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RELIS  作者: 孤独
密林編
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"神秘の密林"エメラルド・ジャングル

"神秘の密林"エメラルド・ジャングル。

そこは異世界の端から端まで自然で作られた異世界であった。自然100%の地形。人間が住んでいるという報告は一切なかった。魔物という凶暴な生命達が住まう異世界。



話し合いという概念を知らない異世界。



生まれ落ちた時、本能で生き残る術を知る。数少ない仲間を自分で知り、自分を狙うだろう敵も知らなきゃならない。油断すれば食い合う。襲うか、襲われるか。一瞬で命が閉じる環境。

今、死闘の末に敗者という食料を勝ち取った勝者がいた。酷い傷を負い、そーしてやっと手に入れた時だ。

上空からその機を待っていたと、鳥型の魔物達が両者に襲いかかった。烏合の衆であるが、一方的に勝者も敗者も喰らい合った。戦闘があったことを感じさせない光景。鳥達は今、やってきた食料を仲間同士で食い合っている。苛立って仲間を殺し、自分の腹に詰めるほど冷徹な仲間意識だ。



強さが重要か、勝つことが重要か、薄い仲間を作ることが重要か。生きることを自然に現すこと。知恵がない存在達。

生きられることで精一杯だから、知恵が要らない。知恵があると、なんで生きているのか深く考える。要らないものか。自然だから生きる事を自然にしている。それだけで良いだろう。



グチャァッ べジャァッ



魔物を喰らう。できなきゃ、木の実を食べる。草を喰う。水を飲む。

欲情したらメスの魔物と○○○して、中から外に出したければ普通に排出する。


それらを毛嫌いしたり、我侭を述べたり、目を背けたりなんてことはしない。

自然とすること。人間という奴は知恵を得たことで法律やら正義やら、常識などを造り上げてしまった。自然界を敵とまで見ている者もいるだろう。

人間は自然の中では生きられない。離れていったと、この異世界は証明してくれるだろう。



「うぎょぎょぎょぎょ」



前述。

ここに人間がいるという報告はなかった。

しかし、どーいった確率で生まれたのかは分からないが、自然という奇跡の一部はきっと、自然から離れて欲しいと願ったのか。人間という奴を産んだ。

人間は自然から生まれたことを証明するような誕生であった。



「ぎゃぎゃぎゃぎゃ」



鳥達を数羽、素手であっさりと掴み取ってそのまま口に放り込む。一撃で噛み砕き、鳥を殺して胃の中に入れていく。

そいつは魔物という分類であるが、人間に近い形を備えていた。頭、首、両肩、腹、両足、両腕、両手。しっかりと人間といえる部位を正しく備えていた。


魔物の多様な異種交配によって偶然生まれた産物か……。

そのような生態に対する研究者がいないことのため、果が出せない。




「もきゅっ、もきゅっ」


言葉というただの声。魔物の鳴き声みたいな、言葉の使い方。素っ裸な自分に掛かるのは、魔物を食い殺した時に溢れる赤くて獣臭い血。それになんら嫌な気を感じさせない笑顔。喰う喜びを知っているような表情。



異世界でも指折りの自然界。



ドーーーーンッ



「おっとと」

『ロイ様。ここが"神秘の密林"エメラルド・ジャングルでございます』


まだその全貌を知らないロイ達。辿り着いて、早速情報収集でも始めようかというときだ。



「なんか獣臭いとこだな。魔物の匂いしか……」



山中に降り立って状況を確認するところにいきなり来た魔物達の奇襲。弱いところを徹底的に突き、反撃する暇など与えずに喰おうという理念。

ロイが魔物達の殺気に気付き、素早くNM_Hを抱えて木々の上へと昇った。



「おおぉっ!?」


相手が何者か。尋ねる時間、会話もなかった。

様々な魔物達がロイとNM_Hを襲ったが、逃げられてしまった。



【ぐうぅぅっ】

【ひゅううぅぅ】


呻き声を上げ、今度はロイとNM_Hではなく。ぶつかりあった魔物同士での戦闘が行われた。もうすでにロイ達のことなど、覚えていない。



「でけぇ!!」

『見た事がない魔物です』



フォーワールドには魔物などそういないが、タドマール出身のロイにはいくつか魔物と出会い、対峙したこともあった。しかし、そんな過去の記録が吹っ飛ぶほどのあまりに巨体な生命体。

太い木の枝に足をかけ、魔物同士の食い合いを観戦するロイとNM_H。



「こーゆう異世界かよ。嫌いじゃねぇけど」



きっと、女なんていねぇんだろ?純度100%のやっばーん。じゃね?



安息の暇などまったく与えてくれない。観戦しているロイとNM_Hの頭上から襲い掛かる、いくつもの葉っぱを模して擬態していた魔物がいた。


「サシで俺に勝てるわけねぇだろ!!」


擬態、奇襲を得意としている魔物だ。



「バレてちゃ世話ねぇぜ」


拳と蹴り。自然界で生きようという術にしては原始的か。ロイも魔物と大差はないだろう。一瞬で血みどろの遺体を作り上げ、腹ペコの魔物共に差し出す。目の前で起こりそうな戦闘が中断する。



「NM_H、掴まれ!」

『了解しました』


ロイはこの場から一気に立ち去る。安全圏がまるでない異世界だが、常に活動できる生き物などいない。


「時間が勝負だ」


人工的な灯を持つ設備が一切見えない。端から端までジャングルとなると、夜中は完全な暗闇。狩りをするには難しい状況になる。

安全な場所はないが、安全な時間はある。



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