ。インティちゃん」

「分かったから。さぁ、捕まって」

「あの……」

「もー、面倒だなぁ」



トーンッと軽い力で春藍はインティに流されるように倒され、軽々とお姫様抱っこのような状態になった。普通、逆である。



「これでよし!それじゃーー、ウチと春藍くんは避難してるよー!」

「お願いするわ」

「え?」



次の瞬間にはインティの"韋駄天"による高速の運びが始まった。

春藍の体はそれに付いていくだけで目が回りそうになる。乗った事のある移動できる存在で最も速い者だと、確信した。同時に一番危険な乗り物だという事も理解した。ちゃんと人が歩く道を通り、春藍を抱えて高速に走り出しているインティ。自分の足で風を撒き散らすほどの速度だった。



フォンッッ



「へ!?」

「ちょぉ!?」


インティは店の出入り口へと向かう途中。ライラとネセリアの両者の長い髪や身に纏う服が、揺れ動くほどのすれ違いを起こした。



「ん?」

「春藍!」



ライラはインティと春藍の姿をわずかに確認しただけでインティが走り抜けて、手動のドアを丁寧に高速で開け閉めところまで目は追った。だが、体と魔力が間に合わない。とてつもない速さを持っており、小回りの動きまで速い。"ピサロ"を発動するまでにインティと春藍はさっさと店から出てしまった。



「な、何よあいつ!?」

「今、何が起きたんですか!?誰か通りましたよね!?」

「春藍が攫われたのよ!とんでもない、速さを持った少女に連れ攫われた!」



っていうか、お姫様抱っこされてた気がする。何されてんのよ、あいつ!!



「追うわよ!急いでネセリア!」

「ライラ落ち着いて!!」

「!?」

「外見て!外見て!!"ポリス"が囲んでいるんだよ!っていうか、さっき言ってたじゃん!」

「!」



もうこの会話が終わった時には、春藍を持ったインティの姿はあっという間に"ポリス"の包囲網を突破してしまった。あまりの速度のため、包囲網が意味を成していなかった。インティを追いかける、とっ捕まえる事は不可能と思えるほどの差を痛感した2人。特にライラは冷静さを失っていたとネセリアに教えられた。もし飛び出していたら、"ポリス"に攻撃をもらっただろう。

"ポリス"達はもう銃器を店に向け、店ごと破壊しても良いからターゲットの3人を倒そうとしていた。



「ハッシャ」



300以上の数、方向から繰り出される兵器の数々はたちまち、




ガゴオオオォォォォォッ




店を焼き尽くし、瞬間で倒壊させるには十分だった。一般人は即死。大火傷行き、損傷行き、潰され行きなど色々あるだろう。だが、1人。軽々と立ち上がるのと舞い上がる者達がいた。



「ひいぃゃやはぁぁーーーー!!!美しくないゴミの臭いがする炎だわね!!」



水色の髪色をやや焦がし、手入れをしたのが一瞬に崩れても。余裕で立ち上がってみせるリア。すでに戦闘準備ならぬ、殲滅準備は整った模様。お気に入りだった服が汚れた怒りが沸いてくる。

そして、炎が生み出した煙に乗って舞い上がっていく小さな雲があった。衝撃を吸収し、雲の中央にはCDが埋め込まれていた。



ポウウゥンッ



「割れてたり熱くなってたら、私達は危なかったねー!」

「ありがとう、ネセリア。助かったわよ!」



CD。"掃除媒体"から飛び出したライラとネセリア。2人はそのまま雲の上に乗り、雲を広げながら空へと舞い上がろうとしていた。



「あら?何かしら、不思議な雲があるわ」



リアは上空の異変に気付いた。ライラが雲を広げている魔力の流れを察知した。一方で、ライラも見たその時から、リアが只者ではない事を感じていた。敵として考えて、雷雲を作り出している。空中から地上に降り注ぐ雷の攻撃は、リアも"ポリス"もまとめて攻撃できる範囲がある。



「ま、カンケーはありませんけど」



メキョメキョとリアの両腕は変型していく。まるで木が急速に成長していくようになり、沢山枝分かれるように兵器が現れていく(元々あった)。普段は女性という外見であるが、その状態は本来の姿ではなく縮小されていた形と思われる。ドルゥンッと唸るリアの心臓部。全ての兵器に力を注ぎ込み、全て使用可能状態にする。"ポリス"にもライラ達にも向けられた、強烈な兵器。



「ひゃはははははははは☆」



激昂と昇天染みた表情に変身するリア。ライラの攻撃よりも、"ポリス"の攻撃よりも一段階速い。リアを中心に全方位に向けられる容赦のない兵器の放火。



愛がない戦時ノッツ・ウォー・セクシャルウウウゥゥゥゥ!!!!」



閃光と炎、音の三つが同時に発生させられた。昨日暴れた機関銃での砲撃はまだ軽かった。飛び出したのは機関銃もあり、ライフルもあり、ミサイルもあり、爆弾もあり……とにかく、単純に思いつく兵器と呼ばれる物のオンパレードがリアの体から全方位に飛び出した。



「ニゲ」



ガゴオオオォォォォォッ



"ポリス"が撤退の命令を実行しようとするも、それすらも許さない圧倒的な破壊。



「きゃあああぁぁ」

「な、なんて攻撃よ!?」



ライラの"ピサロ"の雲すらも軽々吹っ飛ばし、さらには契るリアのパワー。



「あははははははははは!!!」



数分後になって見えてくる景色は、"ポリス"達の残骸。巻き込まれた市民の焼死体。多くの建物の崩落。空に浮かぶ雲も散り散りになっている。



「ネセリア!そこにいなさい!」

「ラ、ライラ!危ないよ!絶対危ない!!」



雲から飛び降りる事ではなく、ネセリアはリアに立ち向かうライラに言ったが



「あいつをほっとく方が危険よ!任せなさい!」



ネセリアを雲に乗せたまま、ライラはリアのいる地上へとダイブする。着地直前に自分の雲を作り出し、クッションのようにした。指の骨を鳴らし、兵器を纏っているような姿となったリアと戦う構えを見せているライラ。



「確かにやばい攻撃ね。ただ、攻撃だけよ」

「あららら~~~んん、やっちゃう気?やれるのかしらねぇぇ~~~☆」



ライラ VS リア。魔術 VS 科学。ピサロ VS 機械運命。

お互い、中間距離の間合いが能力を活かしやすいだろう。ただ、ライラには空中という領域がネセリアを守るという事も考えると使う事ができないため。若干、状況では不利である。



ビギイィィッ



有無を言わせず、ライラに向けられる兵器。スピードもパワーもリアが上。音が鳴った次の瞬間には兵器が発射されていた。雲で壁を作る暇もないし、強度もない。地面を支えている両足だけで逃げ切ろうという考えだった。あまりにも無謀。

わずかでも回避を高めようと、煙幕代わりに自分の雲を薄くして周囲を見えにくくするくらい。



「っ」



ライラは地面に飛びついた。伏せるしか考えていない。リアが繰り出す兵器に対抗する手段にこれとは貧弱だ。



ドガアアァァァッ



「あははははは!!メスブタはワタクシがグチャグチャにしますわよ!!」



リアの兵器はライラに逃げ場を与えないよう、煙幕のように発している雲全てを覆うように長く攻撃している。まともに戦ったら相当苦戦しただろう。



チュウゥゥンッ



「ふぅ☆」



リアの兵器が止まった。その止まり方はいくつもの兵器が、全て止まる事を意味していた。長く速く広範囲、かつ殺傷能力が高いと言ってもだ。一度止めてしまうと、すぐにはまた起動できない。

リアの攻撃から生き延びる自体、相当難しい事だが、やればリアはどーという事はない。

その待機時間。

破壊の余韻を楽しんですらいる表情の頭上に叩きこむ。



「あら」



ドガアアアアアアァァァッッッ



ライラの魔力を練りに練った、雷雲の塊から繰り出した雷がリアの体を貫いた。強い電撃を浴び、一部の兵器の機能が一時停止。リア自身が科学と同化しているタイプであるため、身体の異常は鋭く察知した。



「ぎゃあばばぁぁぁばぁぁ」



奇妙な呻き声を上げて、リアはその場で倒れこんでしまった。重大なエラーが起きたように、目を回している。



「っっつ……火傷に傷もできちゃったじゃん」



ライラも無傷では済んでいない。ただ、リアと比べて立ち上がるだけの余裕はあった。リアの元へゆっくり近づき、トドメは刺さないがリアの顔を足蹴にした。



「で?……あんたは何がしたかったの?もう1人の奴はどこに行ったのよ」

「あばばびばぁあぶべば、びばぁ(クラゲみたいな髪型した不細工が足蹴にすんなぁ)」


そしてふわりふわりと安全な速度、でネセリアを乗せた雲はライラの近くに下りてきた。すぐにネセリアは駆け寄って、ライラの腕の傷などを見た。


「ら、ライラ!大丈夫!?平気!?」

「大丈夫よ、これくらい!それより、こいつから春藍の居所を聞かないと」

「ライラ、人を足蹴にするのは可哀想じゃない?」

「そう?街をグチャグチャにしている奴よ。これくらいでも足りないくらいだわ」



グリグリと倒したリアを足蹴にしているライラ。ネセリアはライラもそうだが、リアの方も心配そうな目で見て、とりあえずライラの足蹴を止めさせた。


「春藍はどこに連れて行かれちゃったんでしょうか?」

「さぁー。こいつがハッキリと喋らないと困るのよねー」

「あばびばばぶあばいあびびびびべ(ハッキリ喋ってるわよ、このクラゲが!!)」

「ん?」


リアの回復を待とうと考えたライラ達の前に、一つのアナウンスが届いた。そのアナウンスは世界全域に知れ渡る放送であり、ミュージシャンのライブ中継などが行われるディスプレイなどにも映像が流れていた。



『キンキュウホーソウ、キンキュウホーソウ。ジューミンハタダチニイエニヒキコモリナサイ』

『チョーイッキュウノヒナンメイレイ』



"ポリス"の声が世界中に響いた。そして、たまたまリアが周囲の建物を破壊したおかげか、巨大なモニターがライラ達の位置から見えた。



『コレヨリヨンメイノジンブツヲコウソクイタシマス』

『ライラ・ドロシー、伊達・ネセリア・ヒルマン、アレク・サンドリュー、リア、ノヨンメイハタダチニ"ポリス"ニジシュシナサイ』

『ムシシタラコノフタリシャサツ』



パァッ


「…………え?」

「あー、春藍が映ってるよ」

「あばばばびびびあばぇ(なんでインティと春藍が檻に?)」



映像にいたのは上空に浮かぶ大きな檻に囚われている、インティと春藍。インティは割りとにこやかな顔をして、手を振る余裕を見せて


「リアー。ごめーん。捕まったから助けて~」


春藍はインティから離れ、上空で世界全体の景色を見ていた。そして、誰かを探すような目だった。



「今の放送にアレクさんの名前が、じゃあやっぱりこの世界に来てくれたんだ!!アレクさーん!!すぐ行きますからーーー!」



と檻の中で吼えていた……。



「何してんのよ、あいつはーーーーーーーーー!!?」



そして、ライラの叫びは春藍達にも聴こえそうなぐらいの音量であった。




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